検査値の正常値と異常値について(6): 癌マーカー

血液検査を行うときによく「癌のわかる検査もやってください。」と言われることがあります。当然、症状など疑わしい場合には積極的に行いますが、そうでない場合に説明に苦慮することがあります。多くの方が、「癌マーカーを見れば癌があるか無いか分かる。」と考えられているからだと思います。

ところで、最近新聞に書かれた「前立腺癌とPSA検査」についてご存じの方もおられると思います。

 

前立腺がん検査は推奨せず 米政府の作業部会 2011/10/08 12:22 【共同通信】)

【ワシントン共同】前立腺がんを見つけるためのPSA(前立腺特異抗原)検査が死亡率減少に役立つかどうかの検証を進めていた米政府の独立機関、予防医学作業部会は7日、健康な人が検査を受けることを推奨しないとする報告書案を発表した。  

同検査は、日本でもがん検診として実施している一方で、専門家の間でも推進するかどうか賛否が分かれており今後の議論に影響を与えそうだ。  PSA検査は前立腺の異常を示すタンパク質を血液で調べる検査法。作業部会の追跡調査で、検査を受けた人と受けなかった人を比較した場合、死亡率を減らす効果はないか、あってもごくわずかであることが分かった。

 

健康な人つまりリスクの少ない人が、PSA検査を受けても検査が正しい確率が大変低く、癌で亡くなる人を減らせなかったということです。直感には反するのですが、「検査値の正常値と異常値について(4)」で書いたインフルエンザの陽性率と同じ理屈になるわけです。

医療経済を何とか立て直そうとしている米国の発表であること、白人・黒人がメインの解析ですのでそのまま無批判に信じることは出来ませんが、専門家間でも議論になる程、複雑な問題のようです。私が上手に説明できないのも無理ないかなと記事を読みながら、胸をなで下ろしました。

 

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