睡眠薬とアルツハイマー病

以前から睡眠剤を飲み続けると、脳自体の「睡眠覚醒リズム」が乱されるために、痴呆などのリスクが上昇しているのではないかと考えていたのですが、関連する報告がフランスとカナダの共同研究グループからなされました。

この研究は医療データベースを用いて、アルツハイマー病を発症した67歳以上の1796人と発症しなかった人の中から、年齢や性別などの条件が一致する7184人とを比較検討したものです。

その結果、ベンゾジアゼピン系の薬(睡眠薬)を使用していた人は1.5倍アルツハイマー病の発症リスクが上昇していたとのことです。さらに、長時間作用型の薬剤を服用していた人や服用期間が長い人では発症リスクはさらに上昇していたとのことです。

以前から、ある種の鎮痛薬を長期間飲み続けると、脳の痛覚閾値(痛みを感じる刺激値)が下がってしまい、最後には薬がないと痛いと感じてしまう状況に陥ることが知られています。この状況は、人間の脳が状況に柔軟に対応できるがゆえに起こった、ジレンマといえます。

同じように睡眠剤を長期に飲んでいると「段々と効かなくなってくる。」という話を良く聞きますが、それは薬がある状態が普通になって、脳に困ったジレンマが始まっているからかもしれません。

この状態に陥ってしまうと、睡眠薬を止めることが困難になり、スッキリ眠れないのに薬を飲み続けることになってしまいます。

睡眠薬は「非常時の手段」として残しておき、脳自体の「睡眠覚醒リズム」を保つことが大切だと思います。(もちろん「頓服」的な睡眠薬の利用は、本来の「睡眠覚醒リズム」を整える方向に働くと思われます。)

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