月別アーカイブ: 2011年8月

検査値の正常値と異常値について(2): 正常値とは?

検査の異常値を知るためには、「正常値」がどの様に決められているのか知っておく必要があります。細かいことは置いておくとして、「正常値」の決め方は大きく2つに分けることが出来ると考えられます。

 

ひとつ目の「正常値」の決め方ですが、健康と思われる多くの人を検査して得られた検査値を集めて、統計的解析により決める方法です。平たくいえば100人の健康な方を検査して95人が含まれる範囲を「正常値」とするのです。

 

「あれ?」と思われた方もおられると思いますが、この方法で「正常値」を決定すると「健康な人」の5%(100人のうち5人)は検査結果が異常値になってしまうのです。

 

ふたつ目の「正常値」の決め方ですが、検査によって値が上がる場合と下がる場合がありますが、ある値を境にして、病気の方の割合が増えたり、病気を発症するリスクが上がる場合の値で決める方法があります。この値は正常上限値または正常下限値といわれ、この値を超えない範囲を「正常値」とするのです。

 

イメージと異なりほとんどの検査は、決められた値を超えると100%病気があるというような明確な区分は出来ないのが実情です。検査の種類と病気の人の割合(有病率といいます)にもよりますが、意外と明確に分ける事が出来ないのです。

 

機会があれば検査の区分けする能力(検出力)について書きたいと思いますが、ここでは「異常値=病気」(反対に「正常値=健康」)では無いことをご理解いただけると幸いです。

 

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検査の正常値と異常値について(1)

これまで、健康診断や診療にあたって血液検査など様々な検査を受けられた経験があると思います。その中で一度も異常値を示す上向き(または下向き)の矢印や星印(アスタリスク)を見たことのない方は希ではないでしょうか?

これらの異常値を示すマークは何となく気分を落ち込ませ、「最近忙しかったから・・・」「暴飲暴食が・・・」など、自分に言い訳したくなる状況を作り出しています。(学生の頃、赤点を取った気分に近いのでしょうか?)

では「異常値」の意味は?とお聞きすると、多くの人が「病気がある」とか「身体に異常がある」との理解をされている事に、ビックリすることがあります。この事を裏返せば『「異常値」が無ければ病気でない。』という考え方が、深く浸透していることが分かります。

以前のブログに書きましたが、検査値は行われた状況(空腹時、負荷時、随時)と目的(スクリーニング、治療効果の判定など)により、その解釈は大きく変化するのもです。つまり、正常値が必ずしも「健康」を意味する物ではないのです。(以前のブログ「糖尿病の早期発見には、空腹時検査だけでは不十分なのです。」をご覧ください。)

これから、何度かに分けて検査値の考え方について、個人的に重要と思うこと書いていきたいと思います。

 

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心筋梗塞は「治る病気?」それとも「治らない病気?」

40年ほど前まで「心筋梗塞」は、半分以上の人が亡くなる病気として恐れられていました。しかし近年は、循環器分野での医療技術の発展により大半の方が命を救われるようになっています。

実際に「心筋梗塞になったけど、カテーテルをして治してもらったよ!!」と話している知り合いを、幾人か思い出すことができるのではないですか?命を救われることは大変すばらしい事ですが、「心筋梗塞になっても『治して』もらえるから大丈夫!」と早合点してしまう落とし穴が、そこには潜んでいるのです。

実は心筋梗塞は「治らない病気」なのです。胸の痛みや息苦しさは、迅速な治療により改善しますが、心筋梗塞は本来「心臓の筋肉が壊死する病気」ですので、死んでしまった心筋は再生されないからです。

「カテーテルで血管を広げたけど、その後心臓に全く問題ないと言われた。」という方もおられるでしょう。幸いにも「心筋梗塞」ではなく「狭心症」の段階で適切な治療を受けられたのだと思います。その場合でも、「狭心症」の原因となった「動脈硬化」は「治る」事なく残存しているのです。

このように考えると、心筋梗塞で亡くなる方を劇的に少なくしたすばらしい治療法であるカテーテルですが、「治す」というより「直す」に近いのかもしれませんね。

月並みですが、循環器医師としてはやはり予防が一番だとの確信しており、「ちょっと血圧の高い方」や「検診でちょっとした検査異常のある方」など、いわゆる「病気」とはいえないような方々を診療できればとの想いを日々募らせています。

 

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先日取材を受けました : 日経BP社 デジタルヘルスオンライン

先日、日経BP社のデジタルヘルスオンラインの取材を受けました。医療のNPOに関する取材だったのですが、2時間近くお話をさせていただきました。私のとりとめのない話を上手にまとめていただき、さすがプロの業と感心ひとしきりでありました。

この記事にも出てきます「エビデンス」という言葉、最近よく耳にされると思います。一番有名な使い方は「エビデンスに基づいた医療(EBM)」という使い方でしょう。

より良い医療を目指すために近年提唱されている概念ですが、実践のためにはまだまだ道は険しいと言わざるを得ないのが現状です。

ご興味がありましたら、記事を一読いただけると幸いです。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/dho/20110722/278567/

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