カテゴリー別アーカイブ: 耐性菌

悪夢の耐性菌

12月も後半となり、令和元年もあと2週間足らずですね。その割に気温が高めで、このところ最高気温が12−14度もあり、クリスマスツリーが所在無げな感じですね。

国立感染症研究所によると、既存の抗菌薬がほぼ効かない「悪夢の耐性菌」が海外のみならず、国内でも広がりつつあるとの分析結果を発表しました。

2017年から耐性菌の調査を始めたのだそうですが、翌年には13例→42例、6都道府県→16都道府県に増えていたとのことです。

「悪夢の耐性菌」は、抗菌薬の最終兵器と言われる「カルバペネム」系の薬剤を分解して無効化するタイプのもので、日本国内で使える抗菌薬のほとんど全てが効果がないのだそうです。

通常は無害なのですが、抵抗力が落ちた時に重い感染症を引き起こし、死亡率は30−75%に達するとされています。

抗菌薬の乱用が原因だと言われていまが、通常は無害なので体の中で耐性菌化してしまってもわからないから厄介です。風邪などで安易に抗菌薬を使用しないことが、唯一の予防法なのです。


薬剤耐性菌で8100人超死亡?

国立国際医療研究センター病院などの研究チームがまとめたところ、2017年の一年間に国内で8100人超の方が、「薬剤耐性菌」で亡くなった可能性があると発表されました。

この研究では、代表的な2種類の「薬剤耐性菌」について、全国的に調査したのだそうです。

当ブログでも以前から「薬剤耐性菌」の危険性については何度も書きましたが、日本国内でもこれ程の影響が出ているとは驚きです。今回調査対象になっていない「薬剤耐性菌」の影響も考えると、恐ろしさすら禁じえません。

有効な抗生物質が皆無になれば、最初の抗生物質であるペニシリン発見以前の「感染症暗黒時代」に逆戻りです。

通常当医院では「ウィルス感染症である風邪に抗生物質は効きません。」と説明して抗生物質を投薬しないのですが、不満そうに帰られる方も少なからずおられます。

今回、日本でも深刻な影響を及ぼしていることが明らかになり、抗菌薬の適正使用など対策の徹底が急務だと感じました。

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人の鼻腔から新抗生物質?!

ペニシリンが青カビから発見されて以来、抗生物質を見つけるには土壌などにいる微生物を調べるものと考えられてきました。しかし「灯台もと暗し」と言いましょうか、ごく身近にというより我々の体の中に新しい抗生物質の候補が見付かったのです。

ドイツのグループは、病気の原因となる黄色ブドウ球菌は約3割の人が常在菌として鼻腔などに持っているそうですが、残り7割の人には存在していない事に注目して、研究を行ったそうです。

研究グループは、「スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(S.lugdunensis)」が、黄色ブドウ球菌と闘う抗生物質を生成することを発見し、この化合物を「ルグドゥニン(Lugdunin)」命名したそうです。

人間の鼻腔にいる細菌が、病原性の細菌を抑制していたのです。

気軽に抗生物質を使うと、この様な常在菌が乱されて病原性を持つ薬剤耐性菌が増えやすい状況が生まれてくるかもしれません。

今後、人間から見付かった抗生物質が使われる時代が来るかも・・・・・・・・・・

 

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「ウナギ」と「恵方巻き」と「抗生物質」

暑い日が続いていますが、昨晩は少し過ごしやすかったです。さて、来週の土曜日は土用の丑の日ですので、うなぎ屋さんに「長い」行列が出来ることでしょう。(本日は「大暑」にあたるそうです。)

土用の丑の日にどうしてウナギを食べるようになったかと言えば、諸説ありますが平賀源内(江戸時代の発明家)が発案したとの説が有力です。

夏の時期にウナギの売り上げが減ると相談された平賀源内が、「丑の日にちなんで、“う”から始まる食べ物を食べると夏負けしない」との当時の風習を上手に取り入れてウナギの宣伝を勧めたそうです。見るからに栄養のありそうなウナギと以前からある風習が上手に結びついて、「土用の丑の日にはウナギを食べる」との習慣が広がったそうです。

次に、節分にその年の「恵方」の方角を向いて食べると縁起がよいといわれる「恵方巻き」ですが、大手コンビニチェーンの影響からか、近年関西地区から全国に広がりを見せています。

元々は豆まきとセットになって「春」の節分(立春の前日)の行事だったのですが、先日コンビニで「夏の恵方巻き」(?)を宣伝していました。確かに節分は年四回(立春・立夏・立秋・立冬の前日)ありますので、「節分には恵方巻き」との強固なイメージから、年に4回売ろうとする商魂をみて微笑んででしまいました。

実は強固に結びついたイメージは良くないことも起こすこともあります。「風邪の治療」と「抗生物質」は強く結びついていて、処方する方も貰う方も当然のようになっていることがあります。

抗生物質は細菌に効果はありますが、大半の風邪の原因であるウィルスには効かないのです。効かないだけなら良いのですが、以前から書いているように抗生物質が効かない「耐性菌」の問題があるのです。

先日、愛知県で呼吸器内科に入院、通院中の患者11人から、複数の抗生物質が効かない新型耐性菌「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」(CRE)を検出したとの発表がなされました。

11人全員が症状もないとのことですが、病気や手術をした際に耐性菌が暴れ出すと命の危険に晒されてしまうのです。強固なイメージから来る抗生物質の乱用が主な原因と考えられています。

本当に恐ろしいですね。

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スーパー耐性菌

6月に入りましたが、朝晩は肌寒く東北では最低気温が氷点下になったそうです。明け方には毛布が必要なぐらいですね。

さて米国の話ですが『全既存薬が効かない「悪夢」のスーパー耐性菌』の感染が初めて確認されたと米疾病対策センター(CDC)が発表しました。

昨年末に中国でブタや牛にスーパー耐性菌が広がりつつあると医学誌「ランセット感染症ジャーナル(Lancet Infectious Diseases)」に論文が掲載されており、将来的には「世界中に拡大する恐れがある」と警告していた矢先でした。

本当に恐ろしい話で、ペニシリンが約100年前に使わて劇的に死亡率が下がった以前の世界に逆戻りしてしまう可能性があるのです。

この様な耐性菌が蔓延するのは「抗生物質の使いすぎ」が原因であることは明白です。しかし多くの場合「経済」的な理由から「抗生物質の乱用」は収まらないのです。

自分だけ「抗生物質」の利用を控えても仕方が無いのでは?と思われる方も多いと思いますが、実は「スーパー耐性菌」は生存に不必要な「抗生物質耐性遺伝子」を持っているため、耐性の無い普通の菌と比べて弱い菌なのです。

抗生物質で普通の菌が弱っていなければ、「スーパー耐性菌」が割り込んでくる可能性を減らすことが出来るはずなのです。

抗生剤止めますか、それとも・・・・・・・・・恐ろしくて書けないです。

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風邪に抗生物質は必要?

今日は朝から寒いですね。まだインフルエンザの方は来られてませんが、風邪での受診が増えています。お気を付け下さい。

さて今回は「風邪と抗生物質」について書こうと思ったのですが、私が書くより分かり易い記事がありましたので、リンクを紹介します。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151116-00000005-wordleaf-sctch

是非お読みくださいね。

リンク切れになった時のために、記事で紹介されている

WHOの抗菌薬啓発「4原則」

について引用しておきます。(以下引用)

(1)求めない
薬をもらうと安心するのは、当然のことだと思います。でも、自分にとって効果のない薬をもらって飲んでも、無用な副反応を引き起こす恐れがある上にお金がかかります。できるだけ症状に対して効果のある薬だけをもらうようにしたいものですね。薬の処方で気になることがあれば、医師に遠慮せず相談しましょう。医師の中には、意味のない薬と知りながら、欲しがる人が多いという理由で処方しているという人もいるそうです。

(2)飲むならきちんと
もらった薬は残さず飲みきることが大切です。その薬はそのときのあなたのためのものです。その細菌を殺すために、適切な量が処方されているはず。症状が良くなった気がしても飲み続けて、確実に細菌を死滅させてください。そうしないと、生き残っていた細菌が、しだいに耐性を持つようになってしまいます。

(3)もらわない
親切心で処方薬をくれそうな方に出会ったら、丁重にお断りすることがよいです。そしてやんわりと抗菌薬を捨てることをアドバイスしてあげられると、その抗菌薬を長く使える可能性が伸びます。

(4)あげない
(3)の逆ですね。病気の症状を判断できるのは医師だけです。抗菌薬は市販の風邪薬とは違います。医師でもない人が独自の判断で、抗菌薬を誰かにわたすのはしない方が良さそうです。

(引用ここまで)

これをお読みになって、皆さんは「風邪の時の抗生物質」どう思われますか?

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新しい抗生物質

本当に寒いと思っていたのですが、週末にかけてさらに寒くなるそうです。「ダメよ!・・・」とでもいいたい気持ちですね。

さて、前回は「耐性菌」について書いたのですが、タイムリーに関係する記事が出ていたので、紹介します。

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『MRSA:1分で99.99%殺菌 新しい抗生物質発見』
毎日新聞  2014年12月09日

ほとんどの抗菌薬が効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を殺菌する効果のある新しい抗生物質を発見したと、浜本洋・東京大助教(微生物学)らの研究チームが8日付の米科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジー電子版に発表した。MRSAは院内感染が問題になっており、新薬開発が期待される。

ライソシンEの殺菌力は強く、既存の抗菌薬が投与後約30分経過してようやくMRSAを殺菌し始めるのに対し、1分で99.99%を殺菌できた。また、菌の細胞膜のみを破壊し、マウス実験では生体への悪影響がないことも分かった。
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このライソシンEと名付けられた強力な抗生物質、さぞやハイテクの技術で開発されているのではないかと、お考えの方も多いと思いますが、実は・・・・・・

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研究チームは約2年7カ月かけ、各地で採取した土壌中にいる約1万4000種類の細菌を調査。沖縄県の土から見つかった細菌が、MRSAを殺す抗生物質を作り出すことを発見し、ライソシンEと名付けた。
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もの凄くアナログな努力で発見されているのです。

MRSAは通常は常在菌として、健常人の鼻腔などに密かに住み着いているのですが、免疫力がおちると突然に増殖して、既存の抗生物質が効かないため肺炎や敗血症を引き起こすことのある厄介な細菌です。このMRSAを1分で殺菌するのはすごいですね。

臨床で使われるにはまだ10年ほどかかると思いますが、本当に待ち遠しいですね・・・・・・・・でも今までの経験からいうとライソシンEにも耐性菌という話になるのでしょうか?今から心配です。

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クレジットカードと電動アシスト自転車と耐性菌

今朝から急に寒いですね。風邪で来院される方が増えています。(当院ではインフルエンザはまだですが・・・・)お気をつけ下さい。

さて、皆さんの財布の中に多分1枚はあるであろう「クレジットカード」。画像が虹色に浮き出るホログラムや紫外線を当てると浮き出る文字など、色々な工夫がなされているそうです。それでも偽造、模造品による取引が年々増えているそうです。最新技術で、偽造や模造品を防止する策をとっても再び破られてしまう、終わりなき戦いだそうです。

「電動アシスト自転車」ですが、ご存じのようにバッテリーを積んでモーターを動かして自転車を漕ぐ足の力をサポートしてくれる主婦の強い味方です。この「電動アシスト自転車」、モータに付いている歯車の数を変えて、サポート力を変えたり、スピードメーターを誤魔化して早い速度までモーターを動かしたり、違法改造が絶えないそうです。メーカーも、トルクセンサーや改造しにくいスピードメーターを搭載したりして対抗しているのですが、敵も然る者・・・・・・・・

何だか、抗生物質と耐性菌の関係に似ていますね。新しい抗生物質が開発されても、どこからともなく耐性菌が現れる・・・・・・・MRSA(多剤耐性菌)が恐ろしいといっていた時代もいつの間にか過ぎ去って、MRSAに唯一効くといわれていたバンコマイシンの耐性菌も検出頻度が高くなっているそうです。

これらのイタチごっこ、いつかは終わるのでしょうか?

 

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