月別アーカイブ: 2014年9月

高血圧と認知症

先週、やっと秋らしい日が来たと思っていたら、台風が南の湿った空気を送り込んでくるからでしょうか、残暑というより蒸し暑いですね。不眠などで何となく怠い感じが残ってしまい易くなる状況です。お気をつけ下さい。

さて、今回のブログは「高血圧と認知症」の話です。

実は老年期の高血圧ではなく、「中年期の高血圧」が20年後の認知機能低下と関連するとの驚くべき報告です。

報告は、米国4地域の1万3000人(45〜65歳)を対象とした長期観察研究からなされました。中央値で19.1年、最長23.5年の間、追跡調査がなされたとのことです。

その中で、中年期に高血圧であった方は、20年後の認知機能低下が有意に大きかったとのことです。もちろん、高血圧群では多くの方が亡くなっており、数学的に補正すると認知機能の低下に対する影響はさらに大きくなったのです。

また、ベースの血圧が高くても降圧薬で治療すると、認知機能の低下は抑えられたとのことです。また、老年期の高血圧と認知機能の低下は明らかな関係を認めなかったことから、老年期になって高血圧を治療しても、影響は少ないと考えられるのです。

「忙しいからなかなか病院には・・・・・」と思われている方、手遅れになる前に是非近くの医院に相談しに行ってください。

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デング熱と解熱剤

ここ最近、蚊に刺されて感染する「デング熱」に関する報道が数多くなされていますが、先日『「デング熱」になった時に、安易に解熱剤を飲むと重症化する可能性がある。』との発表がありました。

「デング熱の時にアスピリンなどの解熱剤を飲んではいけない。」と単純に片付けてしまっても良いのですが、もう少し掘り下げてみたいと思います。

デング熱は「急な発熱」や「目の奥の痛み」、「筋肉痛」などを伴って発症する病気ですが、体内からウイルスが消失すると症状が消失する、予後は比較的良好な感染症です。しかし、希に患者の一部に出血症状を発症する(デング出血熱)ことがあり、その場合は適切な治療がなされないと、致死性の病気になります。

では、何故「デング熱」の時にアスピリン等の「解熱剤」がダメなのでしょうか?

市販されているものも含めて多くの「解熱剤」は熱を下げると同時に、腎臓の血流を減らしたり、血小板機能に影響を与えることが知られています。通常の風邪などでは大きな問題にならないのですが、デング熱で血小板が減少している時には、「解熱剤」の血小板に対する影響で血が止まらないなどの大きな問題を引き起こす可能性があるのです。

決して「デング熱」が「解熱剤」を毒に変えているのではありません。

「デング熱」以外の発熱の時でも「解熱剤」は出血の原因になり得ることを知っておかないと、消化管潰瘍のある人が「解熱剤」を飲んだ後に出血してしまうこともあるのです。

「解熱剤」の名誉のために書きますが、「血液サラサラ」(この言い方はあまり好きではありませんが)のために「アスピリン」を服用されている方は、まさにアスピリンの血小板機能抑制効果を期待して投薬されているのです。

「アスピリンは解熱剤なの?血液サラサラ薬なの?」と聞かれそうですが、「アスピリンはアスピリンで、必要な効果だけを取り出して使うことは出来ないのです。」

御自身の飲まれている薬がありましたら、「どんな薬?」と興味を持っていただけるとありがたいものです。

 

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インターフェロンフリーの肝炎治療

確実に秋の気配が近づいているこの頃ですが、夏の疲れと温度差で案外体調がすぐれない人も多いようです。お気をつけください。

さて私が研修医の頃に始まった肝炎のインターフェロン治療ですが、インターフェロンを注射すると発熱と全身の気怠さで続けられない方も数多くおられたのを覚えております。

その後インターフェロン製剤の改良も進み、最初の頃よりは脱落する人も少なくなったと聞いておりました。しかしインターフェロンの注射期間が24週から48週間と長く、副作用が出ても最初は我慢できるのですが、どうしても脱落する人があったようです。

今回承認された薬は、インターフェロンを使わない薬で、耐性ウィルスの問題はあるにしろ飲むだけで良いのが特徴です。

この薬が使えるかどうかは専門医の検査を受ける必要がありますが、24週間の経口服薬で終わるのは初期のインターフェロン治療に比べて隔世の感があります。

そんな感動に浸っているのも束の間、値段が二十数万円すると聞いてビックリ。初期のインターフェロン程ではないですが、それにしても高価な薬ですね。

当院では専門が違うこともあって、とても買えません。

 

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テニスと野球と健康

朝晩は涼しくなりましたが、まだまだ日中は暑いですね。今日は雨が降っているので、良い感じになるのかと思ったら予想外の蒸し暑さです。この時期は夏の疲れが出る頃です。流行の胃腸炎や風邪に罹らないようにご注意ください。

最近の話題と言えば、錦織選手や伊達選手が全米オープンテニスで、大活躍していますね。伊達選手は残念ながら決勝戦には進めなかったようですが、錦織選手には頑張ってもらいたいものです。

かかる活躍に、以前に読んだ統計学の本を思い出しましたので、簡単に紹介します。

スポーツの世界において弱い者が強い者を倒す「大番狂わせ」は一つの見所ですが、競技の種類によってその頻度は大きく異なるそうです。

例えば野球の日本シリーズですが、強いチームが55%の確率で勝ち弱いチームが45%の確率で勝つとすると、弱いチームが日本一になる確率はどれ位になるか想像してみてください。

実は予想に反して40%もあるのです。(確率的に5回に2回は勝率45%のチームが優勝してしまうのです。細かい計算は興味があれば調べてみてください。)

テニスの場合はポイントを取る確率が強い人が55%で弱い人が45%と仮定すると(上記と同じ割合)、ゲームを取る確率は62% 対 37%となり、日本シリーズとあまり変わりません。

しかしテニスは5セットマッチやタイブレークなどのゲームを積み重ねるシステムがあり、結局弱い人が勝つ確率は、4.3%になってしまうのです。(テニスでの「大番狂わせ」はいかに難しいか感じられましたでしょうか?)

健康もテニスと同じように日々健康であるためのゲームを積み重ねていくものです。日本シリーズのように短期的に見た時にはチョットした異常はそれ程問題に見えなくても、テニスのようにゲームを積み重ねていくと、少しの差に足を取られてしまうのです。

しかし悲観することはありません、チョットした異常を改善すれば勝てるのも健康なのですから・・・・・・・・・

 

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