月別アーカイブ: 2015年9月

スティックシュガー50本分

シルバーウィークの連休が終わり、何だかペースが上がらない内に週末になりそうですね。来週の後半からは10月に入ります。インフルエンザの予防接種予約も始まっており、年末の足音が遠くで響いているような焦りを感じますね。

さて、今回のブログは「肥満」の話です。

ネットで、甘い炭酸飲料1.5リットル1本にはスティックシュガー50本分の砂糖が含まれているとの記事があり、「すごい量だなぁ」と思いながらかかる記事を読み進めてみると・・・・・・

アメリカでは、甘い炭酸飲料が1.5リットルより多い1ガロン(3.78リットル)サイズの物が普通に売られており、2−3本平気で買っていくのだそうです。だから日本では中々見かけない、お相撲さん級の肥満になるのだ。

との趣旨が書かれていました。

「成る程」と思わせる話なのですが、医学的には少し補足説明が必要なのです。

実は、大量の糖分(砂糖)を摂取して「太る」ことが出来るのは、膵臓のインスリン分泌が強力だからなのです。東洋人の場合、アメリカ人と同じように糖分を取るとお相撲さん級の「肥満」になるだけのインスリンを膵臓が持続分泌できないため、糖尿病になってしまうのです。

「肥満」はけっして良いことではありませんが、お相撲さん級の「肥満」になれるのはアメリカ人の膵臓が強く糖尿病になり難い事の現れなのです。

「肥満」=「糖尿病」のようなイメージがありますが、必ずしもそうではないことはご理解戴けますでしょうか?(しかし「肥満」になると膵臓に負担がかかるのは紛れもない事実です。)

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ROE(株主資本利益率)

いきなり難しい経済用語を引っ張り出してきてすみません。内容はけっして込み入っていませんので、お気軽にお読み下さいね。

さて表題のROE(株主資本利益率)ですが、平たく言えばある会社が株式で集めたお金に対して、どれだけの利益を上げたかを見る指標です。(お金儲けの効率といったところでしょうか?)

インターネットに、経済新聞の有名コラムに登場した経営者の企業は先に書いたROEが低下するとの記事が出ていました。(有名コラムなので登場すると一流経営者の仲間入りといわれています。)

コラムに載った年の前々年は、東証一部平均のROEを2%上回っていたが、翌々年には3%を下回り、3年後には4%も下回るというのです。

この記事が書いているように、業績を維持するの難しくコラムに載ると業績が悪くなってしまうのでしょうか?

しかし業績が悪くなるように見えるのは、統計のマジックかもしれません。

コラムに登場するぐらい注目されている会社の株価は上昇するので、同じだけ儲けてもROE(お金儲けの効率)は下がる傾向になると容易に想像出来るのです。

さらに、日本企業のROEの分布が歪な形をしているのでROEの平均値が中央値と大きく離れてしまい、平均に対する変化を見ることに「?」マークが付く可能性があります。

さらにさらに、このブログを読みこなしている方は「平均回帰」という考えを思い出されるかもしれません。(ご存じでない方は以前のブログ「平均回帰」をお読みくださいね。)

医学の世界でも時として、統計マジックによって半ば都市伝説のような結果が吹聴されることがあります。お気を付けあそばせ・・・・・・・

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ニューラライザー

今回の題名に「???」と思われた方、ニューラライザーは映画メン・イン・ブラック(MIB)の中に出てくる「記憶消去装置」の事です。

異星人を見てしまった市民に向けて、エージェントJ(ウィルスミス)がポケットから取り出し、ボタンを押すと「ビカッ」と青白い光が出て、見ていた人々の記憶がきれいさっぱりと消えてしまうのです。

何作目かでは自由の女神が手にしているトーチが、巨大なニューラライザーで青白い光を発しニューヨーク全市民と映画を見ていた人の記憶を消してしまうのがラストシーンになっているぐらい、MIBの中では主要なアイテムになってます。

今回ニューラライザー(記憶消去装置)の話をしたのは、ネットでこの様な記事を見かけたからです。

「<記憶消去>マウスの学習成果消すことに成功 記憶の場特定」
マウス15匹を使い、足元の回転が次第に速くなる機器に乗せて走らせる実験をすると、最初は平均約2分半で落下したが、練習させると4分近く落ちずに走れるようになった。脳に青い光を当てると、3分弱で落下し、学習により得られた記憶が消えたと考えられた。

もちろん通常のマウスではなく、神経細胞が青い光に反応するように遺伝子改変されているのですが、神経細胞を死滅させずに記憶を消すことが出来たのはすごいことなのです。

記憶を消す青い光と聞いて、メン・イン・ブラック(MIB)を思い出すのは、無理からぬ事だと自分を納得させて今回のブログを終わりたいと思います。

 

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子供のインフルエンザワクチン

突然ですが、今年からインフルエンザワクチンの接種料金が全国的に上がっているようです。理由につきましては、当院のスタッフブログをご覧下さい。

さてネット上で色々と騒がれているようですが、「インフルワクチン:乳児、中学生に予防効果なし」との新聞報道がありました。

ビックリして記事を読んでみると・・・・・・・・・どうやら「効果を確認できない」→「効果無し」と判断しているように思われましたので、臨床研究における「効果を確認でいない」とはどの様な状態なのか書いてみたいと思います。

臨床研究における「効果を確認できない」は、色々なことを意味しています。

①実際に薬剤に効果が無い。
②症例数が少なく「統計的」に差が出ない。
③評価のばらつきが大きく、差がみられない。(ノイズに隠れてしまっている。)
④そもそも研究が実状の把握を目指しており、効果の確認を目的としていない。

等々・・・・・・・

決して「効果を確認できない」→「効かない」では無いことを覚えておいて下さい。

そこで、記事の基になった研究論文を取り寄せて読んでみますと、今回の「効果を確認できない」は『②症例数が少なく「統計的」に差が出ない。』との意味で書かれているようで、「乳児、中学生にワクチンが効かない。」との意味ではないのです。

またこの研究はランダマイズ研究ではなく、観察・コホート研究に近いので「ワクチンの薬効をダイレクトに評価」するものでは無かったようです。

「値段が上がったから」ワクチン接種をしないとの判断はあるとして、「この研究結果だから」インフルエンザワクチン接種を積極的にやめる判断は、個人的にしっくり来ないものがあります。

いずれにせよ、ワクチンには効果も副作用もあります。片方だけを強調すると歪な状態になってしまうのはいうまでもありません。

当院では、10月からインフルエンザワクチンの接種を行います。予約等につきましては、ホームページをご覧戴くか、電話でお問い合わせ下さいね。

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