月別アーカイブ: 2014年3月

C型肝炎の新しい治療方法

桜の季節を前に温かくなったと思えば朝晩の冷え込みに冷たい雨、調子がすぐれませんね。皆さんはいかがですか?

さて、今回は生活習慣病や循環器疾患の話題から離れて、「C型肝炎の新しい治療方法」について書いてみたいと思います。

C型肝炎は慢性化しやすく、肝硬変・肝癌の原因になることで知られています。私が研修医だった頃、インターフェロンによるC型肝炎の治療が始まりました。効果があるのは当然として、高価な薬剤で、降下する体調に驚いたものです。(インターフェロンを打つと2週間ぐらい流感に罹ったような怠さが続くそうです。)

最近、インターフェロンなどの注射を使わず経口薬のみで組み立てられた治療方法が、海外の権威ある医学雑誌で発表されました。記事を読みながら、私の専門である生活習慣病・循環器領域以外の領域でも医学が着実に進歩しているのだと実感していました。

ところが、同時期に国内からもC型肝炎の新しい治療方法についての報告がなされて驚きが二倍になりました。「善玉ビフィズス菌を利用したC型肝炎の経口治療ワクチン候補の開発に成功」したというのです。

○免疫力を強化し、標準治療法と併用し治癒効果を向上できるワクチン候補を開発。
○遺伝子組換えをした善玉ビフィズス菌を加熱殺菌して使う。
○経口内服で簡便で、常温保存性が高く、開発途上国を含めて世界中どこでも使用可能。
○安く生産でき、治癒効果の向上により医療費全体の削減が期待される。

ビフィズス菌にC型肝炎の一部の遺伝子を導入して、経口摂取で効率的にC型肝炎に対する免疫力を高めることが可能となっているようです。

今後、C型肝炎だけでなく色々な疾患に応用されそうな可能性を感じますね。


ダイオウグソクムシ

前回までの「健康危機」の話が一段落しましたので、今回はガラッと趣を変えて最近話題の海底に生息するダンゴムシ「ダイオウグソクムシ」について書いてみたいと思います。

少し前に新聞やネットで話題になっていたのでご存じの方も多いと思いますが・・・・

「三重県鳥羽市の鳥羽水族館は14日、5年1カ月にわたって絶食を続け話題を集めた深海生物「ダイオウグソクムシ」の「No.1」(体長29センチ)が死んだと発表した。」

仮死状態などでほとんど活動しないのならまだしも、5年1ヶ月も何も食べずに生きていたことは本当に不思議です。

「海水中の有機物を直接取り込んでエネルギーにしているんだ」とか「動くのにほとんどエネルギーを消費しない究極のエコ生命体なんだ」とか色々と憶測を呼んでいました。

水族館が死んだダイオウグソクムシを解剖したところ、甲羅の裏側などの肉も痩せているように見えず、良い状態にあり絶食による餓死とは思えないとのことだったそうです。特殊な点としては、未知の酵母菌を大量に含む緑色の液体でダイオウグソクムシの胃が満たされていたのです。

この緑色の液体が、死因になったのかはたまた長期間の絶食を可能にした特別のものなのかは、今後の研究結果を待つ必要があります。

もし絶食を可能とする魔法の液体だったら、世界の食糧問題を解決するすごい発見かもしれませんが、「絶食」ってとっても味気ないなぁと、大きく振れる体重計の針をよそに要らぬ心配をしてしまいます。

 

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健康危機-7 世界でのポリオ根絶

梅林が華やかになって、順調に春の足音が近づいていると思ったら、真冬のような寒さが続きますね。お風邪など召さないように、お気をつけください。

さて、昨年12月17日にアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表した、2014年の健康危機の重要課題を5項目の最後の項目である「世界でのポリオ根絶」について書きたいと思います。

ポリオ(Acute poliomyelitis、急性灰白髄炎)とは、四肢の麻痺を特徴とするため小児麻痺とも呼ばれている疾患です。1988年のWHO(世界保健機構)総会において、2000年を目途に地球上からポリオを根絶する決議が採択され、各地域で戦略が進められてきたのですが、未だポリオ患者の発生の続く国が残っています。

政治的・経済的不安定やワクチンに対する不信感などにより、当初の達成目標から大きくずれ込んでいるのが現状のようです。(詳しくは、ネットでググってみてくださいね。)

そういえば最近、ウィルス関連でビックリするようなニュースが流れました。「3万年前の永久凍土から過去最大サイズのウイルスが復活」したというのです。

発見者らは、

「3万年前の生物が活動を再開したこの発見は、何万年もの間眠っていた有害な病原菌が現れる可能性を示唆しています。天然資源の発掘や温暖化の影響で北極などの永久凍土が溶けた時に、起きうる可能性を考慮するべきです」

と警告しています。

この記事を読みながら、未知のウイルスは置いておくとしても、ポリオ根絶については根絶したら終わりでなく「根絶し続ける」不断の努力が必要なんだと得心しました。

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