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ハワイ往きの飛行機でドタバタ~雲の上でもリラックスさせてもらえない私~

5月の連休に、家内と2人で大好きなハワイ旅行へ行った。私のハワイ好きは、年季が入っていて29回目である。

関空からホノルルまでの退屈な長い飛行時間も、日頃の忙しさから解放されてグッスリ眠ることが出来るため、私にとってはハワイ旅行の楽しみなひと時である。

今回も機内食で貴重な睡眠時間をムダにしないよう、関空でしっかり食事を済ませてから乗り込んだ。

 
飛行機が離陸し、順調に水平飛行に移った。早速、いつものように背もたれを倒し、完全リラックスの状態でホノルルまで熟睡の大勢に入った。(これで準備万端、目が覚めるとホノルルだ!)

ところがである。1時間くらい飛んだところでスチュワーデス(CA)から、「お休み中すみませんが、食事の時間です。お肉にされますか、魚にされますか」と揺り起こされてしまった。(なんと気の利かない航空会社だろう。大抵の航空会社では「お目覚めになりましたら、デイナーの準備をいたしますので、お声掛けください」と書いたメッセージカードを前の座席にそっと張り付けて行くのに・・・。)

そこで、「I need not dinner nor Drink.」と断った。


これでようやく安心して眠れそうだとブランケットを被るや否や、ハプニングが起きた。

 
「重病人が発生しました。お客様の中でドクターはいらっしゃいませんか!」

 
機内放送が流れた。

大急ぎでアイマスクをおでこにズラして、例のCAの誘導でその乗客の席へ駆けつけてみると、35歳位の男性がバーフバックを持ってゲボゲボはいているではないか。

日本では、ノロ・ロタウイルス感染症がまだ流行っていたので、CAへマスクを持ってくるよう頼んだが、あいにく積んでないとのことだった。緊急時なのでおでこのアイマスクをマスクに代用し診察に臨んだ。


患者の隣席の奥さんに下痢の有無を問い合わせたところ、無いとのことだった。CAに体温計・聴診器・血圧計・懐中電灯を用意するように指示して、体温を測ったところ平熱だったので、まずノロ・ロタの可能性は除去された。また四肢の麻痺はなかったので脳梗塞もオミットされた。さらに胸部痛もなく聴診上異常はなかったので心筋梗塞・不整脈の可能性も否定された。最後に血圧を測ったところ、上が85位であった。さらに奥さんによると普段から血圧は低いほうで、乗ってからビールを一缶飲んだとのことだった。

これは低血圧がビールと上空の低気圧によって助長された一時的脳嘘血発作であると判断した。そうしているうち患者はだんだんと意識を失ってしまったので私の指示で床に寝かせ、ベルトをとき、下肢を挙げ、枕をはずさせて、かつ嘔吐に備え横向きで寝かせるよう指示をした。

先ほどのパーサーが不安げな表情で関空へ帰るべきか、そのままホノルルまで行くべきか恐る恐る問い合わせてきた。私は冷静に「Go to HONOLULU.  I guarantee his health」(ホノルルへ行ってください。私が診ています。)と即座に答え、更に詳しく,日本で流行っているノロ・ロタウイルス感染症ではなく、他の乗客へ伝染する可能性もないし、脳梗塞、心筋梗塞などの緊急性もないので、低血圧に対する保存的療法で十分であると説明した。パーサーはすぐに報告に行き、機長も私のアドバイスに納得して飛行機は引き返すことなくハワイに向かった。(この時、乗客みんながホノルル行きにホッとしたことだろう。もちろん一番ほっとしたのはこの私。患者さんが重篤でなくてよかった。)

 
そうこうしているうちに患者は徐々に意識を回復し、全身状態が落ち着いてきたので、私も自分の席へ戻った。ようやく、睡眠に入れたのである。(ヤレヤレ。)


ホノルルに付くと、例のCAはもちろん、飛行機のスタッフ全員が笑顔で私に握手を求めてきた。

 「Thank  you !  Thank  you ! 」

(まるで英雄扱いのように感謝された。)

 

毎度のことながら、家内とのハワイ珍道中はさらに続く・・。 

 <おまけ>

クレームの謝罪と、感謝の気持ちが込められたサービス券。

 

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