消毒の父

当医院は明日11日からお盆の連休ですが、皆さんはどのような予定をされていますか?これまでの経験を過信せずに、外出時には水分補給にペットボトルを携帯したり、帽子を忘れないようにしてくださいね。

さて、現在では子供でも知っている「消毒」の重要性ですが、19世紀に病原菌が発見されるまでは当時の医師すらも「消毒」の有用性を理解していなかったそうです。

消毒の父として知られるのはハンガリー人産婦人科医のイグナーツ・ゼンメルワイス(Ignac Semmelweis)です。彼はウィーンの病院に勤務している時に、医学生の臨床実習を行う病棟と助産婦の実習を行う病棟で、お産後の敗血症での死亡率が極端に違うことに気付き疑問に思ったそうです。

当時の医学生は遺体の検視を終えると、そのままお産の介助に入っていたことと、同僚が検視後に妊婦と同じ敗血症で亡くなったことから、遺体には目に見えない「致命的な粒子」があると考えれば疑問が氷解すると思い至ったのです。(病原菌が発見される数十年も前の話です。)

そこで、お産の介助に入る前に厳重な「消毒」を義務付けたところ、敗血症での死亡を根絶することに成功したとのことです。

これだけ素晴らしい発見をしたのでゼンメルワイス医師は賞賛されたに違いないと思いますよね。しかし豈図らんや、妊婦死亡の原因が自分たちにあると真実を突きつけられた同僚の産婦人科医師たちからひどい反発を受け、業績を認められることなく失意のうちに47歳で亡くなってしまうのです。

今年はゼンメルワイス生誕200周年だそうです。「現象から問題を見つけ原因を探り出す」科学者の基本が当時の医学界には受け入れられなかった事は悲劇ですが、現在「消毒」は医療の根幹をなしています。

「消毒の父」、その先見の明恐るべしですね。

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