月別アーカイブ: 2014年2月

健康危機-6 10歳前後の少年少女に対するヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種の啓発と接種率の向上

最近、大気汚染物質の濃度が急上昇しているとの報道が相継いでいます。不必要な外出や野外での激しい運動を避けるように、警告が出たりしているようです。そんな様子を視るにつけ、子供の頃「光化学スモッグ」警報が出ると校庭には子供達の姿が無くなり、朝礼台の上に緑色の旗が所在なげに佇んでいる光景を思いまします。(30代以下の人は知らないかも・・・・・・・)

さて、今回はヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種の話なのですが、医師である私にも判りにくい状況になっています。

海外ではここで取り上げているように、アメリカ疾病対策センター(CDC)が2014年の健康危機の重要課題5項目の一つに選ぶぐらい重要な医療政策として推進されています。それはヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン接種によって、将来的な子宮頸がんの発症を予防できるからです。ただこのワクチンはHPVに感染する前に接種しなければ効果が無いので、10歳前後の少年少女に対して積極的に接種する必要があるのです。

日本ではワクチン接種による慢性疼痛などの副作用が報告されると、急激にワクチン接種に対する積極性が失われて、厚生労働省も「積極的な推奨はしない。」といった類の報告をしています。

「打つべきか?打たざるべきか?それが問題だ!」と保護者に判断を丸投げしているのですが、どうにも判断のしようが無いと思います。子供の健康に関わることですので、危険性(リスク)と利点・恩恵(メリット・ベネフィット)を明確にする必要があると思います。

「いつまでも結論は闇の中」では済まされないのではと思うこの頃です。

 

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健康危機-5 感染症の世界的拡大に備えるためのグローバルヘルスの充実

二月も半ばを過ぎこれから徐々に温かくなっていくそうです。院内は空調が効いていて快適なのですが、医院への行き帰りに自転車で感じる風は、まだまだ冷たくて、春の息吹を感じるどころではありません。皆さんには春の足音が聞こえていますか?

さて、乗り物などの技術革新によって「地球は小さくなった」と言われるようになって久しいですが、感染症にとっても「地球は小さくなった」のでは無いでしょうか?記憶に新しいところでは、新型インフルエンザや新型肺炎(SARS)等がありますね。

ネットを調べてみますと、感染症の流行に段階があるそうです。

1.エンデミック(地域流行):一部の地域で流行
2.エピデミック(流行)  :近接した数カ国での流行
3.パンデミック(汎発流行):世界的・凡発的に流行

感染症は罹患した人が多ければ多い程、指数関数的に広がっていきますので、上記の数字が大きくなると深刻な状況になっていくことはご理解いただけると思います。

パンデミックを引き起こしやすいと考えられる感染症の特徴は「人から人へ空気感染」を起こすタイプで、感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期間)が長いものです。(すぐには症状が出ないので、検疫で感染症の流入が抑えられない。)

パンデミックが心配されている疾患としては、炭疽、鳥インフルエンザ、クリミア・コンゴ出血熱、デング熱、エボラ出血熱、ヘンドラウイルス感染症、肝炎、インフルエンザ、2009年のインフルエンザ(H1N1)、ラッサ熱、マールブルグ熱、髄膜炎症(en:Meningococcal disease)、ニパウイルス感染症、ペスト、リフトバレー熱、重症急性呼吸器症候群 (SARS)、天然痘、野兎病、黄熱病、の19疾患があるそうです。

もちろん自分達が感染症に罹患しないことも大切ですが、他国の人達も感染しないようにしなければパンデミックの危険性(リスク)を下げることは出来ないのです。その意味から、裕福な国だけに止まらない、グローバルヘルスの充実が必要なのです。

 


健康危機-4 処方鎮痛薬の乱用および過剰使用

先週は首都圏で大雪が降り交通が大混乱しているのをニュースで視て「大変だなぁ」と思っていたら、ここ大阪も今朝から大雪で結構積もりそうな雰囲気です。交通の乱れが最小限ですめば良いのですが・・・・・

さて、今回のブログは「処方鎮痛薬の乱用および過剰使用」についてです。

以前のブログで「予防薬と治療薬」について書いたと思うのですが、治療薬の中には病気そのものを治すのではなく、「症状を取る」だけのお薬があります。あまりに症状が強く出ると体力を消耗したり、病気に対する抵抗力を弱めたりするため、「症状を取る」だけのお薬も重要であり、鎮痛薬もその一つなのです。では、何故乱用が問題になるのでしょうか?

多くの人は「症状が無い」事と「健康である(病気でない)」事を混同してしまっているのです。もちろん「病気が治れば症状が無くなる」のは当たり前ですが、「症状が無いから病気でない」とはいえないのです。

癌などは「痛み」という症状が無いため、発症初期での発見が難しくなっていますし、病気と少しずれるかもしれませんが、症状を出さずに潜んでいる「薬剤耐性菌」も怖いものなのです。

症状が取れたからといって病気に対して根本的な治療をしないのは、「症状ない怖い病気」を作り出してしまう結果になることは容易に想像出来ると思います。

最近、我が国においても「医療用成分」を謳い文句にした一般市販薬が増えてきていますが、ご自身の病態(病気の状態)を考えながら、適切に使用する責任と賢明さが患者さんに求められる大変な時代になってきたと感じています。


健康危機-3 薬剤耐性菌②

ここ1-2日大変冷え込んでいて、大阪でも雪になるそうです。冬本番といった感じですね。年末までなりを潜めていたインフルエンザが、急激に流行しているようですので、うがいや手洗いをこまめにして予防にお気を付けくださいね。

さて、今回は薬剤耐性菌についてどの様なことを気を付ける必要があるのか書きたいと思います。

前回(薬剤耐性菌①)も書きましたが、恐れられている薬剤耐性菌ですが、病原体(病気を起こす原因)としてはそれ程強いわけでは無いのです。そのため、薬剤耐性菌があるからといって必ず症状が出るとは限らないのです。

この「症状が出ない」ことは一見良いように思いますが、免疫力が低下するなど体の状態が悪くなった時に、隠れていた薬剤耐性菌が暴れ出し、回復の手助けをしてくれる薬剤も効かずに重症化する可能性があるのです。本当に怖いことですね。

体の中に薬剤耐性菌を生じにくくさせるためには、必要な抗生物質の適切な量を適切な期間きっちりと服用し、病原体を完全に押さえ込むのが有効であることが判っています。

家に余っていた抗生物質を飲んだり、症状が無くなったからといって抗生物質を自己中断することは「適切な量を適切な期間」飲めていない可能性があるので、避けた方がよいといえます。

新しい薬剤と薬剤耐性菌の出現は、以前からイタチごっこのように繰り返されています。その中で薬剤耐性菌にやられないためには、安易に抗生物質を使わないようにして、必要な時には「適切な量を適切な期間」きっちり服用することが、大切なのです。