月別アーカイブ: 2012年2月

インターネット検索のその後

以前にインターネットの検索でこのブログの記事が1番に表示されるようになったと書かせていただいたのですがH24.2.23現在「リンゴと医療」「錯覚と生活習慣病」「健康と病気の狭間」で一番をキープしています。当ブログをお読みいただいている皆様のおかげだと厚く御礼申し上げます。

一番になったこともさることながら、多くの方にお読みいただいている事が大変誇らしく感じながらも、この三つのキーワード(「リンゴと医療」「錯覚と生活習慣病」「健康と病気の狭間」)はかなり特殊な組み合わせで、「一番になっても不思議はないよな・・・・・・」との思いが心をよぎっておりました。

ととと・・・ところが今回「糖尿病はどんな病気」というキーワードで検索したところ、なんと「糖尿病はどんな病気(4)」が一番に表示されていました。色々な会社や公的機関のホームページを抑えての一番でしたので大変ビックリしました。1週間ほど前に調べたときには、2ページ目の最初あたりだったのですが、「ドキドキ」するほどビックリしたと同時に会社や公的機関のホームページにはかなわないので、2ページ目でもあり得ないと思ったところだったので、今回は心臓が口から飛び出そうなくらい驚いたのもご理解いただけると思います。

 

ここまでお読みいただいて大変強縮なのですが、確認のため他のコンピュータで確認したところ全然一番に表示されないことが判明しました。(リンゴと医療」「錯覚と生活習慣病」「健康と病気の狭間」では、どのコンピュータでも同じだったのに・・・・・・・)

ますますインターネット検索エンジンの仕組みが判らなくなってしまいました。

次回からまた通常のブログに戻りますね。

 


糖尿病はどんな病気(6)

「糖尿病はどんな病気」とのテーマで書いてきましたが、まとめとして糖尿病治療について日頃思っていることを書いてみます。前回までのブログとは違ってエッセイに近いと思ってお読みください。私もつれづれなるままに書き連ねてみます・・・・・。

 

これまでのブログで書いてきたことを簡単にまとめますと、糖尿病の治療は

「膵臓の保護」 >> 「血糖降下療法」

であり、治療の目標を「膵臓の保護」に向ける事と書けると思います。

 

 なぜ循環器医が糖尿病の治療に対してこの様なことを言えるかといいますと、私が医者になり立ての頃に心不全の治療で同じ様な考え方の変化(パラダイムシフト)を経験しているからなのです。心不全は心臓のポンプ機能の低下により全身に十分な血液を送れない病態なのです。心不全の治療のため数多くの「心臓ポンプ機能強化薬(強心剤)」が開発され実際に患者さんに使われました。強心剤により一時的には全身に送られる血液量は増えるのですが、人により期間の差はありますがしばらくすると心臓ポンプ機能は坂を転がるように低下してしまうのです。循環器医の多くは「心不全は難治性の疾患で、長期に使用できる優れた強心剤が必要だ。」と思っていたのです。

 しかし、日本と北欧などで同時期に心不全の治療に「心臓ポンプ機能を低下させる薬(β遮断薬)」を用いると心不全が改善することが報告されたのです。この薬は心臓ポンプ機能を低下させるので、心不全の方に通常のように投与した場合は心不全を劇的に悪化させ、心不全の方にとっては毒だと考えられていたのです。しかし通常使用する量よりかなり少ない量から心機能を確認しながら増量していくことにより、心機能を改善できる事が出来たのです。つまり過剰な心臓の働きを抑制(心臓を休ませる)することにより、心機能の改善が得られたのです。

 

つまり心不全の治療は

「心臓の保護」(心臓を休ませる) >> 「心臓ポンプ機能の改善」

であり、治療の目標を「心臓の保護」に向ける必要が明らかになったのです。

 

 その後、患者さんにこのβ遮断薬治療を説明する場合に「痩せウマにむち打ってさらに疲弊させるのではなく、放牧して体力が回復すばまた荷物が運べるようになりますよね。心臓も休ませることにより回復してくるのです。」と口がすり切れるほど話してきました。この経験から、現在の糖尿病の治療を考え直すと血糖の降下ではなく「膵臓の保護」を目標としなければならない時期に来ているような気がしてならないのです。

 

みなさんはいかがお考えでしょうか?

 

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糖尿病はどんな病気(5)

糖尿病の治療は「疲弊した膵臓をいかに回復させるのか」が糖尿病治療の根本に据えるべきではないかと前回書きましたが、具体的にどの様にしたらよいのでしょうか?

膵臓を疲弊させる最大の原因は「血糖コントロールの不良」です。ですから従来の「血糖降下療法」も十分に意味のある治療なのです。しかし、血糖を下げることを目標としてしまうと膵臓を疲弊させてでもインスリンを分泌させる治療に陥ってしまいがちになります。それは、膵臓からインスリンを(無理矢理)出させるSU剤(スルフォニルウレア剤)が血糖を速やかに下げる大変効果を実感しやすい薬だからだと思います。SU剤が悪い薬という意味ではなく、漫然と使い続けると膵臓の疲弊を進行させてしまう可能性があり、10年ほどで外からインスリンを補充(インシュリン注射)しなければ血糖のコントロールが出来ない病態に追い込まれてしまうかも知れないのです。

膵臓を保護する糖尿病の治療は、簡単にまとめると「インスリンの分泌を誘導しない治療」と言えると思います。一日に食べる総カロリーを減らしたり、運動をしてインスリンの働きやすい体質を目指したり、新しく出てきた「インスリン非分泌系」の糖尿病薬を用いたりすることで、膵臓を労りながら血糖のコントロールを目指す必要があると思います。それでも良好な血糖のコントロールが得られない場合には、SU剤の短期投与や(患者さんの心理的に壁がありますが)インスリンの自己注射を早期に始めることが必要と考えます。

治療に関しては色々な意見がありますので、主治医の先生の意見をよくお聞きください。「ブログに載っていた治療としてください」と主張すると、木に竹を接いだような事態になりかねませんので・・・・・

最後になりますが、糖尿病を膵臓の機能が十分に残っている早期に発見して治療を開始すれば、治療方法の選択を広げるばかりでなく治療成績を劇的に改善することは、異論のないことだと言えると思います。

 

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糖尿病はどんな病気(4)

前回までに、糖尿病の原因が「インスリンの働きが悪くなる」ことにあり、その根本に「インスリンの分泌が減る」ことと「インスリンが働き難い体質になる」ことがあるところまで説明しましたが、血糖降下療法でも同じように考えているのなら、何も変わらないじゃないかと思われる方も多いのではないでしょうか?血糖降下療法の考え方に従って、血糖のコントロールを強力にすると突然死する人が増えてしまうのは仕方がないことなのでしょうか?

私は仕方がないとは思わないのですが、ここからは専門家でも意見の分かれるところですので少し割り引いて読んでいただけるとありがたいです。このブログを読んでいただいている方でしたら既にお気づきだと思いますが、私は「そもそも論」(原点に立ち返って考える方法)が好きなのす。今回も「そもそも論」で説明しますね。

そもそも、肥満で運動をしない「インスリンが働き難い体質」の方が必ずしも糖尿病にならいのは、膵臓が頑張ってインスリンを出しているからに他ならないはずです。(単純化すれば「インスリンが働き難い体質」になってもそれを上回る「インスリン」を分泌できれば問題ないはずなのです。(実際は無理ですが・・・))ですから「インスリンの分泌が減る」事と「インスリンが働き難い体質になる」ことは血糖降下療法の視点からは同列ですが、私の考えでは糖尿病の原因を考えた場合には同列ではなく「インスリンの分泌が減る」事がより重要であると位置づけられるのです。

実は、膵臓にインスリンを分泌させ続けるとインスリンを作っている膵β細胞が減ってしまい、インスリンの分泌量が減るだけでなく、インスリンの分泌や分泌停止の反応が緩慢になり、必要なときにインスリンが出せないだけでなく、インスリンが必要なくなってもダラダラと分泌し続けることが知られています。このため、糖尿病で疲弊した膵臓は急速に血糖をコントロールする能力を失ってしまうのです。

膵臓が疲弊して血糖をコントロールする能力を失うために糖尿病が重症化するなるだけでなく、薬剤で無理矢理血糖を下げた場合には低血糖を起こしやすくなり突然死を増やす原因となっているはずなのです。この考え方から、糖尿病の治療は「疲弊した膵臓をいかに回復させるのか」が糖尿病治療の根本に据えるべきではないかと思っております。

 

次回は、膵臓を保護する糖尿病治療について私の考えを書きますね。

 

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