月別アーカイブ: 2012年6月

たかが肩こりされど肩こり(1)

特に小さなお子さんのおられる若いお母さんが多いと思うのですが、「肩こり」や「頭痛」に悩まされるケースが多いようです。頻繁に子供さんを「だっこ」するので仕方ないとあきらめたり、症状が重く辛い場合には肩を回したり指圧をしたりして何とか凌いでおられるようです。


たかが「肩こり」や「頭痛」なのですが、「なんとなくやる気が出ない」意欲低下が伴う場合には少し注意が必要となります。それは、軽いうつ病の身体症状としての「肩こり」や「頭痛」かも知れないのです。

うつ病の身体症状として宮澤仁朗先生がチェックリストを作成されています。
「朝、だるくて起き上がれない。」
「仕事に行きたくない気持ちが強い。」
「新聞も読めず、テレビを見る気もしない。」
「人と会うのはもちろん、話すのもおっくう。」
「頭が締め付けられるよう。」
「手足がしびれてびりびりする。」
「首が重く、肩がこる。」

この様に書くと一つでも当てはまると「私はうつ病だ」とビックリする方もおられると思いますが、そうではありません。全体の傾向として全て「うん、うん」(宝くじのCMではないですが・・・)と頷ける場合には、うつ状態の可能性が高くなります。一度、お医者さんに相談してみてください。


「肩こり」や「頭痛」だけのときはうつ病の可能性は極めて低く、多くの場合に現代病と言われる「眼精疲労」が関わっています。コンピュータなどの画面を見ている時間が長かったり、長時間の読書習慣があったり、コンタクトレンズを使っている人は要注意です。
「最初の2つは解るけど、どうしてコンタクトレンズ・・・・・?」との声が聞こえてきそうですね。


「謎解きは1週間の後で」お願いします。


似顔絵と病名

医院内の掲示物に使うために、似顔絵を描くソフトを入手して診療の合間に自分の似顔絵を作成しています。簡単にかけると思っていたのですが、自分でよく似ていると思っていてもスタッフから「全然先生らしくない。」と言われてしまったりしてなかなか難しいものです。
くだんの似顔絵ソフトは、顔の輪郭や髪型などの各パーツを福笑いのように置いていくことにより似顔絵を作るのですが、微妙な位置調節(マウスのワンクリック)で本人に見えたり見えなかったりするので不思議なものです。
人それぞれ注目するポイントが違うため「似ている」「似ていない」の意見が分かれることが多いのですが、それぞれの意見を容れながら修正していくと多くの人に「似ている」といわれるようになる場合と「これ誰?全然似ていない」となってしまう場合があります。

医学における病名もこれに似た状況があるのをご存じですか?「病名って決まっているものじゃないですか?」との声が聞こえてきそうですが、西洋医学と東洋医学でいわゆる「病名」が全く違うことを思い起こしていただけると少し違和感が薄れると思います。
また、このブログでも良く登場する「高血圧」や「高脂血症」はたまた「糖尿病」などの病名には親しみがあると思いますが、これらは「血圧が高い」・「血中の脂質が高い」・「尿に糖が出ている」(以前のブログ「糖尿病はどんな病気?」参照)という病気の一つの状態(病態)を取り出して付けられているのです。最近これらの病気をまとめて表すために「生活習慣病」や「メタボリックシンドローム」といった原因に着目した病名が登場してきたことともご存じのことと思います。

医学界では毎年のように新しい病態理解のための病名が栄枯盛衰を繰り広げています。頭のレントゲン写真を撮ると「もやもや」した陰が写るため「もやもや病」と日本で名付けられた病気は、原因は脳血管の異常だったにもかかわらず「脳血管異常症」ではなく国際的にも「もやもや病(Moyamoya disease)」と呼ばれて一般に定着しています。

似顔絵と病名、どの特徴を捕らえて多くの人の賛同を得るのか奥が深いですね。
きむ似顔絵3.jpg


○○年齢

現在当院には、動脈の硬さの指標となる「脈波伝導速度」を測定する機器が置いてあります。「脈波伝導速度」と言ってもお聞きになった方は少ないと思いますが、「血管年齢」の測定器と言えばなじみのある感じを受けられる方もおられるのではないでしょうか?


確かに、「脈波伝導速度が○○cm/sで、平均より動脈硬化が進んでいる可能性があります。」
と言われるより、「あなたの血管年齢は○○歳で、本当の年齢より10歳も老化しています。」
と言われた方が、感覚的に理解しやすく頭に残りますよね。

ちょっと考えてみますと、世の中には色々な「○○年齢」という言葉が溢れていることに気づきます。

では、どの様にして「○○年齢」を決めているのでしょうか?全てではないにしろ多くの場合は、それぞれの年齢の人たちを事前に測定した結果から、平均や分布(分散)などから統計学的に算出しているのでしょう。簡単に言うと測定した人の値が、どの年齢の人たちの平均と近いのかを判断しているイメージで良いと思います。
実は、これはかなり強引な方法でなのです。例えば45歳の平均値を決めるために基準となる100人を集めて測定し平均を計算したとします。平均を計算することに問題はないのですが、平均値と比較すると基準となった45歳の100人の中に45歳より年齢が高く出てくる人が結構多く含まれるのです。(基準となった人が基準から外れるのです!!)
強引な方法なのですが、検査値が悪い人の中には病気が隠れていることもあり、実年齢よりも「○○年齢」が大幅に大きいときは、気を付けないといけないのです。当院でも、血管年齢が15歳も高く出たため、色々と調べてみると糖尿病(空腹時血糖やHbA1cは正常値でした。)が隠れていた例もあります。

もしよろしければ、当院に「血管年齢」を測りに来てください。
「あなたの血管年齢大丈夫ですか?」

 

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最近風邪が流行っています

これまで色々な病気や検査・治療薬について書いてきましたが、読みやすいですといわれることもあるのですが、もう少し身近な事についても書いてくださいねとのご意見をいただくこともあります。ブログを読まれている多くの方には、専門的な事ばかりを書いているので、どうやら堅物の先生と思われているようです。

そこで今回は最近流行っている「風邪」について書いてみます。

私の医院に来られる「風邪」の症状は大きく2つに分ける事が出来そうです。症状としては喉の痛みが1−2日で引くのですがその後すっきりしないのが特徴で、喉の痛みが引いた後に2つのタイプに分かれます。一つ目は、軽い喉のイガイガが残って咳が出だすと連続して咳き込んでしまう症状が3-4週間続くタイプです。二つ目は、「風邪」症状が一旦良くなってすぐ、胃痛や下痢などの消化器症状が出てくるタイプです。(どちらのタイプも、人によっては発熱が続くことがあります。)多くの場合は子供と接触する機会の多い方が、子供からうつされれているようです。

どちらのタイプも冬にある「鼻水ズルズル・咳ゲホゲホ」といった、いかにも「風邪」という症状ではないので、「何か悪い病気じゃないかしらん」と心配される方が多いようですが、同じ様な症状の方が結構来られていますので、上記に当てはまる方は一安心していただいて良いと思います。

このブログを書いている最中にも、「症状が取れないのが心配で・・・・」という患者さんが来られましたが、書きかけのブログを見て安心して帰宅されました。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(5)

「睡眠時無呼吸症候群」が様々な病気と合併するので、検査を受けて「睡眠時無呼吸症候群」で無いことを確認するのは大切な事だと前回のブログで書きましたが、今回は具体的に書いてみます。

「睡眠時無呼吸症候群」と合併しやすい病気として、高血圧・心疾患・脳血管障害・糖尿病・多血症・肺高血圧症・不整脈などがあげられます。「睡眠時無呼吸症候群」がある人は無い人より、約2倍高血圧が多いですし、心疾患は約3倍、脳血管疾患は4倍、糖尿病は1.5倍多く発症しています。

この様に書くと、「睡眠時無呼吸症候群」になるとその他のリスク要因が無くても先ほど書いた病気になってしまうと思われがちですが、決してそうではないのです。「睡眠時無呼吸症候群」はあくまでこれらの病気を顕著化させる要因と思っていただいた方がより正確かも知れません。

この点からすると、生活習慣病などに関して「睡眠時無呼吸症候群」は病気の本質では無いかも知れませんが、生活習慣病をはじめとする多くの病気に関わっていることがわかります。「睡眠時無呼吸症候群」を早期に診断・治療することで、一度発症してしまうと「生活の質」(QOL)が恐ろしいほど低下する脳血管障害や心疾患になるリスクを大幅に減らせる可能性があるのです。

ごく軽いものも含めて脳血管障害や心筋梗塞などをに罹ってしまった方も再発予防のために、「睡眠時無呼吸症候群」の検査・治療を行うことに大きな意味があることがご理解いただけると思います。

当院で行っている「睡眠時無呼吸症候群」は大変手軽なもので、昔のオイルライターぐらいの器械を貸し出させていただき、寝る前に装着して一晩寝ていただき翌日に器械を返却いただくだけです。これまでのブログを読まれて心当たりのある方は是非一度お受けになることをお勧めします。

 

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