月別アーカイブ: 2011年10月

「高血圧と言われました」

10月も終わりに近づき、めっきり寒くなってきました。今朝のニュースで国立循環器病研究センターの集計によると、冬の心筋梗塞発症は夏の1.6倍多いとの発表があったそうです。冬は血圧も上がりやすく、動脈硬化の進んだ血管の破綻が多いのではとの循環器医の予想が裏付けられたデータですね。

ところで検診などで「血圧が高いですね。」と言われた経験のある方も多いのではないでしょうか?そんなとき「血圧測定して血圧が高かったのだから自分は高血圧だ」と認識される方が案外多いようです。その裏側には「高血圧 = 血圧が上がる」との考えが広く、深く浸透している事が伺えます。

何回か前のブログに書きましたが、「高血圧を血圧が上がる病気」だと考えると測るたびに変動する血圧をどう理解するのか混乱してしまう原因になります。変動する血圧をどう考えるのか、受診された方によく質問されるのですが、次のようにお答えします。

 

「高血圧は血圧が上がる病気ではなく、血圧が下がらない病気だと理解してください。」

 

緊張した時や運動した時の一時的な血圧の上昇は、それほど大きな問題にならないと考えていいのです。血圧が上がって悪いのでしたら、スポーツ選手は全員が高血圧になってしまいます。(ハンマー投げややり投げなどの投擲競技の選手の赤らんだ必死の形相をスローモーションで見ると、瞬間的に200mmHgを超える血圧になっているのではないかと思えます。)

高血圧は血圧が上がるから「血液ドロドロ」(?)になるのではなく、安静にしていても血圧が下がらず、血管が安静(自己修復)に出来ずに血管の老化(動脈硬化)が進む病気なのです。水撒きに使うホースの元栓を開け放して圧力をかけ続けると、一部が圧力で引き延ばされてヘビのお腹のようになる姿を想像していただけるとわかりやすいかもしれません。

家庭血圧の記録で全部を書けなければ、一番低い血圧を書いてくださいとお願いしているのは「高血圧は血圧が下がらない病気」との考えからなのです。

 

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インターネット:検索エンジンで一番に表示されました。

どこかの会社の宣伝ではありませんが「(インターネットに)繋がっていないって想像できない。」というほど、インターネットは世の中に深く入り込んで必要不可欠のものになっています。みなさんにこのブログを読んでいただけるのも、インターネットのおかげですね。

インターネットの原理は単純で、データを水に見立てるとまさにバケツリレーなのです。ホームページで重たい画像などがゆっくりと表示される様を見ると、三角帽子のこびとさんたちが一生懸命「超高速バケツリレー」をしている映像を思い浮かべて、イライラしないようにしています。

でも、ヤフーなどのホームページ検索(検索エンジン)で表示される順番はどの様になっているのか全く謎です。世の中には、表示される順番を早くするために特化したサービスがあり、企業などを中心に多くの需要があるとのことです。確かに、私も検索結果は上から順番に吟味していきますので、表示される順番が大きな意味を持つこともあると思います。

つい先日、興味がてら「きむ循環器内科医院」のブログが検索エンジンでどのあたりに表示されるのか試してみました。全く表示されないものや健闘して2ページ目に表示されるものに混じって、ななななんと!一番最初に表示されるものを見付けてしまいました。(良ければみなさんも試してみてください。)

 

検索キーワードは「リンゴと医療」です。

 

「そんな特殊な言葉の組み合わせだったら一番になるよね。」との声が聞こえてきそうですが、意識してやったことではなかったので宝くじに当たったような興奮を覚えました。今は、いつまで最初に表示されるのか、ヤフーやグーグル等の検索エンジンで順番の変化に差があるのか興味津々です。

つい原理や原因を追い求めてしまう職業病かもしれませんね。

 

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検査値の正常値と異常値について(6): 癌マーカー

血液検査を行うときによく「癌のわかる検査もやってください。」と言われることがあります。当然、症状など疑わしい場合には積極的に行いますが、そうでない場合に説明に苦慮することがあります。多くの方が、「癌マーカーを見れば癌があるか無いか分かる。」と考えられているからだと思います。

ところで、最近新聞に書かれた「前立腺癌とPSA検査」についてご存じの方もおられると思います。

 

前立腺がん検査は推奨せず 米政府の作業部会 2011/10/08 12:22 【共同通信】)

【ワシントン共同】前立腺がんを見つけるためのPSA(前立腺特異抗原)検査が死亡率減少に役立つかどうかの検証を進めていた米政府の独立機関、予防医学作業部会は7日、健康な人が検査を受けることを推奨しないとする報告書案を発表した。  

同検査は、日本でもがん検診として実施している一方で、専門家の間でも推進するかどうか賛否が分かれており今後の議論に影響を与えそうだ。  PSA検査は前立腺の異常を示すタンパク質を血液で調べる検査法。作業部会の追跡調査で、検査を受けた人と受けなかった人を比較した場合、死亡率を減らす効果はないか、あってもごくわずかであることが分かった。

 

健康な人つまりリスクの少ない人が、PSA検査を受けても検査が正しい確率が大変低く、癌で亡くなる人を減らせなかったということです。直感には反するのですが、「検査値の正常値と異常値について(4)」で書いたインフルエンザの陽性率と同じ理屈になるわけです。

医療経済を何とか立て直そうとしている米国の発表であること、白人・黒人がメインの解析ですのでそのまま無批判に信じることは出来ませんが、専門家間でも議論になる程、複雑な問題のようです。私が上手に説明できないのも無理ないかなと記事を読みながら、胸をなで下ろしました。

 

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リンゴと医療

昨日、パーソナルコンピュータの生みの親である アップルコンピュータ創設者のスティーブ・ジョブズ氏が永眠され、メディアに取り上げられています。

当院のコンピュータ端末はアップル製であることだけでなく、以前から彼について書かれた様々な著書を読破して来ましたので、アップルのホームページでメールの受付を見付けた時、柄にもなく(文章下手なのに)下記の様なメールを送ってしまいました。

 

スティーブの安らかな眠りを祈ります。

彼の生み出す製品には、言葉に表せない魅力がありました。私なりの理解ですが、 「人間を技術に合わせるのではなく、人間に技術が奉仕するように」腐心していたと思います。

パーソナルコンピュータの生みの親である彼が、何の躊躇も無くパーソナルコンピュータの終焉を宣言したことに、 人間の生き方中心の姿勢を垣間見た気がします。

彼がパーソナルコンピュータの後を継ぐと宣言した情報端末(iPhone等)の時代が今まさに隆盛を迎えようとしています。 Apple社は彼の製品を継いだのではなく、彼の精神を受け継がなければニュートンの法則に捕らわれたリンゴになるのではないでしょうか?

「この情報端末時代に、幕引きをするのは誰か?新しいものを創造してごらん!」と天国でスティーブがほくそえんでいるような気がします。 そんな目で見てみると、iPhoneが「モノリス」に見えて来ませんか?

今は、頑張れApple!面白いものを見せてくれと言いたいです。     

パーソナルコンピュータの好きな 金 智隆

 

書きながら、医学の技術は国民に奉仕しているのだろうかと複雑な気持ちになると同時に、医学にもスティーブのようなビジョンを示す人が現れないか期待している自分がありました。

次回はまた通常のブログに戻りますね。

 

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