月別アーカイブ: 2012年8月

健康診断

8月も最終日になり過ぎていく夏を惜しむような文章を書こうと思ったら、昨日は外に出ると暑さでフラフラしました。もう少し暑さが続くようですのでお体にお気を付けください。
今回のブログから「副作用と代償機転」について書こうと思っていたのですが、かなり込み入った話になりそうなので、今回は以前に書いたブログ「検査の正常値と異常値について」では書けなかった健康診断の考え方について書きたいと思います。

多くの方は健康診断で異常値がない事を良いことだと考えられるようです。確かに異常のない事は素晴らしいことなのですが、実は異常が見つかっていないだけというように考えたことはありませんか?


かなり長寿の家系に生まれましたといわれる方は別として、誰でも病気になりやすい何らかの体質は持っているはずなのです。ところが健診項目に異常がないということは、自分の弱い所(病気になりやすい体質)をその健診項目では発見できていないのかも知れません。

反対に、かなり短命の家系に生まれましたといわれる方は別として、病気になりやすい体質(遺伝的に弱いところ)を3つも4つも持っていることはないはずなので、健診で異常が見つかった場合に、そこだけをケアしておけば大病になるリスクを効率的に減らすことが出来るのです。


一般に、異常値が出るから健康診断を受けたくないとの心理が働きがちですが、自分の弱点を早く見付けて手当てする為には、異常値が見つかった健康診断の方がより有用だともいえます。検査値を正常にしようと自分の体質と戦う必要はありません。上手に折り合いを付けていくことが大切なのです。
この観点からいえば、大病をする前に特定健診で異常の見つかった人は、幸運だといえるかも知れません。

「循環器内科を受診していただければリスクを下げる確実な方法があります。」

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むずむず脚病?(レストレスレッグス症候群)

最近は突然の雷鳴や豪雨が当たり前で、気楽に自転車で出かけると1時間程も足止めされることを覚悟しておかないといけないようです。気象庁によりますと9月まで残暑が続くようですので、体調にご注意ください。

みなさんは「むずむず脚病」という病気をご存じでしょうか?(風変わりな名前ですね。)
ネットで検索してみると・・・・・・・
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むずむず脚症候群は、ヨーロッパでは17世紀からこれに相当する病気の報告があり、1960年になり米国のエクボン博士により同博士の名前を取って、エクボン症候群(英: Ekbom syndrome)と初めて名前が付けられた。日本では1997年に日本睡眠学会に米国より現状調査の依頼があり、日本国内で俄かに注目されるようになった。現在では広く見られる神経疾患となり、患者が脚を動かさずにはいられない状況から、「下肢静止不能症候群」とも呼ばれる。
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との記述があります。

要約すると、痺れや痛みまたは異常感覚(むずむず)によって脚をじっとしておけない(静止不能)状態になる病気です。特に夜間就寝時に症状を強く感じて、不眠の原因にもなる事があります。この病気は、明らかな原因が不明なことと、この病気があまり知られていないことにより、症状の強い場合には医療不信やうつ病の引き金になることさえあるようです。
近年では服薬により脊髄神経の過敏性を抑えることで、症状が改善する事が可能となっています。ちなみに統計的には人口の2〜5%にこの病気があるそうですので、全国には何百万人の「むずむず脚症候群」の方が居られる計算になります。「もしかして・・・・」とお気づきになりましたらお気軽にご相談ください。

 

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メロンと椎茸と医療

お盆休みに海に行ってきました。まだ日焼けした肩の辺りに心地よい余韻が残っています。楽しい思い出をくれた海ですが、そこはメロンの生産で有名な地域でもあります。大都会に運ばれる前のメロンが安い値段で所狭しと並んでいる光景は、ある意味圧巻です。
そんなメロンなのですが、昔食べたメロンと比べて何だか物足りなさを感じてしまいます。「今みたいにおいしいものが溢れていなかった時代だから」とか「時間の波に洗われて、記憶が美化されているんだろう」と自分の中で整理していたのです。
ところが、あるとき食べた小ぶりのメロンが舌触りや香り高さが私の記憶にあるメロンそのものだったのです。メロンに付いていたタグの記述に「原種系」の文字がありました。聞くところによると、原種系のメロンは大きくならないために商品価値が低く、最近はほとんど作られないとのことです。

その話を聞いたとき、以前新聞で読んだ椎茸の話を思い出しました。早速ネットで調べてみると下記の記述を見付けました。
幻の椎茸“黒”(204号)は、現在、少数で結成される熊本県菊池市の「原木椎茸こだわり会」の夫婦しか生産することのできない椎茸です。その名の通り幻の椎茸と呼ばれています。
 この「幻の椎茸」は春にしか収穫できない貴重な品種です。日本産椎茸の発祥的品種であり、最も椎茸の原種に近いといわれております。通常の椎茸に比べ色が黒く、椎茸が持っている本来の味と豊かな香り、そして歯ごたえの良さが大きな特徴です。
 昭和17年、純粋培養種駒法の発明者、故森喜作氏が最初に送り出し、その後生産しにくい等の理由から一時は歴史の彼方に消えたものの、『昔食べたあの香り高い、歯ごたえのある美味しい椎茸を食べたい』との消費者の声をきっかけに、栽培されることのなくなった原種椎茸を7農家の情熱で実を結び、平成13年に見事復活しました。

メロンにしろ椎茸にしろ経済的な理由で、食品の根本である本来の味や香りを知らない間に切り捨ててしまってきたのだと思います。医療の世界に同じことが起きないように、堅く立って堪え忍ぶ事が今の医師に求められているように思います。


「血圧が高いですね。」

ここ数日の間、診療をしていて「血圧が高いですね。」と言っていることが多いような気がします。これまで血圧が正常値で何の問題もなかった人が、急に上の血圧(収縮期血圧)で20mmHg程度上がっているのです。「外食が多く塩分を取りすぎていないか?」「服薬をちゃんとしているか?」「何か思い当たるふしはないか?」など質問攻めにするのですが、急な血圧上昇を説明できる理由はわからないのです。
最初は、何とか原因を探ろうと色々と質問をしていたのですが、そのうち・・・「あなたもですか?」と最初の勢いは何処へやら、「最近暑いから、ストレスによるものかなぁー」と納得したようなしていないような状態が続いていました。(実際にストレスにより血圧上昇が起こることもあるのですが、これだけ多くの人が同時期に血圧が高くなるのは大変珍しいとしか言えないのです。)

ところが、先ほど受診された患者さんとの会話で「血圧が高いですね。」と言わなければならない理由がわかったような気がしました。実はその方も急に血圧が上がっていたのですが、「オリンピックを見ていて最近寝不足です・・・・・」といっておられたのです。「オリンピックで寝不足!」と私の頭の中に光が点くと同時に「ビン」という音が聞こえました。暑いだけでなく、ロンドンで行われているオリンピックで、多くの人が同時に寝不足になっているのが原因かも知れないと思ったのです。

今回血圧の高かった方々が、次回の受診で血圧が下がっているか?、はたまた「なでしこジャパン」や女子レスリングの活躍したオリンピックを見ていたか、お聞きするのが今から楽しみです。

皆様も夜更かしはほどほどにしてくださいね。


折り紙と医療

突然ですが、最近折り紙にはまっています。インターネットで偶然見かけたリアリティ溢れるバラの折り紙(川崎ローズといわれています)に驚かされたのが切っ掛けです。立体的なバラが正方形の平面からハサミやノリを使わず形作られるのは、自分で作れるようになった今でも不思議な感覚です。
このバラの折り紙ですが一般的な「鶴」などの折り紙のように、紙を折っていくにしたがい形が出来上がっていくのではないのです。全工程の3分の2程度は折り目を付けて、正方形の平面(折り紙を全部開けた状態)に戻す繰り返しなのです。知らない人が端から見ていると、折り紙が単にしわくちゃにされているだけに見えるようです。実際に子供達の前で折っていると、「早く作って!!」と不満の声が上がる程です。
全ての折り目が付いて完全に開いた状態にされた折り紙が、みるみるうちに立体に立ち上がってバラの形になる様は、不満を鳴らしていた子供達の眼をまん丸に変えます。(その時の私の「ドヤ顔」を想像してみてくださいね。)最終的な形を見据えた下準備(プレパレーション)の大切さを実感しました。

以前のブログ(「リンゴと医療」「雛人形と自転車と医療」)でも書きましたが、医療のあるべき姿を見据えて、医療の高度化と国民の高齢化に対応できるシステム作りのプレパレーションを始めていないといけない時期に来ているのではないかと思います。ビジョンを示す人(ビジョナリー)の不在が医療分野の大きな不幸なのかも知れません。

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