月別アーカイブ: 2012年3月

コレステロールの検査値について(4)

「善玉・悪玉コレステロールの比率(LDL/HDL)が大切だと」という趣旨でブログを進めていますが、どうしてこの比率が大切なのでしょうか?

 

ネットを検索してみますとこのような情報があちこちで見つかります。

『社会医療法人社団カレスサッポロ北光記念クリニック(札幌市)、佐久間先生らの研究によると、19992001年の間に初めて急性心筋梗塞になり、北海道24病院へ搬送された患者955人のうち54.5%がLDL-C値が120/dl以下、30.3%がLDL-C値が100/dl以下だった。対照群ではそれぞれ37.3%、18.9%なので、「心筋梗塞を起こす人はLDL-C値が高い」とはいえない成績が報告されています。』

 

つまり、心筋梗塞になってしまった人のデータを見ても必ずしも悪玉と言われるLDLコレステロールが高いわけではないとの事実が報告されているわけです。「じゃあ、LDLコレステロールは高くても大丈夫なの?」と思われた方は要注意です。この結果は、「心筋梗塞を起こす人はLDLコレステロールの値が高い」とはいえないこと、つまりLDLコレステロールが低くても心筋梗塞になる人がいることを示しているのです。善玉コレステロールであるHDLコレステロールの値が同じであれば、LDLコレステロールが高いほど動脈硬化は進みやすく、心筋梗塞になりやすいのは事実なのです。

LDLコレステロールの値が低くても動脈硬化(その結果としての心筋梗塞)が進むのであれば、LDLコレステロールの値は動脈硬化を予防する目安としては不十分であるといわざるを得ないのです。悪玉であるLDLコレステロールが低くても善玉であるHDLコレステロールが少なくなれば、動脈硬化が進みやすくなる事は、想像に難くありません。そこで善玉と悪玉コレステロールを一度にみられる値として「善玉・悪玉コレステロールの比率(LDL/HDL)」に注目が集まっているのです。

 

次回は「善玉・悪玉コレステロールの比率(LDL/HDL)」の値について書きたいと思います。

 

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コレステロールの検査値について(3)

悪玉と言われているLDLコレステロールですが、低ければ動脈硬化が進み難いのは明らかな事実として、体にとって全く必要のないものなのでしょうか?現在LDLコレステロールは低ければ低いほどよい(lower the better)と思われていますが、実はそうとも言い切れないのです。

 

以下のような、大阪大学の先生が行った調査があります。

「日本人地域住民で低LDLコレステロール(80mg/dL未満)が脳出血の死亡リスクを増加」

9万人を超える茨城県観察研究のエビデンス 低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が高いほど、脳実質内出血による死亡リスクは低下することがわかった。 LDL値が140mg/dL以上の人は、80mg/dL未満の人に比べ、性別・年齢補正後の脳実質内出血による死亡リスクがおよそ半減するという。

 

つまりLDLコレステロールが低すぎると、脳出血のリスクが増加してしまうのです。単にLDLコレステロールが低いだけの効果でなく、食餌や生活習慣などの影響がどこまであるか解りません。しかし遺伝的にLDLコレステロールの極端に低い人は、動脈硬化が進行しない反面、脳血管の解離(脳の血管が裂ける)を起こしやすいことが知られている事から、LDLコレステロールが極端に低いと血管の壁が弱く(脆弱)になると考えられます。

LDLコレステロールが高すぎても低すぎても、原因は違っていますが血管が脆弱になってしまうので、どちらの場合も血圧のコントロールを厳密に行う必要が出てくるようです。ですから悪玉と言われるLDLコレステロールも必要ないものではなく、人間の勝手な都合で悪玉にされている事がわかりますよね。


コレステロールの検査値について(2)

前回「善玉・悪玉コレステロールの比率(LDL/HDL)が大切だと」書かせていただきましたが、コレステロールに天使や悪魔のような善玉・悪玉があるのでしょうか?今回はその説明をします。

インターネットを見てみますと、

『血液中のコレステロールは、たんぱく質と複合体を形成してリポタンパクとして存在しています。リポタンパクは、比重の重さによってhigh density lipoproteinHDL、高比重リポタンパク)、low density lipoproteinLDL、低比重リポタンパク)、very low density lipoproteinVLDL、超低比重リポタンパク)、cylomicron(カイロミクロン、乳び脂球)の、4種類に分けられます。 その内、コレステロールを主に運んでいるのがHDLLDLで、HDLに運ばれているコレステロールをHDLコレステロール、LDLに運ばれているコレステロールをLDLコレステロールと呼んでいます。』

と説明されています。つまりコレステロールに違いがあるわけではなく、コレステロールが複合体を作る蛋白質により比重(デンシティー)が異なり、HDLコレステロールやLDLコレステロールに分けられているのです。その中でもハイデンシティー(比重の高い)リポタンパク(HDL)は、血管からコレステロールを引き抜いて肝臓に運ぶ働きをしています。逆にローデンシティー(比重の低い)リポタンパク(LDL)は血管にコレステロールを運ぶ働きをしています。

動脈硬化の原因の一つとして血管にコレステロールが蓄積することがあるので、血管にコレステロールを運ぶLDLは悪玉で血管からコレステロールを抜き取るHDLは善玉となるわけです。

 

必要があって体に備わっているものなのに、人間の勝手な都合で悪玉にされるLDLの言い分を聞いてみたいですね。

 

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コレステロールの検査値について(1)

初診の方に、「これまでの健診とかで糖尿病やコレステロールの検査値は大丈夫ですか?」とお聞きすると、「問題なく正常範囲に入っています。」と答えられる事があります。正常範囲から外れているのは紛れもなく問題なのですが、正常範囲内に収まっていれば大丈夫なのでしょうか?

本ブログをお読みいただいている方なら「耳にタコ」が出来るぐらいになっていると思いますが「糖尿病の早期発見には空腹時検査だけでは不十分」なのです。(詳しくは以前のブログを参照ください。)今回は糖尿病ではなく、検査のコレステロール値について書きたいと思います。

健診などの検査結果を見ていただきますと、コレステロールの検査値が2個から3個印字されていることにお気づきになると思います。総コレステロール(Tcho)HDLコレステロール(HDL)LDLコレステロール(LDL)3個なのです。総コレステロールは文字通りコレステロールの総量を表します。HDLコレステロールは高密度(ハイデンシティー)のコレステロールの意味であり、一般に善玉コレステロールと言われています。LDLコレステロールは低密度(ローデンシティー)のコレステロールで、悪玉コレステロールと言われるものになります。

この3つの検査値の関係は直感的には「Tcho = HDL + LDL」で悪玉コレステロールと善玉コレステロールを足したものが総コレステロールと思うのですが実際はそうなっていないのです。実は総コレステロールは善玉コレステロールと悪玉コレステロールの足したものに中性脂肪(TG:トリグリセリド)5分の1を足したものになっているのです。つまり「Tcho = HDL + LDL + TG1/5」になっているのです。ですから総コレステロールが同じ値であっても、善玉・悪玉コレステロールや中性脂肪の比率は色々な値を取り得ることが解ると思います。

最近はテレビのコマーシャルでも善玉・悪玉コレステロールの比率(LDL/HDL)が大切だと言われていますがどの様な考えに基づいているのかを、本ブログで数回にわたって出来るだけ簡単に説明したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。


雛人形と自転車と医療

今年も「あっ」と言う間に2月も終わり3月になりました。寒暖を繰り返しながらひと雨毎に、春の足音が大きくなっているのを感じますね。今日も朝から雨ですが、春を連れてくると思うと楽しい気分になるので不思議です。

3月と言えば「ひな祭り」ですがひな祭りで不動の地位を占めているのはやはり「雛人形」でしょう。以前、雛人形を購入する際に色々と調べたのですが、雛人形の頭(かしら)を作る職人さんと着物を含む体を作る職人さんは別で、ほとんどの雛人形は職人さん達の合作だそうです。あまたの試行錯誤に裏打ちされた伝統によって、設計図などが無くても大きさや微妙な角度などがピッタリと美しく収まるようになっているのだそうです。

春と言えば、運動不足解消のため暖かくなったら自転車でツーリングをしようと目論んでいます。その準備のため自転車を入手したのですが、職業柄か自転車の仕組みに興味を持ちツーリングに行く前から自転車の部品交換に没頭しています。(これがサーフィンだったら差し詰め「陸サーファー」状態ですかね。)自転車部品の規格は標準化がかなり進んでおり、私のような素人でもネジ一つで簡単に交換ができてしまうのです。このお手軽さの基は、精密な設計・製造に基づく加工技術に支えられているのだそうです。実際に普及品と高機能品では形状はほとんど変わらないのですが、材質と加工精度の高さにより、実際に自転車に乗った場合に全く別物になってしまいます。

「雛人形」と「自転車」は異なるアプローチで「標準化」を行っており、どちらも驚くほど上手に機能しています。「雛人形」の「標準化」は感性に訴えかけるものであり、「自転車」のそれは精密な設計によるアプローチなのです。

医療の「標準化」に関して議論され始めてから長い年月がたっていますが、いまだに有効なアプローチが見出せていないのが現状です。個人的には「雛人形」と「自転車」の中間的な手法を開発する必要があると思っているのですが、「感性」と「精密」をすりあわせることは、私の能力ではとても手に負えるものではありません。様々な分野の方が「医療」に興味を持っていただき、各分野のノウハウを結集して医療の「標準化」を成し遂げられる様な仕組み作りが出来れば良いのにと日々考えております。

 

残念ながら現状での医療の「標準化」は私が思い描くものと全く違って、医療経済抑制のアプローチになってしまっていると感じます。「感性」も「精密さ」も押しつぶしてしまう「標準化」にしてはいけないと強く思っているのですが・・・・・・・・

 

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