月別アーカイブ: 2013年8月

バイキングとカメハメハ大王と生活習慣病

「やっと涼しくなりましたね」と書こうと思っていたら、台風の影響か今日はまた蒸し暑さが戻ってきてしまいましたね。来週はもう9月ですが、秋はいつ来るのでしょうかね。

さて皆さんも良く知っている食事の形式である「バイキング料理」ですが、きちんと行儀良く席について食事をするフランス料理などと比べて、自分で取ってきて食べる豪快な感じや自由さが北欧の海賊「バイキング」のイメージと重なり、バイキングはこんな食事の仕方をしていたのではないかと妙に納得してしまいます。

実は、「バイキング料理」のいわれは、日本では東京にあるレストラン「バイキング」ではじめられた食事の形式なので「バイキング」と呼ばれるようになったであり、北欧の「バイキング」とは直接関係ないのです。(ですので欧米では「バイキング」と言わず「ビュッフェ」と言います。)

この様な説明を聞いても、やはり北欧の「バイキング」を想像してしまうのでイメージとは不思議なものです。

次に、ハワイの「カメハメハ大王」なのですが、「カメハメハ」という音の響きとハワイの温暖で平穏なイメージとがガッチリと結びついているので、多くの人がNHKのみんなの歌に採用された「南の島のハメハメハ大王」の歌詞にあるようなロマンチックな人物を想像すると思います。

実は、ハワイの「カメハメハ大王」はイギリスなどから軍事支援を受けた強大な軍隊を持ってハワイを統一統治した英雄であり、辣腕政治家でもあったそうです。

あるモノとイメージがあまりに強固に結びついてしまうと、実物を知った後もイメージに引きずられてしまうことが良くあります。

医療の世界でも「生活習慣病」という言葉がありますが、日本に元来からある「病気の原因は不摂生」というイメージと結びついて、「生活習慣が悪いから病気になった。」と思われがちなようです。

しかしこれは一方的な見方で、「体質と環境の不一致」が本来の原因なのです。生活習慣(環境)を変えても検査異常が解消されない場合には、すぐに服薬によって体質を調整する必要があるのです。

最近では、上記の「生活習慣病」のイメージに「メタボ(メタボリックシンドローム)」のイメージが上乗せで結びつき、「体質と環境の不一致」の「体質」の部分が忘れ去られているようです。

お気を付けあそばせ・・・・・・・・・


ときどきどきどき(3)

今回は不整脈が止まる条件を「確率論」で考えるとはどういう事か書いてみたいと思います。

「確率論」と難しそうな言葉を使っていますが、要するに1回の事で「○○すると不整脈が止まった・止まらなかったの○か×で判断」するのではなく、何度か繰り返してみて明らかに(再現性良く)「○○すると不整脈が止まった」場合にはじめて「○○は不整脈を止めるのに有効だ!」と判断するということです。

つまり「たまたま」や「思い込み」の影響を取り除かないと、実際のところは判らないのです。(この辺りは、以前に書いたエビデンスの考え方に似ているかもしれませんね。よろしければ「エビデンスとは?」をご参照ください。)

「たまたま」は再現性良く不整脈が止まらないので分かり易いですが、「思い込み」は少し説明が必要かもしれません。

「思い込み」と聞くと何だか精神的なもののような響きがあります。確かに「思い込み」には精神的な側面はあるのですが、この言葉から受けるニュアンスと全く違った気付きにくい面があるのをご存じでしょうか?

例えば「冷たい水を飲んだら繰り返しよく不整脈が止まる。」といった場合に、「冷たい水を飲むために行った行動(付随行動)」が不整脈を止めているのかもしれないのです。以下に、思い付く付随行動を書き連ねてみます。

*冷たい水を飲むには台所まで歩いて行く
*古い冷蔵庫を使っているので、息を止めて力一杯扉を開く
*氷を素手で取ってコップに入れる
*蛇口の位置が低いので前屈みの姿勢で水がコップに溜まるまで待つ
*コップの水を一度に全部飲む(その間息を止めている。)

等々、不整脈を止めるのに関係しそうな付随運動だけでもこれだけあります。
これらは、「冷たい水を飲む」という「思い込み」の陰に隠れて意識されないことが多いのです。
(「冷たい水を飲んでも不整脈が止まらなくなった。」と慌てて受診された方によくよく話を聞いてみると、その時は奥さんに冷水を運んでもらっていた例もあります。)

不整脈が出た時は出来れば心電図を取るのが一番ですが、自覚症状は強いけど大丈夫な不整脈だといわれている方で、「ときどきどきどき(時々ドキドキ)」する場合には、ドキドキの仕方を冷静に観察したり、どの様にして不整脈が止められるのか確かめる機会だと思っていただけると、不快な自覚症状も少しは和らぐかもしれません。


ときどきどきどき(2)

前回に引き続き、「不整脈」について書いてみたいと思います。
「不整脈」を主訴に受診される方の話を聞かせていただいて、「ドキドキ」している時の自覚症状を冷静に観察することが難しい事だと感じる一方、どの様にしたら「ドキドキ」が止まるのかについては驚く程詳細に覚えておられると感心することもあります。

例えば「ドキドキした時に、冷たい水を飲んで左側をしたにして横になっていると5分ぐらいで喉の辺りが『キュー』となって来ると2分ぐらいでドキドキが治まるんです。時には何度か同じ事をしないと止まらないことがあります。」などです。

そんな時お話をお伺いした後、「常温の水ではダメですか?」「右側を下にしたらどうですか?」「何もしなかったら何分ぐらい続きますか?」などとお聞きするのですが、その時の寂しげな表情はなかなか忘れることが出来ません。

診断の役に立つはずだと「ドキドキ」が止まる状況をお伝えいただけることは大変ありがたいのですが、「止まる条件をどんどんと積み上げていったり(○○して△△して××して・・・)」「以前は○○で止まったのですが、今回は止まらないので『不整脈』が悪化しています。」と不安を増大させることは、客観的に情報が得られないため診察・診断の妨げになることもあるのです。

ではどの様にすれば良いのでしょうか?

上記のような状態に陥る基は、「ドキドキ」が「止まる・止まらない」の○か×かで判断する事が原因だと思います。「○○したら『ドキドキ』が止まる事が多い。」等の確率論で考えていかないと、どんどんと条件(おまじない)を積み上げていったり、不必要な不安に陥ってしまうのです。

「確率論」で考えるとは、どの様なものか次回に書きたいと思います。

 

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ときどきどきどき(1)

本当に暑い日々が続きますね。昼夜を問わず、エアコンが止まると汗が吹き出しますね。しつこいようですが脱水・睡眠不足などにお気を付けくださいね。

さて、当院は「循環器内科」を標榜しておりますので「不整脈」を主訴にして受診される方も結構おられます。これまでのブログを見直してみて、そう言えば「不整脈」について書いていないことに思い至り今回は「不整脈」について書いてみたいと思います。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病で受診される方とは異なり、「不整脈」で受診される方の多くは自覚症状を訴えられます。自覚症状の典型的なものとしては「時々ドキドキ(ときどきどきどき)します。」というものです。そんな時おもむろに「どんなドキドキですか?」とお聞きしてもなかなか適切な返答を頂けないことが多いような気がします。

一般に「不整脈」は止まってしまうと「痕跡」を残さないので色々検査をしても「心臓に異常はありません。」という結果しかお伝えできないことも少なくありません。つまり、「不整脈」は出ている時が勝負なのです。

「不整脈」が出ている時に病院で心電図が取れることが一番ですが、それが出来ない場合、「ドキドキ」といった自覚症状に慌ててしまわず、その時の血圧や脈拍はもちろんのこと「ドキドキ」の感じ方(強さが一定か?間隔は?)について冷静に記録することが、後々の診療に大いに役に立つのです。(もちろん目の前が暗くなったり、意識がなくなったりするような強い症状が出ている場合には、急いで救急車を呼ぶ必要がありますが・・・・・・・)

「不整脈」の自覚症状は「心臓が止まってしまいそう」とか「胃が口から飛び出てくる感じ」など、冷静に対処し難いものが多いのですが、それを乗り越えて自分の状態を冷静に記録することが診断・治療の第一歩になるのです。


ダイエットは万能ではない?(3)

天気予報によるとまだまだ猛暑が続くようです。「風疹」はすでにピークを越えたようですが「熱中症」になりやすい環境が続きます。お気を付けください。

さて、今回は「血糖値と膵臓の疲弊の関係」について書いてみたいと思います。

近年、糖尿病の発症に関して、血糖値(特に空腹時血糖)の上昇に先立ち膵臓の疲弊(インスリンを十分に出せない状態)が起きていることが判ってきました。以前にも書きましたが、空腹時血糖やHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)が上昇するころには、膵臓の疲弊が進んでいて半分の機能しか残っていないのです。

この事から「ダイエット」して空腹時血糖が良くなっても、膵臓の機能が正常の半分ぐらいしか改善していない可能性があると類推されます。膵臓の機能が十分に回復しなければ、「ダラダラとしたインスリン分泌」が起こり「食後と空腹時の血糖値の差」が大きくなるため、動脈硬化の進行が止まらず、結果「心血管イベントのリスク」が減らないことになるのです。

血糖値がそれ程上昇していない、糖尿病になる前の「耐糖能異常」の状態から「心血管イベントのリスク」が上昇することを考えても、膵臓の疲弊と動脈硬化の密接な関係が窺えるとと思います。この意味から、糖尿病治療の目的は膵臓の機能回復・維持であるとご理解いただけるのではないでしょうか?

もちろん「ダイエット」をしても意味がないと言っているのではありません。薬を飲むのを嫌がって「ダイエット」を頑張りますと言われる方が多いのですが、「ダイエット」を頑張って達成しても十分でない可能性があり、ましてや「ダイエット」を継続しきれない場合も結構あるのです。ですから糖尿病治療は「服薬」と「ダイエット」の二本立てで考えるのが、一番良い方法ではないのでしょうか?

「ダイエットは万能ではない!」でも生活習慣病の強力な治療法の一つです。