カテゴリー別アーカイブ: 高血圧

脳への衝撃で高血圧改善

蒸し蒸しと暑い日が続いていますね。週末は「記録的」な大雨になるそうですので、お気をつけくださいね。早ければ来週には梅雨明けで、暑い日が1ヶ月ほど続くそうですね。夏本番。熱中症などにご注意ください。

さて、国立障害者リハビリテーションセンターから面白い研究成果が発表されましたので、取り上げたいと思います。

(以下引用)

同センターなどの研究グループは、運動時に足で着地した際、頭部に一定の衝撃が加わることに注目。高血圧ラットの頭部に一定の衝撃を与え続けた結果、脳内の細胞に物理的な刺激が加わり、血圧を上げるたんぱく質の合成が抑制されることが確認できた。

(引用ここまで)

人についてもジョギングぐらいの衝撃を週3回(1回30分)程度1ヶ月づけると降圧効果が認められたとのことです。

高齢者の体調管理に応用が期待されます。

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キリンと高血圧

早速ですが「血圧が高いといわれた」と当院を受診された方に、高血圧をどの様に考えるか説明する時にキリンの話をすることがよくあります。(「キリン!!」と聞いて、是非内容を知りたいと思われた方は受診・・・・・ではなくこのブログを最後まで読んで下さい。)

先日ネットを見ていると、キリンの血圧(循環器)について上手に説明してある文章を見付けたので引用したいと思います。

『キリンにとって、心臓から2メートル上にある脳に血液を送るためには強力な心臓と、他の哺乳類の2倍の血圧が必要。水を飲むために頭を下げ、気絶せずに元の姿勢に戻るためには特殊な安全弁が要る。』

血圧が高くても(キリンのように)それに対抗できる強い血管があれば問題ないわけです。つまり高血圧は血圧が高いから問題なのではなく、高い血圧で血管が障害されるから問題になるわけです。

記事によると、『キリンと、キリンに最も近く、首の短いオカピのゲノムを比較』をしているとのことでした。血管を強くする遺伝子が見つかれば、高血圧になっても痛まない血管を作れるかもと思ったのですが、副作用で首が長くなってしまうかもしれませんね。

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朝食を取らないと脳出血?

毎年節分の頃は寒くなると言いますが、今年もご多分に漏れず寒い日が続きますね。当院でも感冒症状で受診される方も多く、中にインフルエンザと診断される人も増えております。月並みですが、うがい・手洗いで予防してくださいね。

さて大阪大学と国立がんセンターのチームが「朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血の危険性が36%高まるとの論文」を発表しました。

この研究は「全国8県に住む45~74歳の男女8万2772人を1985~2010年まで追跡調査」したもので、朝食を週に0~2回しか食べないと答えた人は、毎日食べる人に比べ脳出血の発症率が36%も高かったとの事です。

これまで朝の欠食が、肥満や高血圧の原因となることは知られていましたが、さらに進んで脳出血の危険性も高まることが世界で初めて解ったとの事です。

血圧と脳出血の間には強い関連があるので、脳出血は血圧が上がったせいだと理解出来るのですが、朝食を取らないだけで「脳出血」とは!

生活習慣恐るべしですね。

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低ければ低いほど・・・・

今朝はメッキリ冷え込んで、今年一番の寒さだそうです。気温が10℃を切ると、急に寒くなったように感じますね。

さて、今回は低くなった気温の話ではなく、血圧の話です。

11月7日〜11日にオーランドで行われていた米国心臓学会(AHA)の学術集会で、以前から注目されていたSPRINT(スプリント)試験の結果が報告されました。

この試験は糖尿病等のない高血圧の人で、通常治療の最高血圧140mmHg未満を目指すグループと厳格治療の最高血圧120mmHg未満を目指すグループで心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞)・総死亡に差があるか、前向きランダマイズ試験です。(エントリー 9361症例、中央追跡期間 3.26年)前向きランダマイズ試験でエントリー数も多いことから、信頼性は高いと判断されます。

結果として、厳格治療グループの方が心血管イベントで25%・総死亡で27%低かったとのことです。男性・高齢者・合併症のない場合が低下傾向が強く出ているようです。

さらに最高血圧で分類してみると、より最高血圧が低下した群でイベントが低下しているとことが明らかとなりました。

イベントの内容は、論文化されてみないと解りませんが、これまでの研究を踏まえると脳卒中の低下が結果に大きく影響しているのではないかと予測しています。(どうなのでしょう?)

「普通に生活できるのであれば、血圧は低ければ低いほどよい。」のかもしれませんね。

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新しい高血圧ガイドライン(JSH2014)

新入学の時期だというのに、朝晩の冷え込みはなかなか緩まないですね。今朝も医院に来たら気温が低く、暖房を入れる羽目になりました・・・・・困ったものです。

さて最近、幾人かの患者さんに「血圧の基準が上がりましたね。」と診察中に言われる機会がありました。「JSH2014」の新しい高血圧ガイドラインについて、ニュース報道をご覧になって興味を持たれたのだと思います。ご自身の病気について興味を持っていただけることは、大変ありがたいことです。

ただ、「高血圧の基準値が緩和された」側面ばかりが強調され、「これまでの高血圧の基準が厳しすぎたので、私の高い血圧もそれ程気にしなくても良いよね。」と間違った認識が広がってしまうのが心配です。よくよくガイドラインを読んでみると、血圧の基準値が緩和されたのではなく、血圧の管理基準(降圧目標値)についての変更なのです。

この変更には、当院で「診察室での血圧は参考値」と以前から言って来た考えと同様の「診察室血圧」より「家庭血圧」の重視という考え方が反映されています。「診察室血圧」は報道されたように緩和されましたが、実は基本的な「家庭血圧」の基準値は135/85mmHg以下と全く変化なく、後期高齢者など「家庭血圧」の降圧目標値が緩和されたグループでは必ず「○○○/○○mmHg」(目安)となっています。

つまり、「動脈硬化などの個々人の病態により、降圧目標が大きく変わるため一律に基準値を定めることが出来ませんよ」という意味が「(目安)」に含まれているのです。

ガイドライン自体が本来的に「(目安)」なのですが、ひとたび基準が出来てしまうと一人歩きしだすのは世の常ですね。世の中のスピード感に翻弄され、物事の本質に立ち入らない風潮が混乱にさらなる拍車をかけているような気がします。(困ったものです。)

今回の新しい高血圧ガイドラインの本当の変更点は、「診察室血圧」の降圧目標値は緩和されたものの、「『家庭血圧』を記録しないと高血圧の管理は始まりません。」という内容なのです。(高血圧専門の先生方は厳しいですね。)

皆さんも、この機会に「家庭血圧」を記録してみませんか?

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健康と病気の狭間:未病(2)

高血圧などの生活習慣病で、薬の服用を勧めるとよく「何が悪かったのでしょうか?」と質問される事があります。本当に何気ない質問なのですが、何時もどの様にお答えしようか一瞬言葉に詰まった後に、「そもそも・・・・・・」と長い説明を始める事が常です。これまでのブログをお読みいただいている方は、どの様な話になるかお解りだと思いますので、簡単にまとめてみます。(詳しくお知りになりたい方は、過去のブログを参照ください。)

はじめに「そもそも、生活習慣病はいわゆる病気ではないのです。」前回のブログの内容と重なりますが、生活習慣病は動脈硬化という本当の病気になってしまう前の「未病」の状態なのです。「何かが悪かったわけではなく、悪くならないように予防(養生)をしている」のです。

次に「そもそも、生活習慣病は生きていくのに必要なシステムの困った面が出やすいだけなのです。」例えば海外のジーンズを買って裾上げをした場合、ビックリするぐらいの生地が切り取られていることに愕然とすることがあります。私の足の長さ(体質)がジーンズの裾の長さ(環境)にあっていないだけで、何かが悪かったわけではないのです。自分の体質に環境を合わせれば(ジーンズの場合は裾を上げれば)良いのです。生活習慣病で環境を体質に合わせる方法には、生活習慣の改善や「くすり」があることは以前のブログで書かせていただきました。

最後に「そもそも、生活習慣病の原因と言われる塩分・喫煙・カロリー過多・ストレス等は、多くの人で見た場合に『悪い』のであって、その人にとって『悪い』かどうかは判らないのです。」大変説明が難しいので、次回のブログで詳しく書きますね。

(長いので次回に続きます。)

 

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錯覚と生活習慣病(3):予防薬と治療薬

錯覚と生活習慣病のブログで説明しきれなかった部分の補足をします。

前回、生活習慣病の予防には、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面を押さえ込む事が大切であり、「くすり」を飲むから重症という分けではないと書きましたが、「よくわからない」とのご意見をいただきました。

確かに、一般に多くの病気で「重症」になれば「くすり」の量と数が増えていくと考えられています。これは直感的に理解しやすいですし、多くの場合には正しいのは明らかです。しかし、この直感が正しいのは、「くすり」の中でも「治療」を目的とした「治療のためのくすり」に関してなのです。

実は、「くすり」を使う目的には大きく分けて2つの方向性があるのです。一つ目は、先ほど書きました「治療」を目的とした「治療のためのくすり」としての使い方であり、もう一つは「予防」を目的とした「予防のためのくすり」としての使い方です。

たとえば、「心不全」のくすりで心臓の働き(心機能)が悪くなるのを予防するために「ベータ遮断薬」を使うのですが、心機能がすでに悪い人は「ベータ遮断薬」を十分に飲めないために、予防効果が十分に発揮されないことがあります。つまり、重症であればあるほど「予防のためのくすり」は少なくなることさえあるのです。

高血圧などの生活習慣病の「くすり」は心不全のくすりほど極端ではありませんが、「血管の老化(動脈硬化)」が「検査異常の程度」と「異常のあった期間」によって重症化していくことを考えれば、「予防のためのくすり」としての生活習慣病薬を早く飲むことによって、「動脈硬化」が重症になることを防ぐことが出来るのです。

生活習慣病の「くすり」を飲む必要のある方は、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面が出やすいだけであり、「動脈硬化」が重症であるから服薬が必要なわけではないのです。「くすり」を飲む飲まないにかかわらず「検査異常」を放置しておくと「血管の老化」は密かに進行していくのです。

 

定期的に病院に通院したり、薬を服用することは確かに大変ですが、10年後・20年後の健康を目指して「血管の老化(動脈硬化)」を予防しませんか?

 

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錯覚と生活習慣病(2)

前回に引き続き、「錯覚と生活習慣病」について書いていきますね。

では、サッカーのオフサイド判定で誤審の原因となる錯覚にどの様に対処していけばいいのでしょうか?審判の方々に、オフサイドの起きる状況を繰り返し再現して判定してもらい、スローモーションカメラで実際にオフサイドであったか確認・学習することで少しでも誤審を減らそうと努力しておられるそうです。

これは、人間の脳に組み込まれた「動いている物が実際より先に進んで認識する」錯覚を無くすことは出来ないので、反則に見える場合どの程度なら反則ではないかを学習して修正しようとしているのです。人により錯覚の程度は異なっているため、「1メートル以内と感じたらOK」などの統一的な基準作りは出来ないのです。

一方、生活習慣病の原因となるメカニズムについても同じ事が言えます。このメカニズムは「遺伝子」に関係していて、錯覚と同様に取り除くことが出来ません。ですから、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面を押さえ込む事が大切になります。

人によっては生活環境を見直すことで困った面がでなくなりますが、それだけで押さえ込めない場合は「くすり」の服用が必要になります。「くすり」の服用が必要な人は、生活習慣病の原因となるメカニズムの困った面が出やすいだけで、決して「(いわゆる)健康」な状態から遠くにいる訳ではないのです。ただ、生活習慣病が突き詰めると「血管の老化を進める病気」であることを考えると、服薬が必要であってもなくても、「検査異常」を放置すると本当に「健康」な状態から遠ざかってしまうのです。

高血圧などの生活習慣病の重症度は、くすりを飲む飲まないに関係ないく「検査異常の程度」と「異常のあった期間」が大きく関わることを知っていただくとが大切だと思います。

 

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「高血圧と言われました」

10月も終わりに近づき、めっきり寒くなってきました。今朝のニュースで国立循環器病研究センターの集計によると、冬の心筋梗塞発症は夏の1.6倍多いとの発表があったそうです。冬は血圧も上がりやすく、動脈硬化の進んだ血管の破綻が多いのではとの循環器医の予想が裏付けられたデータですね。

ところで検診などで「血圧が高いですね。」と言われた経験のある方も多いのではないでしょうか?そんなとき「血圧測定して血圧が高かったのだから自分は高血圧だ」と認識される方が案外多いようです。その裏側には「高血圧 = 血圧が上がる」との考えが広く、深く浸透している事が伺えます。

何回か前のブログに書きましたが、「高血圧を血圧が上がる病気」だと考えると測るたびに変動する血圧をどう理解するのか混乱してしまう原因になります。変動する血圧をどう考えるのか、受診された方によく質問されるのですが、次のようにお答えします。

 

「高血圧は血圧が上がる病気ではなく、血圧が下がらない病気だと理解してください。」

 

緊張した時や運動した時の一時的な血圧の上昇は、それほど大きな問題にならないと考えていいのです。血圧が上がって悪いのでしたら、スポーツ選手は全員が高血圧になってしまいます。(ハンマー投げややり投げなどの投擲競技の選手の赤らんだ必死の形相をスローモーションで見ると、瞬間的に200mmHgを超える血圧になっているのではないかと思えます。)

高血圧は血圧が上がるから「血液ドロドロ」(?)になるのではなく、安静にしていても血圧が下がらず、血管が安静(自己修復)に出来ずに血管の老化(動脈硬化)が進む病気なのです。水撒きに使うホースの元栓を開け放して圧力をかけ続けると、一部が圧力で引き延ばされてヘビのお腹のようになる姿を想像していただけるとわかりやすいかもしれません。

家庭血圧の記録で全部を書けなければ、一番低い血圧を書いてくださいとお願いしているのは「高血圧は血圧が下がらない病気」との考えからなのです。

 

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