月別アーカイブ: 2014年1月

エピジェネティックス

今回は、「健康危機-3 薬剤耐性菌②」について書こうと思っていたのですが、先週からビックリするような医学の話題が二つも続いたので、そのことについて書こうと思います。

その二つの話題とは

①鳥取大学が単一のマイクロRNAの導入により、がん細胞を容易に正常細胞や良性細胞へ変換できることを発見!

②理化学研究所が、体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見(STAP細胞作成)

のことです。

実は、この二つの話題を理解するには、以前のブログ(副作用と代償機転(6)参照)に書いたことを基にするのが近道です。

『通常は、その細胞にとって必要性の少ない(蛋白質にして働かせる必要のない)遺伝子は、ヒストンという蛋白質に巻き取られて働かないようになっているのです。しかし、心不全が長く続くとヒストンの巻き取りが緩んで、不必要な蛋白質がたくさん出てきてしまうのです。こうなると、心臓の筋肉細胞自体が変化してしまい、治りにくい(難治性の)心不全になってしまうのです。』

この、遺伝子を巻き取ったり・緩めたりする調節が「エピジェネティックス」であり、皮膚の細胞・肝細胞・心不全の心筋細胞・がん細胞等の特徴を決める要素になっていると考えられています。

マイクロRNAの導入やSTAP細胞作成時の酸性刺激は、「エピジェネティックス」の調節を介して、がん細胞を良性化したり、体細胞を色々な特徴を得る前の細胞(幹細胞)に戻していると考えるのが良いのです。(今後、その様な研究報告がなされると思います。)

どちらも、本当にビックリするような医学的発見ですが、実際の治療に使われるにはまだまだ時間がかかると思います。今後、色々なハードルを越えて多くの人の役に立つ技術に育って欲しいものです。


健康危機-2 薬剤耐性菌①

今回から、昨年12月17日にアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表した「2014年の健康危機の重要課題を5項目」のそれぞれの項目について書いてみたいと思います。

今回は「①薬剤耐性菌」についてです。

薬剤耐性菌といえば、最近、北海道を中心に治療薬の「タミフル」が効かないインフルエンザウイルスの感染が広がっているという報道がなされたことが記憶に新しいですね。しかし、ウィルスや細菌(ばい菌)がどの様にして薬に耐性(薬が効かなくなること)を得るのかご存じでしょうか?

「突然変異で薬に負けない強力なウィルスや細菌が現れた。」と理解されている方が少なからず居られるのではないでしょうか?

確かにその様なことは希にあるのかもしれませんが、一般的に「耐性菌 = 病原性が強い」という事はないのです。薬剤耐性菌に薬が効かなくなるのは、「強い」からではなく、薬剤が効きにくくなる蛋白質を作ったり、薬剤が攻撃する部分の形を変えたりしているからなのです。

本来、作らなくていい蛋白質を作ったり、形を変えたりしているので、耐性菌は歪な状態にあるのです。そのため、分裂する速度が遅くなったり、感染力が弱くなったりすることもあるのです。

しかし、薬による治療で大流行が抑えられたり死亡率が下がっていたものが、薬剤耐性菌では薬の無かった状態に戻ってしまうのです。つまり、頼れるのは自身の抵抗力(免疫力)だけになり、弱い場合には薬剤耐性菌にやられてしまうのです。

薬による治療を行っている限り、薬剤耐性菌の問題はついて回るのですが、どの様なことに気を付けておくべきか次回のブログで書きたいと思います。

 


健康危機-1

最近、咳が続く風邪・胃腸症状を伴う風邪・インフルエンザで受診される方が増えております。とりわけ高熱でなくてもインフルエンザ抗原が陽性となる場合も見受けられますので、全身倦怠感を伴う急な発熱がある場合には、医療機関を受診して検査された方が良いかもしれません。

さて、昨年12月17日にアメリカ疾病対策センター(CDC)が2014年の健康危機の重要課題を5項目発表しました。

①薬剤耐性菌
②処方鎮痛薬の乱用および過剰使用
③感性症の世界的拡大に備えるためのグローバルヘルスの充実
④10歳前後の少年少女に対するヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種
の啓発と接種率の向上
⑤世界でのポリオ根絶

中身をみてみると、重要課題の5項目の内4項目が、感染症・ワクチンに関係するものです。循環器医としては生活習慣病関連が全く入っていないことに、少し寂しさを感じると同時にここに挙げられている重要課題について整理・勉強する必要があると感じました。

「感染症」というと日本ではマイナーなイメージもあるのですが、決してそうとは言い切れない実情があるのです。私の文章力で何処までお伝えできるか判りませんが、よろしくお願いいたします。

次回からのブログで、それぞれの項目について書いていきたいと思います。

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明けましておめでとうございます

皆様、新年明けましておめでとうございます。今年も、当ブログをよろしくお願いいたします。

ところで、正月の挨拶をしたばかりで恐縮なのですが、本日は1月10日で、「えべっさん(10日恵比寿)」ですね。「えべっさん」と言えば「商売繁盛で笹持ってこい!」のかけ声が有名ですが、「なんで笹なんだろう?」と思って調べてみました。

もともと「節目正しく真っ直ぐに伸び」「弾力があって折れない」「葉が落ちず常に青々と茂る」といった竹(?)の特徴から、家運隆昌・商売繁盛の縁起物となったそうです。

「笹だけでなく枝の付いた竹を飾った方が御利益があるのかしらん。」などと考えてしまうのは「あまのじゃく」な性格のせいでしょうか?

医学の世界では「あまのじゃく」的に原理や機序(どうしてそうなっているのか?)を知っておくことが大切な事もあります。例えば、下痢と嘔吐をしている患者さんに対して、「制吐剤(嘔吐を抑えるお薬)」と「止瀉薬(下痢を止める薬)」を投薬すれは良さそうですが、薬の種類によっては、「制吐剤」は消化管を動かすように働く物があり、「止瀉薬」は消化管を動かないようにする物があるので、「消化管を動かしたいのか止めたいのかどっちやねん!!」といった治療になってしまうことがあります。「くわばらくわばら」(「くわはら」はそもそも桑原で、菅原の・・・・・・・もうえいわい!(裏拳))

「なんでそうなっているの?」と「あまのじゃく」的に考えてしまうのは、職業病かもしれませんね。

 

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