月別アーカイブ: 2012年7月

たかが肩こりされど肩こり(5)

一斉に鳴き始めるセミの声で目覚めると、今日も夏の暑い一日が始まると実感しますね。世間では天神祭も終わり、いよいよロンドンオリンピックの開幕です。日本サッカーは男女ともに白星発進!頑張ってもらいたいですね。


さて、これまで「たかが肩こりされど肩こり」と題していくつかブログを書きましたが、今回はまとめをしてみたいと思います。このブログで取り上げた肩こりの原因は、うつ病・眼精疲労・クーラー病・心筋梗塞ですが、肩こりの原因になるものはまだまだ沢山あります。それら全てを書き連ねることは、出来ませんし、もし書いたとしてもあまり面白いものにはならないと思います。
私が「たかが肩こりされど肩こり」で書きたかったことは、もちろん「肩こり」を軽く考えて放置しないでくださいということなのですが、「肩こり」が無くなれば万事解決とはいかないのです。狭心症の「放散痛」による肩こりは一過性のことが多いのですが、「肩こり」が無くなった後も、心筋梗塞・狭心症の原因となる動脈硬化は依然として体の中に残っているのです。
心筋梗塞・狭心症といった怖い病気でなくても同じ事が言えると思います。眼精疲労が原因の肩こりにしても、肩こりの症状が出ていないときも眼のピントを調節する筋肉は緊張しており、効率よい活動を幾分か妨げているはずなのです。


この様に考えると、「肩こりは」撲滅すべき敵ではなく、身体の異常を教えてくれる親切な「メッセンジャー」と言える側面を持っていると思いませんか?
「肩こり」に限らず、医療において症状を改善することは一つの手段ですが、見えない身体の異常を教えてくれる親切な「メッセンジャー」である症状をだまらせることにばかりに終始すると、深刻な事態になりかねないことは容易に想像が付くと思います。(漫然とした対症療法は良くないのです。)
日頃から「肩こり」を感じておられるのなら、何が原因の「肩こり」なのか親切な「メッセンジャー」の声に耳を傾け、ご自身のリスクを評価しておくことが大切なのです。その中でリスクが高いことが判れば、リスクを下げる治療を開始することになります。

「たかが肩こりされど肩こり」まだまだ奥は深いですが、今回のシリーズはこの辺で・・・・・

 

.


たかが肩こりされど肩こり(4)

暑い夏を迎え撃つ、熱い夏祭りが各地で行われているようですね。医院の近所でも楽車(だんじり)の軽快なリズムと屋根の上の若者が踊る龍、そしてハッピ姿の笑顔の子供達が縦横無尽に闊歩しています。大阪では、天神祭・PL花火と夏の風物詩が続きます。

今回は心筋梗塞・狭心症が原因の肩こりについて書きたいと思います。
最初にご注意いただきたいのは、これまでブログに書いてきたような普通の「肩こり」はほとんどの場合、「心筋梗塞・狭心症」では無いということです。「心筋梗塞・狭心症」の症状として一番多いのは胸痛なのですが、人によっては歯の痛みや左肩・左腕の痺れや痛みに代表される「放散痛」が主な自覚症状の場合があるのです。
この左肩に現れる放散痛を「肩や腕が抜けるような感じ」や「今まで経験したことのない肩こり」として感じられる方がいるようです。短い時間で肩こりの強弱が変化したり、肘の方までこりを感じたり、階段を上ると強くなるなど、通常の肩こりと違う場合には注意が必要になります。
この様に書くと「私の肩こりは大丈夫だろうか?」と疑心暗鬼になり、よく考えると何か普通の肩こりと違うと感じられる方もおられると思います。その場合はどうすれば良いのでしょうか?一番大切なことは、ご自身が「心筋梗塞・狭心症」になるリスクの高いタイプなのかリスクが低いタイプなのかしっておくことなのです。
「心筋梗塞・狭心症」になるリスクの高いタイプの方が、今まで感じたことの無いような「普通でない肩こり」を自覚した場合には、すぐに近医で心電図をとってもらう必要があります。「心筋梗塞・狭心症」になるリスクが高いか低いかは「心筋梗塞・狭心症」の原因が「動脈硬化」であると考えれば、これまでのブログをお読みいただいている方は、「生活習慣病などの検査異常があるか無いかで判断できるのだな!」と「ピン!」と来たことと思います。

「肩こり→心筋梗塞・狭心症」と直結してしまうと、視聴者の不安を煽るテレビの「なんちゃって医学」と変わらなくなってしまいますが、自分のリスクが高いのか低いのか知った上で、典型的でない症状などの知識を整理・活用することは大切であると思います。
リスクを知ることは大病予防の第一歩です。採血の針を刺されるのが嫌な方は、リスクを知って血圧のコントロールをするだけでも効果はあると思いますよ。是非、大病予防の第一歩を踏み出してください。

 

.


たかが肩こりされど肩こり(3)

もうすぐ梅雨明けだと思うのですが、大変蒸し暑い日が続いています。これだけ湿度があると汗が蒸発せずに体温が上がり、熱中症(熱疲弊)になる方が増えてきます。また、症状が出なくても体力を奪われて、本格的な夏を乗り切ることが難しくなることもありますので、十分な睡眠を得るため、夜間など適切な温度・湿度の管理をしていただければと思います。

前回、「眼精疲労」から来る「肩こり」「頭痛」について書きましたが、今回はこの時期から増えてくる別タイプの「肩こり」について書きたいと思います。
ここまでで「ビン」と来た方もおられると思いますが、実はこの時期から使用頻度が多くなるクーラーが原因の「肩こり」があるのです。直接肩が冷やされる事により血液の流れが悪くなるだけでなく、室内と外気との温度差が大きい場合には、自律神経などの調節機能が低下して今まで潜んでいた症状が現れてくることもあるのです。
これはいわゆる「クーラー病」なのですが、胃腸の機能低下(食欲減退、便秘、下痢をしやすくなるなど、胃腸の調子が悪くなる)やだるさ( 疲労感
睡眠時間の長短は関係なく、だるさや疲労感が解消されない)といったよく知られている症状以外にも、肩こり・頭痛・腰痛・下肢痛を起こしてくる頻度は思いの外高いようです。
予防方法としては、一般にいわれているように「体を冷やしすぎない」「適度の運動をする」「体を中から温めるため温かい食べ物を摂取する」「温めのお湯でゆっくりと入浴する」などの方法があります。

今年は、節電でエアコンの設定温度を上げているので「クーラー病」になりにくいと思っていても、汗を拭かずに長時間クーラーにあたったりして体を冷やすとやはり「クーラー病」になることもあるのです。設定温度が低いため、体が冷えた感じが少ないので長時間クーラーの冷気に直接あたりたくなるものです。
「熱中症」と「クーラー病」全く反対の病気に思えるのですが、どちらも体の正常な調整機能が失われることによって起こってきます。夏ばてなどによる体力低下は、「熱中症」と「クーラー病」どちらにもなり易い状態なので、お気を付けください。


たかが肩こりされど肩こり(2)

夏の暑さを予感させるような最近の天気ですね。いかがお過ごしですか?
これまで、お読みいただいている方のお役に少しでも立てればと思い駄文を書き連ねて参りましたが 、おかげさまでこのブログを始めてから1年がたちました。御礼申し上げるとともに、新たな気持ちで頑張っていきたいと思います。

さて、前回のブログで「コンタクトレンズが眼精疲労」の原因になると書きましたが、1週間たちましたので「謎解き」(?)をさせていただきます。

コンタクトレンズは眼鏡と同様に視力矯正のために使われています。眼鏡に比べ、「視野を妨げない」とか「見た目がきつくなったり、重たくなったりしない」などの利点がある一方で「乱視の矯正力が弱い」とか「着け外しが自由に出来ない」などの欠点があります。
乱視の矯正が十分でないと目が疲れるのはご理解いただけると思うのですが、乱視のない方の場合は問題ないのでしょうか?実は乱視のない方でもコンタクトレンズの「着け外しが自由に出来ない」事により「眼精疲労」を誘発しやすくなるのです。
若い方の場合は近視が多いと思いますが、コンタクトレンズを合わせる場合に(眼鏡の場合も基本的に同じですが)、遠くがよく見えるように度を決めるのが一般的です。実は遠くが良く見えるようにするということは、近くが見えにくくなるということなのです。「私はコンタクトだけど遠くも近くも良く見えますよ!」との声が聞こえてきそうですね。遠くが良く見える眼鏡やコンタクトレンズで近くを見ると裸眼で近くを見るときより、目に力を入れる必要があるのです。年齢が進んで目の調整力が落ちてくる(目に力が入れ難くなる)と遠近両用の眼鏡が必要になるのはこのためなのです。現代社会は情報機器などの発達により近くを見る機会が多いのですが、コンタクトレンズは眼鏡のように簡単に着け外しが出来ないので目に力が入ったまま長時間にわたり近くを見続けることになり、「眼精疲労」を誘発し慢性の「肩こり・頭痛」の原因となってしまうのです。


「眼精疲労」が「肩こり」「頭痛」の原因の場合いくら肩を揉みほぐしても、原因が無くなっていないため、すぐに症状が出てしまうことは容易に想像出来ると思います。「眼精疲労」を和らげる治療を併用していただくと症状が出難くなるかも知れません。思い当たる方はお気軽にご相談くださいね。

「謎解き」ご納得いただけましたでしょうか?