カテゴリー別アーカイブ: 診断・検査

1mmの線虫がガンを見つける!

春なのか初夏なのかわからない天気が続いていますね。気温の変化で、体調を崩している方が多いようですのでお気をつけくださいね。北海道では季節外れのインフルエンザA型が猛威をふるっているようです。インフルエンザ予防接種の効果も薄れてくる時期なので、心配です。

さて、今回は2年ほど前にブログ(尿1滴からがん検出)で取り上げた話題の続報が入りましたので、そのことについて書きたいと思います。

九州大学大学院理学研究院助教の廣津崇亮先生は「線虫博士」と呼ばれるほど、線虫の嗅覚について研究してこられた先生だそうです。

2013年に佐賀県の伊万里有田共立病院で外科部長をしている園田英人先生からこんな相談を受けたそうです。

「胃痛で来院した患者の胃にアニキサスという線虫が食いついていたため摘出手術をされたところ、そのアニサキスの食い付いている部分に早期胃がんが見付かりました。線虫の専門家としてこの現象をどう思われますか?」

線虫は1mmと小さいながらも、犬の1.5倍の1200もの嗅覚受容体(匂いを受け取る分子)を持っているので、ガンを嗅ぎ分けている可能性があると考え、研究を開始したとのことです。

その結果以前のブログに書いたように、ガンを尿一滴で安価に検査できるシステムを考えつき、あと数年で実用化できる目処がついたとのことです。

医学と他の分野が上手く連携すると素晴らしい成果が出るのですね。

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がん検診が「陽性」だったら

先週は、休日でブログも休みでしたので2週間ぶりのお目見えです。連休の疲れで午前中からあくびの連発してませんか?

さて、今回はがん検診で「陽性」と判定された場合について書いてみたいと思います。

多くの人の場合、がん検診で「陽性」(癌の疑いあり)と診断されると多くの人は「自分は癌なんだ」と理解すると思いますが、がん検診で「陽性」と診断された人の中で「癌でない人」がどれ位含まれているのかご存じですか?

単にがん検診で「陽性」が出た場合では、癌が存在しない(!)確率はおおよそ99%になります。(詰まり癌がある確率はたったの1%なのです。)

「でもがん検診の感度が70−90%じゃないんですか?」との声が聞こえてきそうですね。

実はがん検診で「陽性」と判定される場合には二通りあるのです。

①実際に癌があって、健診で「陽性」とされる場合。
②実際に癌は無くて、健診で「陽性」とされる場合。

健診で70−90%と言われているのは①の場合のみを考えた時の数字なのです。①の場合何らかの症状や変化があることが多いので、そのような物があれば要注意です。

しかし、がん検診で「陽性」と判定される人の多くが②の場合になります。実際に胃癌のレントゲン検査では、①782人 ②39,953人の割合です。(胃癌の検診は比較的感度が高いといわれています。)

さらに、癌があるのにがん検診で「陰性」とされる場合もあり、がん検診は受ければ白黒ハッキリする類のものでは無いのです。

何か体調異常があった場合に、放置せず受診をすることが大切なのです。

 

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ハチにしか見えないのに・・・

まだまだ寒いなぁと思っていたら九州ではそろそろ桜の開花宣言が出るそうで、確実に春は近づいているのですね。

今回は、九州大学大学院1年生が、まるで蜂のような蛾を発見したのと話題です。

沖縄県北部にある国頭村で虫が飛んでいるのを見て、(私だったらそのまま無視・・・・バキ!!)
『後ろ足を下げてゆらゆらしと飛ぶアシナガバチとは違い、後ろ脚を後ろに伸ばしてゆっくりまっすぐ飛んでいた。虫好きじゃないと気付きにくかったのかもしれない。網の中のスカシバガは図鑑で見た覚えもなく、新種ではないかと心躍った。』のだそうです。

これまでも数え切れないほど多くの人がその姿を見ていたはずなのですが、普通の「アシナガバチ」としか思っていなかったのです。

飛び方のチョットした違いに気付いたのは、研究者としての資質がなせる業でしょうか?

診療でもかくありたいと思うのですが、病気で「見た目」が変わることは少ない(特に循環器領域では)ので、患者さんの自覚症状に頼る部分が大きくなります。

そんなわけでもし当院を受診されることがありましたら、「根掘り葉掘り聞いてきて、煩い先生だなぁ」と思わすにご協力お願いいたしますね。

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髪の毛で・・・・

近畿でも「真夏日」の言葉をチラホラ聞くようになってきました。この時期にも熱中症は結構あるようですので、お気をつけ下さい。

さて今回は、警察のDNAや麻薬の捜査に髪の毛が使われれている事はドラマなどで以前からよく見ていたのですが、医学の世界でも髪の毛が活躍するかもしれないとの話です。

理化学研究所脳科学総合センター分子精神科学教室から、頭皮の毛根細胞における遺伝子の発現を計測することによって、初期の精神疾患を見分けることが出来るとの報告が行われました。

病気の症状などが顕著化する前に体内で変化をする物質を「バイオマーカー」といって、早期診断に有用なツールとして活躍しています。これまで、非侵襲的(脳細胞を取ってくるなど大がかりでなく)で簡便な精神疾患診断バイオマーカーの発見が待ち望まれていたのです。

今回は、髪の毛の根元にある毛根細胞での遺伝子発現を調べる手法が、有用であるかもしれないとの報告だったのですが、調べてみるとこれまで脳細胞でしか発現していないと考えられていた遺伝子が、実は毛根でも発現している事が判明したとのことです。

毛根細胞が脳細胞での遺伝子発現の状況を反映していれば、脳内の状況を髪の毛一本で知ることが出来るかもしれないと言うのです。

もしそうなら認知症やうつ病など現代社会の問題となっている病気を、髪の毛一本で診断・予防出来る日がくるかもしれません。

 

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尿1滴からがん検出

九州大学から驚きの研究結果が発表されましたので書いてみたいと思います。

九州大学(九州大)は3月12日、線虫は尿によって高精度にがんの有無を識別することができると発表した。実用化されれば、尿1滴でさまざまな早期がんを数百円で高精度に検出できるようになる。

線虫はわずか1mmと小さな生物ですが鋭い嗅覚を持っており、尿からがん特有の臭いを嗅ぎ分けて寄っていき、正常人の尿からは逃げる行動を取ることを発見したとのことです。実験では24人のがん患者の内、23人を見分けた(嗅ぎ分けた?)のだそうです。

線虫は簡単に増やすことが出来るので、安価に検査できるだけでなく、様々ながんに反応する線虫を分別して育てることも難しくは無いのです。臨床応用にはまだまだ越えなければいけない壁は多いと思いますが、実現すれば素晴らしいと思います。

そもそも、何故この様な線虫を使う方法を思い付いたかと言えば、「4年ほど前にサバにあたった患者の治療で原因だったアニサキスという線虫が、患者の胃にできていたがん細胞に食いついていた。」からだそうです。

やはり「観察の医学」が大切なんだと、ほくそ笑んでしまいました。

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妖怪ウォッチと健康診断

最近の天気は、秋の気候というより「夏の終わりと冬が混在」しているような感じですね。こんな時は重ね着で、小まめに調節するのが良いかもしれません。

さて、子供達の間で「妖怪ウォッチ」が大ブレークしています。ラッキー池田が振り付けした「妖怪体操第一」は音楽を流すと多くの子供が自然と体を動かす様は、40代の人達が「UFO!」というと頭の後ろから手を上に出す仕草を自然としてしまうのを連想させます。

妖怪ウォッチですがユニークで可愛い妖怪達が出てくることもさることながら、子供達が「なんで?」と思うことを「妖怪のせいなのね」と疑問を一刀両断にする明快さが子供の感性にうけているようなのです。

一方で「何で宿題をしないの!」と怒られても「妖怪のせいだから」と答えたり、謝る時に「ごめん、ごめん、一反ゴメン」と悪びれもせず言ってみたり色々と問題も出て来ているようです。

「妖怪のせいなのね」などと非現実的な答えであっても、何となく安心してしまうのは子供だけでなく大人も含めた現人類の特徴なのかもしれません。

「大人になって妖怪は無いよ!」との声が聞こえてきそうですが、説明のため以前に書いたブログの文章を引用しますね。

*******(検査の正常値と異常値について(1)より)

これまで、健康診断や診療にあたって血液検査など様々な検査を受けられた経験があると思います。その中で一度も異常値を示す上向き(または下向き)の矢印や星印(アスタリスク)を見たことのない方は希ではないでしょうか?

これらの異常値を示すマークは何となく気分を落ち込ませ、「最近忙しかったから・・・」「暴飲暴食が・・・」など、自分に言い訳したくなる状況を作り出しています。(学生の頃、赤点を取った気分に近いのでしょうか?)

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如何でしょうか、大人になっても違った形の「妖怪」を出現させていると思いませんか?

 

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運転士と星新一と医療

子供のころ、阪急電車の沿線に住んでいたのですが電車の先頭に陣取って、運転士さんの様子を良く眺めたものです。単にハンドルを握って「操縦」しているだけではなく、信号や標識の度に「確認よーし」と指さしている姿が格好良く見えたものです。大人になって知ったのですが、指さし確認は単なるパフォーマンスではなく、人間の思い込みを是正する、安全運転のための基本的な所作であるとのことです。

人間の思い込みと言えば、昔読んだ星新一さんのショートショートに記憶に残る作品がありました。簡単に内容を纏めると、お酒を飲み過ぎて肝臓を患った人が「禁酒」をするために当代随一の自己暗示の先生に教えを受けて禁酒に成功するのですが、あるときお酒を飲んだ自己暗示を自分にかけてみたら、お酒を飲まないのに飲んだ時の様に気分が良くなったのです。そこで彼は毎日お酒を飲んだ自己暗示をかけて、実際にはお酒を飲まないことにしたそうです。

数年後、お酒を一滴も飲んでいないのに彼の肝臓は肝硬変になってしまったのです。それは、当代随一の自己暗示の先生の教わったので、自己暗示が実際に飲酒をしたのと同じ効果を体に及ぼしていたとの落ちだったと思います。人間の思い込みに対する鋭い皮肉を含んだ面白い作品でした。

医療の現場でも医療従事者の思い込みで、医療事故が起きることは新聞などでご存じだと思います。
実は危険な思い込みは患者さんにもあります。「運動をがんばるから」「お酒を控えるから」「痩せたら大丈夫」と御自身で判断するのは悪いことではないのですが、定期的な検査で「確認」することが大切であることは、このブログを以前から読んでいただいている方は納得していただけると思います。

「頑張っているのだから良くなっているはずだ!」は自己暗示に過ぎないかもしれません。

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異常と原因

朝晩はメッキリ寒くなってきましたが、週明けの雨の後は最低気温が1桁まで下がるそうですので、週末は暖房の動作確認やコートなどの用意をしておかなくてはと思っています。

当院ではBGMにクラシックを流しているのですが、時々「シャー」とノイズの入ることがあります。週末などの時間を利用して原因を調べるのですが、不規則にノイズが出るため原因が一向に解らず「モヤモヤ」した気分から抜け出せないでいました。

電源を差し替えたり、線をつなぎ替えたり、挙げ句の果てにマニアックにもコンピュータシステムのパラメータを変更したり、挙げ句の果てにコンピュータや電子機器と相性の悪いスタッフ(その人が使うと何故か電子機器がおかしくなる人は職場に一人は居るものですが・・・)が何か影響を及ぼしているに違いないと非科学的な説明をうそぶいて笑い飛ばしてみたりしています。

本当に異常の原因がわからないことはストレスの溜まるものです。

他病院を受診されて検査をしたけれど「何も悪いところはない。」と言われたのに症状が取れず、不安を持って当院を受診される患者さんが居られます。そんな時ストレスと不安を軽減するために、医師が言う「何も悪いところはない。」という言葉は、多くの場合「治療することによって確実に症状を改善させることの出来る異常を見付けることが出来ない。」という意味であると説明させていただいています。そのようにご理解いただいた上で、症状の出る状況や血圧や体調など自分なりに記録していただき、その記録と症状の時間的経過から原因を一緒に突き止めて行くのが良いのではないかと思っています。(もちろん真の原因はわからないこともありますが、症状との折り合いを付けるのにも記録は大変役立つものです。)


健診結果相談

台風が過ぎてから、少し過ごしやすくなりましたね。長く暑かった今年の夏もそろそろ終わりでしょうかね。

さて、このブログでも何度か書いたのですが、「健診を受け放し」にしている人が意外に多いようです。そのため健診結果の異常について医師の報告書を求める会社もあるようです。

健診結果をかかりつけ医に見せておくことは重要なのですが、どの様にお伝えすれば得心していただけるのか以前から頭を捻っていたのですが、参考になりそうな話を思い出したので書いてみますね。

それは、医学とは全く違う畑の「ホテル経営」の話なのです。

「ホテル経営」は端から見る程、優雅なモノではなく難しい要素を抱えてるとのことです。

1.鮮魚屋などで売れ残った魚は、次の日に値段を割り引いて売ることが出来るのですが、ホテルでは「今日の空室」を次の日に売る事が出来ないのです。(売れ残った魚が消えてしまうようなものですから)「ホテル」は「鮮魚屋」よりも厳しい時間的な制約を受けていると言えます。

2.小売店など状況を見て仕入れの量などを調整できるが、ホテルは自由に建物を大きくしたり、小さくしたり出来ないために「小売店のような仕入れの調整」が出来ない。

上記のような話を聞いて「なるほどなぁ」と感心した事を覚えています。

その時はそのまま聞き流していたのですが、今回よくよく考えてみると「ホテル経営」と「健康維持」は似ているのでは・・・・・・とひらめいたのです。

1.健診結果を医師に相談せず放置して、血管の老化(動脈硬化)が進んでしまうと後からの努力では取り戻せない。

2.いわゆる「体質」は「遺伝 + これまでの積み重ね」で決まるものなので、急に努力しても自由に変えることが出来ない。

「健康診断の結果が(もっと)悪くなったらがんばろう」とお考えの方々、「ホテル経営」はそんなに甘いものではないようですよ・・・・・・・

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検査をしなければ・・・・・(3)

梅雨らしいどんよりとした天気が続きますね。気温はそれ程高くなくても、汗が蒸発しないために効率的に体温を下げることが出来ず、熱中症になってしまうこともありますのでお気を付けください。

さて今回は『(血液)検査では判りません。』とお医者さんが言う場合の状況についてかんがえてみたいと思います。
最初に思い付くのは「(何も症状は無いけど)悪いところがないか全部検査してください。」といわれた場合です。以前からのデータがあれば、比較して検査値が悪くなったところがないか確認できるのですが、検査が初めての場合には異常値が出てもそれが「悪いところ」かどうかが判断できない場合があります。(この辺りの詳しい話は以前のブログ「検査値の正常値と異常値について」をお読みくださいね。)

次に「○○の病気にならないか調べてください。」といわれる場合です。確かに複数の検査異常があればその病気になるリスクは高くなっていくのは事実です。検査異常がある人は○○病になるリスクが正常人の3倍になりますと聞くと恐ろしいと感じますが、仮に検査異常のない人で100人に1人○○病気になるとすると、検査異常がある人は3倍の○○病が発症するので100人に3人ということになります。しかし、「検査が正常の人の病気でない確率」が99%に対して、「検査異常のある人の病気でない確率」は97%となり、病気でない確率はたった2%しか下がっていないのです。検査で病気のリスクは判るのですが、「病気になるかどうか」は判断できないこともあると理解していただけるのではないかと思います。

この様に書いてきましたが、もちろん「症状は無くても検査のみで診断可能」な病気もありますので、「検査では判らない」と早合点せずに、検査は絶対的なものではなく病気によって検査の位置づけも変化するものであり、

「(血液)検査をしなければ判りません。」
「(血液)検査では判りません。」

という言葉は時として同時に正しいこともあり得ると感じていただけると幸いです。

検査の位置づけについては、まだまだ書きたいことがあるのですがまたの機会に譲りたいと思います