月別アーカイブ: 2012年1月

糖尿病はどんな病気(3)

糖尿病の認識が変わると治療はどうなっていくのかについて何回かに分けて、私の考えを書きたいと思います。以前にも書きましたが、この辺の話は専門家でも未だに意見の分かれるところであり、私の意見が場合により必ずしも当てはまらない糖尿病の病態があることを頭に置いてお読みくださいね。

前回、糖尿病で「おしっこに糖が出るまで」を風が吹けば桶屋が儲かる風に書きましたが、最初のきっかけは何だったでしょうか? 覚えておられますか? 

そうです、

「インスリンの働きが悪くなる。(インスリンの分泌量が減ったりインスリンが働き難い体質になる。)」

ですね。

 

ここで、インスリンの働きが悪くなる原因が、「インスリンの分泌量が減る」と「インスリンが働き難い体質になる」の2つあることに注目された方もおられると思います。実は、原因が2つあるのだから治療にも2つの方向性が当然あるのです。

一つ目は、インスリンを増やしてやる治療です。体内のインスリンを増やすためには、インスリンを分泌する膵臓からたくさん出るようにするか、体の外からインスリンを補充する必要があります。膵臓のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促すお薬として、スルフォニルウレア剤(SU剤)が血糖降下療法に広く用いられています。外からインスリンを補充する方法は、みなさんもよくご存じのインスリンの注射があります。

二つ目は、インスリンが働きやすくする治療です。インスリンを働き難くする原因は色々ありますが、高血糖・肥満が代表として挙げることができます。高血糖がインスリンの働きを悪くしてさらに高血糖の原因となるため、雪だるま式に悪くなり肥満が拍車をかけることが容易に想像できるでしょう。この悪化環境から抜け出すには、カロリーの摂取を控えたり、ゆっくりと食餌を取ったり、運動したりする必要があるのです。最近では、インスリンの感受性を改善する薬剤も使われています。

ここまで読まれて、糖尿病をよくご存じの方は「何も変わっていないじゃないか!」と思われることでしょう。実は、血糖降下療法の基本的な考えた方も糖尿病の原因は「インスリンの働きが悪くなる」事だと認識され、様々な薬が使われていたのです。

 

(長くなりますので次回に続きます。)

 

.


糖尿病はどんな病気(2)

前回、糖尿病を「血糖の上がる病気」と簡単に言い切れなくなってきたことを書きました。では、糖尿病をどの様に捕らえればよいのでしょうか?ここからは医師の間でも意見の分かれるところであるので、私の意見としてお読みいただけると幸いです。

糖尿病は「おしっこに糖の出る病気」から「血糖の上がる病気」へと認識が変化してきたのですが、それは「おしっこに糖が出る」事より「血糖が上がる」事の方がより糖尿病の本来の姿(本質)を表していたためと考えられます。今回の大混乱から糖尿病は「血糖の上がる病気」として認識するより、「糖の代謝異常(糖を上手に利用できない)病」と理解した方が良いのではないかと思っております。「糖の代謝異常病」は平たく言えば「糖が細胞内にスムーズに入っていかない病気」と言えると思います。

では何故「糖が細胞内にスムーズに入っていかない」のでしょうか?

 

簡単に説明しますと、細胞に糖が入るときに膵臓から出るホルモンである「インスリン」の働きが必要なのですが、生活習慣によりインスリンが働き難い体になったり、膵臓が疲れ果てて「インスリン」を分泌できなくなると糖が細胞内にスムーズに入っていかなくなります。結果として、糖が血液内で渋滞を起こして血糖が上がるのです。

段々と話が混み合ってきて「風が吹けば桶屋が儲かる」的になってきましたがまとめてみますと、

 

「インスリンの働きが悪くなる。(インスリンの分泌量が減ったりインスリンが働き難い体質になる。)」→「細胞内にスムーズに糖が入らなくなる。」→「糖が渋滞を起こして血糖が上がる」→「腎臓の糖を再吸収する能力を超えておしっこに糖が出る。」

 

となります。糖尿病の名前の由来からすると「思えば遠くに来たものだ!」の感がありますね。次回は、糖尿病の認識が変わると糖尿病治療はどうなっていくかを書かせていただきます。

 

.


糖尿病はどんな病気(1)

生活習慣病の予防の話が続きましたので、今回から数回にわたって糖尿病・高脂血症等の個別の病態について書いていきたいと思います。

「糖尿病」は、文字通りおしっこに糖が出る病気として知られるようになりました。昔は、おしっこに蟻が群がるので、肥え汲みの方はどの家庭に糖尿病の人がいるか解ったそうです。

その後、おしっこに糖が出るのは血液中の糖(血糖)が上昇して、おしっこを作る腎臓での糖の再取り込み(再吸収)をする能力を超えてしまうためであることが知られるようになり、「糖尿病」は「高血糖病」と認識され血糖降下を目的とする治療(血糖降下療法)が勧められてきました。

この血糖降下療法は、「糖尿病」で大きな社会問題となっていた「失明」や「腎不全による透析」等の問題を激減させたため、「糖尿病の治療 = 血糖降下療法」との認識が医師を含め広がって、長い間、糖尿病の標準的な治療となっていたのです。

ところが2008年頃に、血糖を強力に下げる治療を行うと突然死する方が増えてしまうことが明らかとなり、「糖尿病の治療 = 血糖降下療法」の考え方を根本的に見直す必要が出てきてしまったのです。

『「糖尿病」は「高血糖病」だから「血糖降下療法」』との大変解りやすく、受け入れやすい考え方が、壁にぶつかってペシャンコになってしまったから大混乱の渦が駆け巡ったのは言うまでもありません。

2012年現在、この大混乱の渦は収束の方向に向かっていますがまだ余波は残っており、どの様な治療が最善であるかは専門医でも意見が分かれるところになっています。当然、糖尿病専門医と循環器医では考え方が違ってきているのが現状です。

(次回に続きます。)


あけましておめでとうございます。

本日より通常診療を開始しております。今年もよろしくお願いいたします。

今日から気合を入れて働こうと思ったのですが・・・・・・・・世間は明日から三連休とのこと。

ちょっと肩透かしを喰らった感じですね。

 

今年も健康に役立つブログを書いていきたいと思います。

 

余談ですが、「リンゴと医療」「錯覚と生活習慣病」「健康と病気の狭間」のキーワードでYAHOO!検索エンジンで一番を維持しています。(1月5日現在)いつまで維持できるか楽しみです。