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睡眠呼吸障害

先日天王寺医師会のスモールミーティングで座長の大任を任されました。講演者の佐田先生とは国立循環器病センター時代に一緒に働いたこともあり、私が選ばれたようなのです。前日から少し緊張気味でしたが、先生方の協力もあり何とかこなせたのではないかと胸を撫で下ろしました。

今回の演題は「循環器疾患と睡眠呼吸障害」でしたが大変分かり易く、今後の診療に生かしていこうと前向きになれる内容でした。

「睡眠呼吸障害」とは聞き慣れない言葉だと思いますが、飛行機や列車での居眠り事件で一躍有名になった「睡眠時無呼吸症候群」と一般的には同じであると考えて、大きな間違いはないと思います。

実は「睡眠時無呼吸症候群」が「循環器疾患のリスク」を押し上げていることが知られています。

高血圧症        1.42〜2.89倍のリスク
狭心症・心筋梗塞   1.2〜6.9倍のリスク
不整脈        1.74〜4.02倍のリスク
大動脈解離      約70%の患者さんに睡眠呼吸障害
糖尿病        2.3倍のリスク

特に大動脈解離は夜間に発症することが多く、「睡眠時無呼吸症候群」が動脈硬化の原因となるばかりでなく大動脈解離発症の引き金になっている(無呼吸で血圧が上昇し大動脈が裂ける)可能性があるとのことです。

また、「睡眠時無呼吸症候群」の方は、治療をしても循環器疾患が治りにくい傾向があるそうです。薬を飲んでも、数値が安定しない方は「睡眠時無呼吸症候群」の関与を疑う必要があるみたいです。

当院では「睡眠時無呼吸症候群」を検査する機器による診断を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(5)

「睡眠時無呼吸症候群」が様々な病気と合併するので、検査を受けて「睡眠時無呼吸症候群」で無いことを確認するのは大切な事だと前回のブログで書きましたが、今回は具体的に書いてみます。

「睡眠時無呼吸症候群」と合併しやすい病気として、高血圧・心疾患・脳血管障害・糖尿病・多血症・肺高血圧症・不整脈などがあげられます。「睡眠時無呼吸症候群」がある人は無い人より、約2倍高血圧が多いですし、心疾患は約3倍、脳血管疾患は4倍、糖尿病は1.5倍多く発症しています。

この様に書くと、「睡眠時無呼吸症候群」になるとその他のリスク要因が無くても先ほど書いた病気になってしまうと思われがちですが、決してそうではないのです。「睡眠時無呼吸症候群」はあくまでこれらの病気を顕著化させる要因と思っていただいた方がより正確かも知れません。

この点からすると、生活習慣病などに関して「睡眠時無呼吸症候群」は病気の本質では無いかも知れませんが、生活習慣病をはじめとする多くの病気に関わっていることがわかります。「睡眠時無呼吸症候群」を早期に診断・治療することで、一度発症してしまうと「生活の質」(QOL)が恐ろしいほど低下する脳血管障害や心疾患になるリスクを大幅に減らせる可能性があるのです。

ごく軽いものも含めて脳血管障害や心筋梗塞などをに罹ってしまった方も再発予防のために、「睡眠時無呼吸症候群」の検査・治療を行うことに大きな意味があることがご理解いただけると思います。

当院で行っている「睡眠時無呼吸症候群」は大変手軽なもので、昔のオイルライターぐらいの器械を貸し出させていただき、寝る前に装着して一晩寝ていただき翌日に器械を返却いただくだけです。これまでのブログを読まれて心当たりのある方は是非一度お受けになることをお勧めします。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(4)

これまで「睡眠時無呼吸症候群」について、メカニズムを含めて書いてきました。本人が眠っている時のことでもあり、「検査を受けてみよう!!」と思い立つことが難しいため、有効な手が打てないことは理解いただけたと思います。

昨日、天王寺区医師会のスモールミーティングに参加してきました。「不眠治療」に関する勉強会だったのですが、その中で「睡眠時無呼吸症候群」が大きく取り上げられていました。専門の先生も治療は簡単だが、検査を受けてもらうことが難しいとの事でした。

なかなか検査を受けてもらえない理由としては、「睡眠時無呼吸症候群」が昼間に眠気が来る単独の病気だと思われてることがあると思います。今後のブログで書いていこうと思っていますが、実は「睡眠時無呼吸症候群」は生活習慣病のリスク要因になっていることが知られているのです。

生活習慣や服薬をきちんとしても検査値改善が十分でなかったりする場合には「睡眠時無呼吸症候群」でないことを確認するために検査を受けた方が良いのです。また、「睡眠時無呼吸症候群」は生活習慣病のリスク要因ですので、生活習慣病から起こってくる、心筋梗塞・脳血管障害等の病気になった方はやはり、「睡眠時無呼吸症候群」でないことを確認する必要があります。

一般に血液検査は「○○病でない」ことを確認するために定期的に行うものであることは広く受け入れられているのですが、その他の検査に関しては「○○病である」という診断のために行うものだとの認識が根強いようです。「睡眠時無呼吸症候群」の検査に関しては、器械が良くなったこともあり簡単に行えますし、「睡眠時無呼吸症候群でない」と明らかになれば心筋梗塞・脳血管障害や生活習慣病の治療に大きく役立ちますので、血液検査と同様に「○○病でない」ことを確認するためにする検査であると考えていただければと思います。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(3)

昨日2012年のWHO「世界保健統計」が発表されましたが、驚くことに世界の25歳以上の人口の4分の一以上が高血圧なのだそうです。世界平均よりはやや少なめになっていますが、日本でも男性26・4%、女性16・7%が高血圧の範疇に入っているそうです。定期的に病院や医院に通院している方がそれほど多いとは思えないので、多くの方が気になりながらも後回しにされているのでしょう。以前のブログでも書きましたが、高血圧は「未病」の状態と考えられるので、「治療をすると言うより養生する」感覚で気楽に通院いただけるにはどうすれば良いのかと頭をひねっています。

さて、前置きが長くなりましたが「睡眠時無呼吸症候群」の起こるメカニズムについて書きたいと思います。

実は「睡眠時無呼吸症候群」は原因から大きく2種類に分かれます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

   睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因である。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

   脳血管障害・重症心不全などによる呼吸中枢の障害で呼吸運動が消失するのが原因である。

   (*注 閉塞性と中枢性の合わさった混合性もあります。)

多くの場合が閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。

いわゆる「いびき」は睡眠時に気道が狭くなることで起こるのですが、さらに狭くなってついに閉塞してしまうと「無呼吸」になってしまうのです。肥満があると閉塞を起こして無呼吸になる確率が3倍になるとの報告もありますので、肥満も一つの原因ということになります。

睡眠時無呼吸症候群の説明で「いびき・肥満」が強調されるのも、その原因から考えると十分に頷けるものだと思います。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(2)

連休を挟んで3週ぶりのブログです。みなさんはどのようなゴールデンウィークでしたか?全国的にあまり天気に恵まれなかったようですね。

前回からの続きで「睡眠時無呼吸症候群」(略してSAS「サス」)について書いていきたいと思います。

「睡眠時無呼吸症候群」は文字通り睡眠中に無呼吸になる病態と前回書きましたが、睡眠中に無呼吸になると何が起こるのでしょうか?「無呼吸」を平たく言えば「窒息」しているわけですから、本人は気付かなくても半分起こされている状態(半覚醒状態)になっていると考えられます。一晩に何回も起こされているようなものなので、十分に睡眠が取れないのは容易に想像出来ると思います。

さらに、「無呼吸」になるのは深い眠りに入るときなので一晩中「深い眠りに入る」←→「窒息・半覚醒」を繰り返すこととなり、質の良い深い眠りの時間が激減してしまうのです。ですから、十分な睡眠時間を確保していても「疲労感がとれない、身体が重く感じられる、頭がズキズキ痛む、集中力や意欲が持続しない」などの慢性的な寝不足の症状が現れてくるのです。

単に疲れが溜まっていると思い込むことが多いので、病気であることに気付かず苦労されるケースも多々あります。一般職の方はもとより自動車の運転や工作機械を扱う方々で、少しでも思い当たる節のある場合は、検査を受けられることを勧めます。小さな器械を腕に付けて寝るだけの簡単な検査ですのでお気軽にご相談ください。

次回は、「睡眠時無呼吸症候群」の起こるメカニズムについて書いていきたいと思います。

 

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睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気?(1)

このブログでは生活習慣病について書いてきましたが、今回からしばらく「睡眠時無呼吸症候群」について書いてみたいと思います。

「睡眠時無呼吸症候群」はスリープ・アプネア・シンドローム(略してSAS「サス」)の日本語訳ですが、文字通り睡眠中に無呼吸になる病態です。どれ程の無呼吸かと言えば、10秒以上続く無呼吸が睡眠1時間あたり5回以上(平均)起こり、これにより日中の眠気などの症状が出てくればSAS(睡眠時無呼吸症候群)ということになります。日中に、疲労感がとれない、身体が重く感じられる、頭がズキズキ痛む、集中力や意欲が持続しないなどに加えて、「いびきをかく」人はSAS(睡眠時無呼吸症候群)の可能性があります。

この病態がやっかいなのは、症状が眠気や疲労感などの体調不良や加齢によるものと勘違いされやすいものであることと、眠っているときに無呼吸が現れるために本人自身が気付けないことにあります。

当医院で検査を受けてSAS(睡眠時無呼吸症候群)と診断された方のほとんどは、ご家族に「寝ているときに呼吸が止まっているよ!」と言われた事がきっかけになっていることからも、本人には気付けないこの病態の特徴が現れていると思います。

日中に、疲労感がとれない、身体が重く感じられる、頭がズキズキ痛む、集中力や意欲が持続しないなど症状がある方や、家族に「寝ているときに呼吸が止まっているよ!」と言われる方は、早い時期に検査をうけられる事をおすすめします。適切な診断と治療を行えば、熟睡した朝の爽快感が戻ることもありますので、年のせいや疲れのせいと早合点せずにご相談いただけると幸いです。