検査値の正常値と異常値について(4): 検査の陽性について

  今回は、検査の陽性の判定について書いてみたいと思います。

インフルエンザの抗原検査(鼻の中に細長い棒を突っ込まれた後、5分ぐらい待たされるあれです)を受けられた経験のある方も多いのではないでしょうか?昔に比べると、簡単で短期間に判定できるようになったものです。

それでは、この検査で「陽性」と判断された場合、実際にインフルエンザである可能性はどれ位あるのでしょうか?手元の資料を見てみますと、時間はかかるけれども信頼のおける「ウィルス分離培養」との比較で「陽性一致率:89.3%」「陰性一致率:94.1%」と記述されています。

この数字をご覧になって、「陽性」に出た場合のインフルエンザである確率は「9割ぐらいだな」と考えられた方が多いのではないでしょうか?症状などからインフルエンザである可能性が高い場合、この直観的な考え方は「正解」となります。

ここまで読まれて、「常識じゃないの・・・・?!」と気分を害されておられるかもしれませんが、もう少しお付き合いください。

次に、同じ検査をインフルエンザを見付けるために、症状のない1万人に行ったとします。症状がないのでインフルエンザにかかっている人が1%しかいないとすると・・・・・・。

 

真の陽性者:1万人 ×  1% × 89.3%     = 893

偽の陽性者:1万人 × 99% × (100 – 94.1)%= 584

 

この場合、検査で「陽性」になった人のインフルエンザである可能性は、60%にまで低下してしまうのです。

細かい数字は置いておくとしても、検査を行った状況により検査結果の解釈は大きく変わってしまうのです。つまり検査で「陽性」に出たとしても、その病気にかかる可能性が極端に少ない人の場合(症状が無いなど)、病気である可能性はそれほど高くないのです。

スクリーニング(一次)検査で陽性になった場合でも、精密検査では多くの人が「問題ない」となる理由の一つに、この事が関係しています。

 

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