横山大観とわらび餅と血糖検査

今回のテーマは書き出すと長くなりそうなので、いきなり結論を書きますね。今回のブログのテーマは「代用品が幅を利かせる事により、問題が起こってくる。」という話です。

さて、結論を先に書いてしまったので気楽にはじめますね。

まず、「横山大観」ですが、言わずと知れた日本屈指の画家ですが、広く自分の作品を楽しんでもらいたいとの想いから、『工芸画』(精密な複製画)の普及に尽力されたそうです。オリジナルの絵画は一般の方が到底手の届かない価格なので、複製であってもオリジナルに近いものを飾りたいと、大変良く普及したそうです。ところが長い年月の内に『工芸画』という事実が忘れられ、オリジナルの絵画として目の飛び出るような高い値段で入手する悲劇が起こる事は、テレビの「○○鑑定団」で何度も放映されているので、見られた方も多いのではないでしょうか?

これは美術界に良くある偽物の問題ではなく、善意で作られた「代用品」が「代用品」である事実を忘れられることにより引き起こした問題と言えるのではないでしょうか?

次に「わらび餅」ですが、本来わらび餅は蕨(わらび)の根から取ったデンプンである「わらび粉」から作るものだそうです。しかし国産の本わらび粉を使ったわらび餅は超高級品で、ある京都の老舗和菓子店では1皿3000円ぐらいするそうです。コンビニやスーパーで見られる安価のわらび餅は、
甘藷澱粉やタピオカ澱粉などから作った模造品なのだそうです。私もわらび餅と言われて頭に浮かぶのは「模造品」の方だと思います。

「本物のわらび餅は食感も香りも最高で、何だか別次元のお菓子をいただいているという感じ。」なのだそうです。わらび餅の本来の良さが「代用品が幅を利かす」事で広く知られないのは何とももったいない話です。

最後に血糖検査ですが、当院で糖尿病治療薬の処方を受けている患者さんが健康診断を受けたところ、結果説明をする医師から「空腹時血糖がこれぐらいなら、糖尿病治療薬は要らないのでは・・・?」と言われたそうです。この方は「空腹時血糖は正常なのですが、糖負荷試験(75g OGTT)をすると2時間経っても血糖値が十分に下がらない」耐糖能異常という状態なので、空腹時血糖だけを見てその様に説明した医師の気持ちは理解できるのですが、「空腹時血糖の正常・異常の基準は、糖負荷検査異常を効率的に見付けるための『代用品』である」という事実が忘れられているのでしょう。(「そもそも・・・・・」と書き出すとさらに長くなるので、以前のブログを拾い読みしてくださいね。)

自分の専門分野は良いのですが、他科の分野で「代用品」を「代用品」として認識できるように日々論文などと格闘しています。






DDまっぷ ドクターブログ 一覧