カテゴリー別アーカイブ: エビデンス

ネイチャー誌、サイエンス誌の9割は嘘?(2)

今朝は急に冷え込んで、半袖では肌寒い感じですね。あれだけ暑かった夏は何処へやら・・・ですね。

前回の続きになりますが学術論文の「事実と違う」ことと、「捏造・作り話」とは何が違うのかを説明したいと思います。

科学論文に「捏造・作り話」はあることは否定しませんが、ノーベル賞を受賞された京大名誉教授の本庶佑先生のいわれる「嘘」は違う意味なのです。

医学系の科学論文の成り立ちは簡単に言ってしまえが、「これこれの条件で」=「〇〇が分かりました。」との形式になるのです。もちろん「〇〇が分かりました」の部分を事実と違うことを書けば、「捏造・作り話」になってしまいます。

難しいのは「これこれの条件で」の部分なのです。体の中でどのような条件が成り立っているのかははっきりしないので、各研究者も手探りで条件を決めていくのです。

研究の結果「〇〇が分かりました。」と学術論文に報告されるのですが、「これこれの条件」が本当に生きた細胞や生体内で成り立つのかは保障されていないのです。もし成り立っていても、ごく短い期間だけで、影響がほとんど見られないかもしれません。

この「事実と違う(実効性がない)」ことが、本庶佑先生の「嘘」との表現になったのだと思います。

少し込み入ったはなしになってしまいましたが、学術論文の「嘘」の種類についてなんとなく感じていただけたでしょうか?

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ネイチャー誌、サイエンス誌の9割は嘘?(1)

また週末に台風ですね。早々に運動会を月曜の休日に延期する学校もあるようです。電車などの予定運休など、対応が以前より早くなっていますね。

今週の話題といえば、もちろん京大名誉教授の本庶佑先生がノーベル医学・生理学賞を受賞したことでしょう。抗がん剤の「オプシーボ」開発の端緒となったDP−1を1992年に発見したことに対しての受賞だそうです。本当におめでとうございます。

会見で名誉教授は以下のように話されたと、記事になっていました。

『自らの研究に対する姿勢を問われると、好奇心と「簡単に信じないこと」の重要性を強調。「(科学誌の)ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割」と語り、自分の目で確かめることの大切さを説いた。』

ここでの「嘘」という表現は「捏造」や「作り話」という意味ではなく、「事実」と違うという意味なのです。

「やっぱり『嘘』じゃないの?」という声が聞こえてきそうですね・・・・・・・・嘘は嘘なんですけど科学論文についての説明から始めないと言葉遊びに聞こえてしまいそうですね。

長くなりそうなので、続きは次回といたしたく存じます。

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「忍者」ブランドと「アスピリン」

突然ですが愛知県が応募した「忍者募集」に、海外からの応募が殺到しているとの記事を見かけました。200件以上の応募の内、80%が海外からのものだったそうです。

オーディションの旅費が自己負担になるため、あきらめた人も多くおられた様ですが、海外での「忍者」ブランドは根強いものがあるなぁと再認識しました。

日本では、「忍者ハットリ君」や「忍たま」などのコミカルなイメージがあるのですが、海外では自己を鍛錬し困難を克服する「クール」な存在だそうです。

以前に読んだ海外のプログラミング教科書でも、「○○○Ninja(忍者)」というタイトルを付けて、初級の忍者が免許皆伝になる体で書かれていました。

「爆買い」も陰りが見えてきそうなので、「忍者」ブランドを活用すると大化けするかもしれませんね。

実は最近医療関係で、大化けしそうな物の一つが「アスピリン」なのです。

海外の大規模前向きコホート研究で13万6000人のデータ追跡の結果、アスピリンが消化管癌のリスクを8.5%低下させた可能性があると報告されたのです。

今後、よりエビデンスレベルの高い臨床研究や詳細な基礎研究が進めば、皆さんもお馴染みの「アスピリン」が、ビックブランドに大化けするかもしれません。

今後の研究成果に大いに期待したいものです。

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重力波と胃薬(2)

前回はアインシュタインの「一般相対性理論」に関係する「重力波」について説明しました。今回は、皆さんにもお馴染みの胃薬について解説する・・・・・・・・のではなく、重力波と胃薬の関係について書いてみたいと思います。

実は「重力波」と「胃薬」が直接関係するのではなく、非常に個人的な内容なので恥ずかしい上にアインシュタイン先生を引き合いに出して書くことに大変恐縮していることをお断りしておきます。

十数年前になるのですが私が国立循環器病(研究)センターに勤務していた時に、心不全で入院された方々のデータを「データ・マイニング」という方法で解析したのです。それまであまり医療に「データ・マイニング」を使った例は無かったのですが、大阪大学工学部の先生の協力を得る事で、実現したのです。

色々な知見が出て来たのですが、その中で最も驚いたものは「ある種の胃薬が心不全を改善する」との情報でした。(当時海外の雑誌にも取り上げられました。)

最近になって海外のグループが、その胃薬が心不全予防に役立つとの「前向き大規模研究」の結果を発表したのだそうです。「データ・マイニング」が医療の世界を探索する時の「羅針盤」になり得る可能性が増えたことと、十数年前の予測が実際に確認されたのです。

奇しくも海外グループの研究結果を知った翌日に、重力波」の直接観測が発表されたので、ビックリして大それたブログをつい書いてしまいました。

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重力波と胃薬(1)

今回のブログは「バナナの黒点と皮膚がん」について書こうと思ったのですが、「重力波の直接観測に成功!!」との報道が急に飛び込んできましたので、題材を変更して書きたいと思います。

さて「重力波」が直接観測されたことが、何故大騒ぎになっているのでしょうか?

100年前に提唱されたアインシュタインの「一般相対性理論」から「重力波」の存在が導き出せるのですが、「重力波」が実際に観測されたことで、「一般相対性理論」がこの世界を正しく表している(記述している)証拠が見出されたのです。

それの何がすごいのと言われそうですが、この世界がどの様に成り立っているのか調べる方法が増えたと考えれば、今まで分からなかった事が解るようになる可能性がるのです。(白黒テレビを見ていた人がいきなりハイビジョンを見せられような変化を重力波は私達に起こすかもしれません。)

また、SFで流行の平衡宇宙(パラレルワールド)との通信は「重力波」を使って理論上出来るとの事なので期待が膨らみますね。(パラレルワールドがあればですが・・・・・・・)

正しい理論は、この世界の秘密を解き明かす時にまさに「羅針盤」の働きをするので、「一般相対性理論」が正しい方向を指し示す事が物理学の世界では大変重要なことなのです。

「重力波」の直接観察本当にすごいですね。(一般にはノーベル賞確実だと言われています。)

続けて胃薬について説明しようと思ったのですが、長くなりそうなので次回にしたいと思います。

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「一杯のコーヒーから・・・・♪」

9万人超の日本人を対象とした前向きコホート研究で、コーヒーを1日3-4杯飲む人は、ほとんど飲まない人より、死亡リスクが24%低下することが報告されました。

かなりインパクトのある研究だと思います。重要な点としては、

1.対象が9万人超と大規模である。
2.対象が日本人である。
3.前向きコホート研究である。

などがあげられると思います。

人数が多いので、確率的な変動で結果が振れにくい上に、日本人のデータであるので皆さんにも効果がある可能性が高くなるのです。その上、前向き(コホート)研究であるので、後ろ向き研究で良くある、「コーヒーを飲んだから長生きした」または「コーヒーを飲み続けられた人が長生きした」(コーヒーを飲み続けられない人は早期に死んでしまう?!)のか判断が出来ない事態が回避されているのです。

死亡原因別に見ると、心疾患による死亡リスクは36%、脳血管疾患による死亡リスクは43%、呼吸器疾患による死亡リスクは40%低下していたとのことです。ただ残念なことに、癌による死亡リスクは変化が無かったようです。

「一杯のコーヒーから・・・・♪」健康になれるかもしれませんね。


スタチンによる糖尿病リスク(5)

朝は寒い感じがしますが、日が高くなるにつれ汗ばむような暖かさです。温暖の差が激しいこの時期は以外と疲れ易く風邪や胃腸炎で受診される方が増えております。お気をつけ下さい。

さて、前回の最後に書きました「何とも奇妙な曲線」について書きたいと思います。

そのグラフは、時間経過とともに糖尿病を発症した人の数を積み上げたグラフで、曲線が下にあるほど発症が少ないことを表している医学論文ではよくあるグラフでした。

確かにスタチンを服用した群の曲線が、スタチンを飲んでいない群の曲線を終始上回っていました。ところが、このグラフに表されている4年間のフォローアップ期間で、ちょうど2年目と4年目にスタチンを飲んでいない群の曲線が急上昇して、スタチン群の曲線に追いついているのです。

多分この研究では、2年目と4年目に、糖尿病発症の評価を必ずするように決められているが、間は担当医が任意に糖尿病発症の評価をするように決められていたのだと思います。

スタチンを服用されていない場合には、定期的な投薬がないため決められた日(2年目と4年目)にしか来院されず、任意の糖尿病発症評価が全くされていない人が多数含まれていたと考えられるのです。糖尿病発症の評価がされない限り、「糖尿病を発症した」とはいえないため、見かけ上スタチンを服用していない人の糖尿病発症が少なくなのです。

上記の理由で、この様なグラフを解析に用いられるカプランマイヤー法で有意差がでるのは頷けますが、2年目と4年目の数値を取ってみると有意差は無いと判断できます。

その他の試験を総べて見たわけではないですが、「 糖尿病に良いはずのスタチンが糖尿病の発症を増やしてしまう矛盾」は、「研究の方法」や「人為的な影響」といった妖怪のせいかもしれません。

・・・・・ウィスパーに聞いてみなくちゃ!!

ここまで考えて、やっと悩ましさのモヤモヤは霧散しました。

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スタチンによる糖尿病リスク(4)

前回は、糖尿病発病に対するスタチンの効果が、研究の方法(「無作為割り付け」かどうか)により変わってしまう可能性を書いたのですが、ご理解いただけましたでしょうか?(少し込み入った内容ですみません。)「これにて一件落着!!」と思った所に、無作為割り付け(ランダマイズ)試験でも、スタチンが9%程度糖尿病の発症を増やしているとの論文に行き当たりました。

ビックリして学術部の方にお話をお聞きしたところ、確かにその内容で論文が発表されているとのことでした。お教えいただいた現時点での一般的な考え方としては、「スタチンの種類によっては、若干糖尿病の発症を増加させる可能性がある。」とのことです。

前々回のブログで挙げた考えの一つ「Ⅰ 2001年の研究で使われていたスタチンと違う種類のスタチンが上市され多く使われるようになっている現状から、新しく使われているスタチンが糖尿病発症に良くないかもしれない。」に近い考え方ですね。

「そういう事もあるかもしれないけど・・・・・何だかしっくり来ないなぁ」と呟きながら、資料を見てみると、ある試験における糖尿病発症率のグラフに行き当たりました。

そこには何とも奇妙な曲線が・・・・・・・・・・(次回最終回に続く!)

 

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スタチンによる糖尿病リスク(3)

急に暖かくなって桜が散り始めたかと思ったら、冬のような寒さ・・・・・一体どうなっているのですかねぇ。

さて前回の続きで、糖尿病に良いはずのスタチンが糖尿病の発症を増やしてしまう矛盾(「スタチンによる糖尿病リスク(1)(2)を先にお読みください。)を私がどの様に考えたのかを説明します。

実は今回発表されたフィンランドの試験は、無作為割り付け(ランダマイズ)試験では無いのです。ですので端的に言うと、「スタチンを投薬されたので糖尿病が増えた」のか「スタチンを投薬される状況にある人が糖尿病になり易い」のか判らないのです。

単純化して言えば、スタチンが糖尿病発症を30%抑えたとしても、スタチンを投薬される様な病態(高脂血症)の人が40%糖尿病になり易ければ、見かけ上スタチンの投薬を受けた人は10%糖尿病の発症が多くなってしまうのです。

エビデンスの結果だけでなく、背景を読み解かないと困ったことになるのです。

と書いて、今回のシリーズを終えるつもりだったのですが・・・・・・・・・・・

無作為割り付け(ランダマイズ)試験でも、スタチンが糖尿病の発症を少しですが増やしている報告があったのです!?(フィンランドの研究とは違い9%程度ですが・・・・・)

皆さんに正確な情報をお伝えするため学術部の方にお越しいただき、公式にはどの様に解釈されているのかお教えいただきました。

次回請うご期待!!

 

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スタチンによる糖尿病リスク(2)

先週、桜の開花宣言が出たと思ったら、今日からの雨と風でもう桜が散ってしまうみたいです。儚いのが桜とはいえ、何だか寂しいですね。

さて、高脂血症の治療薬であるスタチン。あらゆる段階の糖尿病の方に投薬が推奨されている一方、フィンランドからスタチンの投薬が糖尿病の発症を46%も増加させるとの報告がなされ、何とも悩ましいと書いた前回でしたが・・・・・・・・・皆さんはどんな説明を考えられましたか?

私もザックリと考えてみたのですが、一見矛盾する両方のエビデンスが正しいとすると、

Ⅰ 2001年の研究で使われていたスタチンと違う種類のスタチンが上市され多く使われるようになっている現状から、新しく使われているスタチンが糖尿病発症に良くないかもしれない。

Ⅱ そもそもスタチン自体が、糖尿病の発症には悪いが糖尿病になった人には良い効果があるのかもしれない。

Ⅲ 研究に参加した人の、年齢・人種・性別などのスタチン以外の要因が強く働いたのかもしれない。

Ⅳ 各研究における「糖尿病」の定義が異なっていて、新しい研究ではより厳しく糖尿病を判定するようになっているかもしれない。

等々、が考えられます。どれもあまりしっくり来ないのですね。

ただⅣ番はスタチンはインスリンの分泌を少なくすることが基礎研究から知られているので、「β細胞の保護」を通して糖尿病の悪化を防ぐ可能性があります。そうなら、スタチンは軽い糖尿病にするが重症化をさせないので、一見矛盾した結果になっている可能性があります。

本当にそうなのでしょうか、もっと納得できる説明はないのでしょうか・・・・・・(つづく)

 

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