月別アーカイブ: 2013年4月

判断と決断

朝は肌寒いのに昼からは汗ばむような陽気で、毎日何を着て出ようか「天気予報と相談」の日々が続いています。皆様も、体調を崩されないようにお気を付けください。

早速ですが、我々は日々「判断と決断」を繰り返しながら生活を営んでいると言えるのではないでしょうか?先ほど書きましたように「気温の変動が激しいので何を着て外出しようか?」と考えることにも「判断と決断」が入っていますよね。

「外出する時の服装を選ぶ」過程をもう少し詳しく分析してみますと、

1.これまでの経験に基づく自分の感覚と天気予報の情報を吟味する。
2.この情報から昼間の気温や日差しがどの様になるのかを「判断」する。
3.この判断から今日一日快適に過ごせそうな服装を考える。
4.人に会うなどの「社会的状況(本日のスケジュール等)」を加味して何を着て外出するか「決断する。」

多少の違いはあっても、この様な段階を経ているのではないでしょうか?

病気の治療の場合も同じ様な過程が必要になるのです。喉が痛くなったら「○○」を飲んで温かくして寝れば大丈夫など、皆さんも「判断と決断」をされていると思いますので、上の「外出するときの服装を選ぶ」の様にどの様な過程を経ているのか考えて見てくださいね。

実は、生活習慣病等の治療においては上記のような「判断と決断」が上手く働かないことが多いのです。それは、一人の人が「生活習慣病を何度も経験」することはないので、「経験に基づく感覚」が得られないため、検査値や聞きかじった情報のみに頼った不正確な「判断」に陥って仕舞いがちになるからです。不正確な「判断」から正しい「決断」が出来ないことは想像に難くありません。(いくら精度が良くなったとはいえ天気予報を鵜呑みにすると痛い目に遭いますよね。)

では生活習慣病の治療において正しい「決断」をするためにはどうすれば良いのでしょうか?答えは多くの生活習慣病の方を治療している専門医に適切な「判断」をしてもらうのが近道だと思います。(健康相談をお勧めするのには、この様な意味があります。)

もちろん、専門医には皆さんの「社会的状況」は判らないので、正しい「決断」はご自身でする必要がありますが・・・・・・・


横山大観とわらび餅と血糖検査

今回のテーマは書き出すと長くなりそうなので、いきなり結論を書きますね。今回のブログのテーマは「代用品が幅を利かせる事により、問題が起こってくる。」という話です。

さて、結論を先に書いてしまったので気楽にはじめますね。

まず、「横山大観」ですが、言わずと知れた日本屈指の画家ですが、広く自分の作品を楽しんでもらいたいとの想いから、『工芸画』(精密な複製画)の普及に尽力されたそうです。オリジナルの絵画は一般の方が到底手の届かない価格なので、複製であってもオリジナルに近いものを飾りたいと、大変良く普及したそうです。ところが長い年月の内に『工芸画』という事実が忘れられ、オリジナルの絵画として目の飛び出るような高い値段で入手する悲劇が起こる事は、テレビの「○○鑑定団」で何度も放映されているので、見られた方も多いのではないでしょうか?

これは美術界に良くある偽物の問題ではなく、善意で作られた「代用品」が「代用品」である事実を忘れられることにより引き起こした問題と言えるのではないでしょうか?

次に「わらび餅」ですが、本来わらび餅は蕨(わらび)の根から取ったデンプンである「わらび粉」から作るものだそうです。しかし国産の本わらび粉を使ったわらび餅は超高級品で、ある京都の老舗和菓子店では1皿3000円ぐらいするそうです。コンビニやスーパーで見られる安価のわらび餅は、
甘藷澱粉やタピオカ澱粉などから作った模造品なのだそうです。私もわらび餅と言われて頭に浮かぶのは「模造品」の方だと思います。

「本物のわらび餅は食感も香りも最高で、何だか別次元のお菓子をいただいているという感じ。」なのだそうです。わらび餅の本来の良さが「代用品が幅を利かす」事で広く知られないのは何とももったいない話です。

最後に血糖検査ですが、当院で糖尿病治療薬の処方を受けている患者さんが健康診断を受けたところ、結果説明をする医師から「空腹時血糖がこれぐらいなら、糖尿病治療薬は要らないのでは・・・?」と言われたそうです。この方は「空腹時血糖は正常なのですが、糖負荷試験(75g OGTT)をすると2時間経っても血糖値が十分に下がらない」耐糖能異常という状態なので、空腹時血糖だけを見てその様に説明した医師の気持ちは理解できるのですが、「空腹時血糖の正常・異常の基準は、糖負荷検査異常を効率的に見付けるための『代用品』である」という事実が忘れられているのでしょう。(「そもそも・・・・・」と書き出すとさらに長くなるので、以前のブログを拾い読みしてくださいね。)

自分の専門分野は良いのですが、他科の分野で「代用品」を「代用品」として認識できるように日々論文などと格闘しています。


平均回帰

「花散らしの嵐」が過ぎ去ったと思ったら暖房・加湿器が必要な気候に逆戻りですね。気候が不安定な時ほど体調を崩しがちなものです。十分に睡眠を取ってくださいね。

さて、今回のブログは「平均回帰」についてですが、何か難しそうな語句が並んでしますが「回帰」とは「結局戻っていく」といったような意味ですので、「平均に戻っていく」という話です。

スポーツや勉強の時に良く言われることですが「ちょっと成績が良かったと言って褒めたらこの様だ。」とか「成績が振るわなかったことを怒ったら気合いが入ったみたいだな。」と、お聞きになったことがあるのではないでしょうか?それとも、ご自身で経験して「そうだね。」と頷いている方もおられるのではないでしょうか?

実は直感には反するのですが、「良い成績が次は悪くなったり」「悪い成績が次は良くなったり」することは、褒めたり怒ったりした効果よりも「平均回帰」による現象であることが知られているのです。(そういうエビデンスを作った人がいるのです・・・・・・・・!)

通常(平均)より良い成績を取る確率は低いので、2回続けて良い成績を取る確率はさらに低くなります。良い成績ばかりを取っていれば「平均」は上がって行ってしまうので、「平均」が変わらないのであれば良い成績の後は悪くなる確率が高いのです。

同じように考えれば、悪い成績の後に「叱咤」しなくても次は成績が良くなる可能性が高いことはご理解いただけると思います。(あくまで「平均」が変わらない事が前提ですので、悪い成績を気にしなくなって「平均」が下がってしまうことを防ぐには「怒る」事も大切です。)

医療の世界でも「治療が効いている・効いていない」との判断をするときに「平均回帰」の考え方を知っておかないと、判断を間違う原因になる時があります。

例えば「運動・服薬」を一生懸命続けたら血圧が下がった(運動・服薬の効果+たまたま良かった)のに同じように続けているのに元に戻ってしまった(運動・服薬の効果−たまたま悪かった)場合、多くの方が「運動・服薬」が効かなくなったと感じて中断してしまうのです。良くなった喜びが大きな分失望が大きいのかも知れません。

「平均回帰」の考え方を応用すると、もう少し長期的に見てみないと「運動・服薬」の本当の効果は判断できないことをご理解いただけると思います。

私のブログも「面白い」時と「面白くない」時が入り乱れていますが決して「むらっ気」ではなく「平均回帰」しているだけですよと言い訳して、今回のブログを締めたいと思います。

 

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桜と小麦と貧血

気温が上がるにつれ咲き始めたかなぁ?と思っていた桜が今は盛りと咲き誇っていますね。明日は「爆弾低気圧」の発生が予測されているので、風に散ってしまうのでしょうかね。

そんな桜を惜しみつつ、今回のブログは桜の話題から始めたいと思います。

日本全国に広く植えられている(ニューヨークにも友好の印に送られて植樹されていますが)桜の代名詞と言えば言わずと知れた「ソメイヨシノ」でしょう。実は、そのほとんど全てが接木によって増やされた、現代風に言えばクローンである事をご存じでしょうか?春の時期に一斉に咲いて、ほとんど同時に散っていくのは、おなじDNAを持っていると考えると合点がいきます。実は、「ソメイヨシノ」は通常の種子では増えることが出来ないDNAを持っているのですが、その美しさから人間の手でここまで広まったのです。

同じ様なことが小麦についても起こっているそうです。野生の小麦は、実が成熟すると風で遠くまで飛ぶように穂から種が自然と外れるそうです。しかし、現在の栽培用の小麦は種が成熟しても外れず刈り入れが確実に出来る変種なのだそうです。

植物の話が続きましたが、実は人類でも同様の現症があります。鎌形赤血球貧血と言われる赤血球が変形する「貧血」なのですが、アフリカでは他の地域に比べてこの貧血の人が多いのです。実は、変形した赤血球が恐ろしい病気の「マラリア」に強いため、「貧血」である不利な点を覆い隠してしまうのです。

この様に一見不利に見えるDNAが広まっていく要因となっている「人の嗜好」や「収穫量」や「マラリア」を学術的には「選択圧(選択圧力)」といいます。現代社会は便利にはなりましたが、「高カロリー」、「ストレス」などの強大な「選択圧」がかかっている環境なのです。自身の弱いところをいち早く知り対策をすると同時に、利点を延ばしていく努力が必要なのかも知れません。