月別アーカイブ: 2011年11月

錯覚と生活習慣病(4):まとめ(「くすり」は万能薬じゃない)

「くすり」を飲む目的について前回書きましたが、「薬を飲むと一生飲み続けなければならないでしょ?」といわれる方が結構多いので服薬の必要性について強調して書いております。決して「くすり」を飲めば全て解決するとの意味ではありませんのでよろしくお願いいたします。

多くの方が「くすり」は最終手段で最強だと思われているのではないでしょうか?抗生物質などは、感染症に対して絶対的な効果を発揮するために、「くすり」全般にこのようなイメージがついているのでしょう。また、急性期の治療においては病気が良くなるに従い、薬品の入った注射器や点滴が外れて行き、全部外れると退院になるので、「くすりを飲んでいない = 健康」と直感的に理解しやすいのでしょう。

生活習慣病の「予防」を目的とした服薬は、決して最強ではなくあくまで「予防」のためのツールなのです。いくら「くすり」を飲んでも血圧の下がらなかった人が、「減塩」をしたら血圧が正常になったり、5Kg痩せたら空腹時血糖が正常化したなど、よくある話なのです。逆に、涙ぐましい努力で健康的な生活を心がけたが良くならず、「くすり」を飲んだら1週間で正常化した例もたくさんあります。

生活習慣病の「予防」において、「くすり」は運動や食餌療法等の生活習慣の改善と同等の一つの手段であり、どの手段が最も有効であるかは個々人により違っているのです。ただ他の手段と比べて「くすり」は効果の出現が早いため、早期にリスクを減らせる利点を持っているのです。

「錯覚と生活習慣病」のブログのまとめとして知っていただきたいのは、生活習慣病の効果的な「予防」は「くすり」を飲む飲まないに関係なく、自分の検査値を正常化する最良の方法を選ぶことなのです。無理な努力は長続きせずリバウンドなどの原因になりますので、「くすり」を飲まないことを目標にするのでなく検査異常を正常化することに力を注いでいただけると良いのではないかと考えます。

 

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錯覚と生活習慣病(3):予防薬と治療薬

錯覚と生活習慣病のブログで説明しきれなかった部分の補足をします。

前回、生活習慣病の予防には、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面を押さえ込む事が大切であり、「くすり」を飲むから重症という分けではないと書きましたが、「よくわからない」とのご意見をいただきました。

確かに、一般に多くの病気で「重症」になれば「くすり」の量と数が増えていくと考えられています。これは直感的に理解しやすいですし、多くの場合には正しいのは明らかです。しかし、この直感が正しいのは、「くすり」の中でも「治療」を目的とした「治療のためのくすり」に関してなのです。

実は、「くすり」を使う目的には大きく分けて2つの方向性があるのです。一つ目は、先ほど書きました「治療」を目的とした「治療のためのくすり」としての使い方であり、もう一つは「予防」を目的とした「予防のためのくすり」としての使い方です。

たとえば、「心不全」のくすりで心臓の働き(心機能)が悪くなるのを予防するために「ベータ遮断薬」を使うのですが、心機能がすでに悪い人は「ベータ遮断薬」を十分に飲めないために、予防効果が十分に発揮されないことがあります。つまり、重症であればあるほど「予防のためのくすり」は少なくなることさえあるのです。

高血圧などの生活習慣病の「くすり」は心不全のくすりほど極端ではありませんが、「血管の老化(動脈硬化)」が「検査異常の程度」と「異常のあった期間」によって重症化していくことを考えれば、「予防のためのくすり」としての生活習慣病薬を早く飲むことによって、「動脈硬化」が重症になることを防ぐことが出来るのです。

生活習慣病の「くすり」を飲む必要のある方は、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面が出やすいだけであり、「動脈硬化」が重症であるから服薬が必要なわけではないのです。「くすり」を飲む飲まないにかかわらず「検査異常」を放置しておくと「血管の老化」は密かに進行していくのです。

 

定期的に病院に通院したり、薬を服用することは確かに大変ですが、10年後・20年後の健康を目指して「血管の老化(動脈硬化)」を予防しませんか?

 

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錯覚と生活習慣病(2)

前回に引き続き、「錯覚と生活習慣病」について書いていきますね。

では、サッカーのオフサイド判定で誤審の原因となる錯覚にどの様に対処していけばいいのでしょうか?審判の方々に、オフサイドの起きる状況を繰り返し再現して判定してもらい、スローモーションカメラで実際にオフサイドであったか確認・学習することで少しでも誤審を減らそうと努力しておられるそうです。

これは、人間の脳に組み込まれた「動いている物が実際より先に進んで認識する」錯覚を無くすことは出来ないので、反則に見える場合どの程度なら反則ではないかを学習して修正しようとしているのです。人により錯覚の程度は異なっているため、「1メートル以内と感じたらOK」などの統一的な基準作りは出来ないのです。

一方、生活習慣病の原因となるメカニズムについても同じ事が言えます。このメカニズムは「遺伝子」に関係していて、錯覚と同様に取り除くことが出来ません。ですから、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面を押さえ込む事が大切になります。

人によっては生活環境を見直すことで困った面がでなくなりますが、それだけで押さえ込めない場合は「くすり」の服用が必要になります。「くすり」の服用が必要な人は、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面が出やすいだけで、決して「(いわゆる)健康」な状態から遠くにいる訳ではないのです。ただ、生活習慣病が突き詰めると「血管の老化を進める病気」であることを考えると、服薬が必要であってもなくても、「検査異常」を放置すると本当に「健康」な状態から遠ざかってしまうのです。

高血圧などの生活習慣病の重症度は、くすりを飲む飲まないに関係ないく「検査異常の程度」と「異常のあった期間」が大きく関わることを知っていただくとが大切だと思います。

 

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錯覚と生活習慣病(1)

11月だというのに気持ち悪いぐらい暖かいですね。でも、来週からめっきり寒くなるそうですのでお気をつけください。

新しいブログの公開は金曜日なのに、なんで今回は土曜日なの?と鋭い方は気付かれていると思います。今週の木曜日が休日だったので、昨日が金曜日でないと錯覚していました。困ったものです。

錯覚と言えば、サッカーのオフサイドの反則(知らない方はネットで検索してくださいね。)判定の実に4分の1は誤審であり、誰もが持っている錯覚が影響しているとのことです。曜日を間違えるのも困ったものですが、スポーツ競技の判定が錯覚に左右されるのも困ったものです。

しかしこの誤審の原因となる錯覚は、自然界で生き残るために人類が身につけたすばらしいシステムなのだそうです。人間の脳は目に映ってから認識するまでに約0.2秒程の時間の遅れがあるそうです。そのため、脳は動いている物を実際に見えている状態より先に進んでいると認識しているそうです。つまり、未来を予測しているわけです。この未来予測が引き起こす錯覚(?)がなければ、誤審はなくなるかもしれませんが、動いているボールを蹴るサッカーそのものが出来ないことになりますし、現代社会では交通事故が多発してしまうでしょう。

実は、高血圧などの生活習慣病も自然界で生きていくために大切で必要なシステムが、現代のストレス・物質社会において困った面が強調されているだけだとも言えるのです。塩分やカロリーをため込む能力が高いことは自然界では生き残る大きな助けとなりますが、現代社会では高血圧や糖尿病になる可能性を高くしてしまうのです。

ではどの様に対処すればいいのかは、次回のブログを楽しみにしてください・・・・・。

 

追伸:曜日を間違えるのは、カレンダーを確認することで防げます。(お粗末さまでした)

 

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