月別アーカイブ: 2015年3月

スタチンによる糖尿病リスク(1)

大阪でも桜の開花宣言がなされました。標準木に選ばれたソメイヨシノに五個以上花が咲くと「開花宣言」となるようです。

麗らかな春が近づいているのに、何とも悩ましい報告がなされましたので書いてみます。

以前のブログで米国糖尿病学会(ADA)が全ての糖尿病患者さんにスタチンの投薬を推奨するとのガイドラインを発表したと書いた(ブログ「糖尿病とスタチン」参照)のですが、今回フィンランドから「スタチン投薬によって糖尿病の発症が増加する。」との発表がなされたのです。

最近、スタチン投薬が糖尿病発症のリスクを上昇させるとの報告が散見されていたのですが、今回は何と!46%も上昇させるとのことなのです。

2001年のWOSCOPS研究のサブ解析はスタチンの投薬によってリスクが30%低下したとの報告があり今回の発表との整合性が取れないため、悩ましいのです。

色々と理由は考えられるのですが、一見矛盾するエビデンスが出て来た時にどの様に考えるか(医師によっても違いますが)、次回から書き連ねてみたいと思います。

(皆さんなら、どの様な説明をおつけになりますか・・・・・・?)

 

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400℃の法則

最近暖かく春めいてきたと安心していましたら、週明けには真冬並みの寒さが戻ってくるそうです。ダウンジャケットの再登場があるかも・・・・・・・

さてここで質問です。「400℃の法則」は何に関する法則なのでしょうか?

(少しの間、考えて見てください。)

ご存じの方もおられると思うのですが、2月以降の「毎日の平均気温」を積算(足し合わせて)その合計が400℃を超える頃に、例年桜の開花を迎えるのです。

「本当に?」と思われた方も多いと思いますので、ネットに載っていた情報を転記します。

10年ごとに平均していくと
1970年代    約396℃
1980年代    約404℃
1990年代    約433℃
2000年代    約416℃
2010年代    約399℃(5年平均)

桜が電卓を持って計算しているわけもないので、生命の神秘と力強さを感じませんか?

医学界でも薬の効果ばかりでなく、人間の回復力に焦点を当てた研究がもっとあっても良いかもと思ってしまいました。

 

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尿1滴からがん検出

九州大学から驚きの研究結果が発表されましたので書いてみたいと思います。

九州大学(九州大)は3月12日、線虫は尿によって高精度にがんの有無を識別することができると発表した。実用化されれば、尿1滴でさまざまな早期がんを数百円で高精度に検出できるようになる。

線虫はわずか1mmと小さな生物ですが鋭い嗅覚を持っており、尿からがん特有の臭いを嗅ぎ分けて寄っていき、正常人の尿からは逃げる行動を取ることを発見したとのことです。実験では24人のがん患者の内、23人を見分けた(嗅ぎ分けた?)のだそうです。

線虫は簡単に増やすことが出来るので、安価に検査できるだけでなく、様々ながんに反応する線虫を分別して育てることも難しくは無いのです。臨床応用にはまだまだ越えなければいけない壁は多いと思いますが、実現すれば素晴らしいと思います。

そもそも、何故この様な線虫を使う方法を思い付いたかと言えば、「4年ほど前にサバにあたった患者の治療で原因だったアニサキスという線虫が、患者の胃にできていたがん細胞に食いついていた。」からだそうです。

やはり「観察の医学」が大切なんだと、ほくそ笑んでしまいました。

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巨象も踊る

3月に入ったのにまだまだ寒いですね。来週は、もう少し寒くなるようですのでお気をつけ下さいね。

今回のブログタイトル「巨象も踊る」は、経営破綻の崖っぷちにあったIBMを数年でV字回復させた経営者のルイス・ガースナーさんの回顧本の題名です。発売当初の2002年に購入して読んだのを思い出します。思いかけず、ネットに書評が上がっていたので懐かしく読んでみました。(書評のはじめに”そもそも論”と書いてあったからかもしれませんが・・・・・)

押しも押されもしない巨大コンピュータ企業であったはずのIBMが、何故経営破綻の寸前まで追い込まれていたのか、そしてどの様に業績を回復させたのか自慢げに吹聴している本なのですが、経済に疎い私にも、正鵠を射貫いていると思われる記述がここかしこに散らばっています。

例えば・・・・・

(IBMは)内向きの成長を続け、内部の規則や争いに熱中してきたため強さが失われていた。外部からの攻撃には極端に弱くなっていたのだ。 一般的に顧客のニーズに無関心で、社内政治に没頭する傾向があった。 官僚組織は社内各部門の協力を促すのではなく、縄張りを守るようにできていた。

なかなか含蓄がありますよね。

IBMを立て直すために必要とする人材については・・・・・・・

問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。
社内政治を弄する幹部は解雇する。

本当にそうだと思いますね。

「医学・医療界は踊れるのだろうか」と自問してしまいました。

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