月別アーカイブ: 2015年1月

倹約的遺伝子

今年に入って、何だか木曜日と金曜日の雨が多いような気がしませんか? 今日は気温も低く東京では雪が降っていた様です。交通麻痺など起きなければ良いのですが・・・・・

日本病態栄養学界は、ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」の科学的エビデンスを国内外に発信することを目指す「京都和食宣言2015」を採択しました。

内容は、

1. 我が国における食を評価する
2. 和食のすぐれた点を見直す
3. 和食に関するエビデンスの蓄積を進める
4. 健康に資する和食を次世代に継承する

とのことです。

私が感心したのは「京都和食宣言2015」そのものではなく、この宣言を紹介した記事の中に「(和食は)倹約的遺伝子を持つ日本人に合理的」との記述なのです。(日本栄養学界の先生方ゴメンナサイ。)

この「倹約的遺伝子」というフレーズを使えば、「倹約的遺伝子を持つ日本人は、欧米的な高カロリー・高脂質食に耐えられない。」と生活習慣病について、分かり易く説明出来るなぁと膝をポンと打ちました。

しばらく「倹約的遺伝子」はマイブームになるかもしれません。

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糖尿病とスタチン

先週辺りから、風邪やインフルエンザで受診される方が増えています。皆様も感染予防にお気をつけ下さいね。

さて、今回は米国糖尿病学会(ADA)が先月発表したガイドラインの話です。

糖尿病のガイドラインの特徴として、治療に際して血糖値だけではなく、血圧や脂質の目標値が決められていることが挙げられます。心血管疾患予防の観点から、糖尿病だけでなく他の生活習慣異常を改善する事が大切だというわけです。

今回のガイドラインの改訂では血圧に脂質に関しては目標値を目指した治療ではなく、それぞれの心血管リスクに基づいた治療方針に変えられています。

「心血管疾患を有する全糖尿病患者において、生活習慣の是正に高強度のスタチン療法を加えるべき(グレードA)」

「40−75歳で他に心血管疾患の危険因子のない糖尿病患者では、中強度のスタチン療法と生活習慣の是正を考慮(グレードA)」

細かい文言は、まだ原文で読んでいませんが、実質全ての糖尿病患者にスタチン療法を推奨した内容になっているようです。

(グレードA)は、大規模研究からきちんとしたエビデンスが出されており、信頼度が非常に高い事を示しています。

医学も日々進化していますね。

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絵画とテレビと薬

もう一月も半ば過ぎですね。風邪やインフルエンザが流行っていますが、皆さんは大丈夫ですか?

今週はじめの連休を利用して、阿倍野ハルカス美術館で行われていた「新印象派展」を見に行ってきました。一般に、絵の具の色を混ぜていくと鮮やかさがどんどんと落ちてしまうことが知られています。100年ほど前の「新印象派」の巨匠達は、色をパレットの上で混ぜずに、原色のままキャンバスの上に載せていき見る人の網膜の上で望む色を作り出すことに成功したそうです。

近づいてみると原色の点々が乱舞していて何が書いてあるか解らないのですが、少し離れると人物や風景が生き生きと浮かび上がってくるのは何とも不思議です。

そんな絵画を見ながら、最先端技術を応用したテレビの事を思い出しました。それは「量子ドットテレビ」と呼ばれるものです。原理は・・・・・ググってみると、

『大きさが一様にそろった量子ドットを用意すれば、スペクトルのピークの鋭い、色純度の高い発光が得られます。これによって、ディスプレーの色再現性の向上や低消費電力化が実現可能になっています。』
量子ドットが純粋な色を出すので、テレビの色表現が向上するのは「新印象派」の考えと相通じる所があり、100年間のタイムスリップをした感じです。

よくよく考えてみると薬の世界でも同じ様なことがあるのを思い出しました。ある種の薬には「光学異性体」といわれる瓜二つの双子が居るのですが、効果が少ない方の「光学異性体」を取り除くと、副作用の少ない効果の強い薬になることがあるのです。

『効果のピークが鋭い副作用の少ない薬』になるのは「新印象派」や「量子ドットテレビ」の考え方とよく似ていると思いませんか?

 

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ジェンガと手打ちそばと健康

明けましておめでとうございます。本ブログをお読みいただいている方々に、ご愛読の感謝と新年の挨拶を申し上げます。今年度も、医療・医学的な考えを身近に感じていただけるように、頑張りたいと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

さて、昨年のクリスマスパーティーで「ジェンガ」をして盛り上がったのですが、「ジェンガ」をご存じでしょうか?「ジェンガ」は同サイズの直方体のパーツを組んで作ったタワーから崩さないように注意しながら片手で一片を抜き取り、最上段に積みあげる動作を交代で行うテーブルゲームです。

ゲームを進めていくと、下段が歯抜けてどんどんと不安定になり、最後には崩れてしまうのです。もちろん崩した人には罰ゲームが待っています。それまで積み上がっていたものが、崩れる時は指先で軽く触っただけでも劇的に崩壊を起こすダイナミックさが人気の一因かもしれません。

新年になってから、以前から興味のあった「手打ちそば」に挑戦しました。下調べにインターネットで色々と調べて、水加減が大変難しいと解っておりましたので、慎重の上にも慎重に決められた水量を加えたのですが、全く団子状になる様子がありません。考えあぐねた上で、少しだけ水を追加したらいきなり、粘土のようになってしまいました。

「手打ちそば」で水が多いと粘土のような「ぐず玉」になってしまうことは知っていたのですが、「あんなに少量の水で・・・・?」と大変驚いてしまいました。そば粉が保持できる水分を少しでも超えると、一挙に崩壊が起こり、粘土玉になってしまうのだそうです。

実は、健康も「代償機転」が働いて何とか症状が出ないようにバランスを保っているのですが、ある点を超えると一挙に崩壊して、坂道を駆け下りるように病状が悪くなることがあります。(代償機転については以前のブログ「副作用と代償機転」をお読みください。)

健診での異常値やチョットした違和感を放置して大きな健康崩壊を来さないためにも、相談に来院いただけると幸いです。

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