月別アーカイブ: 2014年12月

非定型うつ病について(その21)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】もう一つの「執着気質」ですが、これも「メランコリー親和型」とよく似ていて、仕事熱心、几帳面、集中力、こり性、正義感、責任感が強いのが特徴です。このような性格のため、頼まれたら断りきれず、仕事でも何でも自分一人で抱え込み、頑張り過ぎて心身が疲労し、やがてうつ病を発症します。うつ病患者の90%以上に、この執着気質がみられるといった報告もあります。この執着気質は、日本人の典型的な精神性ともいえるもので、日本のバブル期を支えてきた団塊世代の人を中心に多く見られます。ところが、時代の進歩とともに、社会構造の変化、価値観の多様性、リベラルな思想などが浸透してくるなかで、形式や秩序にとらわれない、自由で気ままな生き方を求め、仕事もほどほどにやり、自己中心的なタイプの世代が台頭してきました。21世紀になって、非定型うつ病の人が増えてきた背景には、こうした日本人の気質の変化があるものと考えられます。


非定型うつ病について(その20)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●性格
性格も、非定型うつ病の発病に深くかかわっている誘因のひとつといえます。例えば、同じストレスでもそれをどのように受け止めるかは、性格によるとされています。また性格には個人差があります。では、うつ病(定型うつ病)になりやすい性格(気質)はどんな性格か、また非定型うつ病になりやすい性格はどのような性格なのか考えてみたいと思います。
うつ病になりやすい病前性格としてよく知られているのが「メランコリー親和型」性格と「執着気質」で、どちらも定型うつ病の人に多く見られます。テレンバッハが唱えた「メランコリー親和型」の性格を言葉で表現すると、秩序を重んじ、規律に厳しく、几帳面、まじめ、勤勉、誠実、律儀、気配り、世話好き、他人への気配りといった内容の性格です。とにかく、ものごとや人間関係が秩序どおりになっていないと、気が済みません。秩序が変わったりすると敏感に反応し、変化には非常に弱い側面を持っています。ですから、定年、結婚、転職、出産、家族との死別などの変化をきっかけに、うつ病を発症する人が多いのです。また人への気配りでは、八方美人的に他人に気を使い過ぎ、自分の能力以上に仕事を引き受けて、ついには身動きがとれなくなってうつ病を発病するケースが多いようです。


非定型うつ病について(その19)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】例えば身体面であれば、自律神経系や免疫系、内分泌系に作用して体調を崩すことになります。精神面においては、イライラしたり不安になったり、気力が低下したり、またうつ状態を招くことにもなります。だからといって、ストレスが全くないのも、心身の緊張感がなくなって、逆によいことではありません。ある一定のストレスは大事ですが、問題はその強さや程度によると同時に、ストレスを受け止める側の抵抗力の強弱にもあります。あの人はストレスに「強い」また「弱い」という言い方をするのもそのためです。うつ病になるかならないかも、ストレスと人体との関係のなかで起きているものと考えられます。
そもそもストレスとは、「こころに受けた刺激によって起こる精神的な緊張」ということになります。正しくは、カナダのセリエ博士のストレス学説によると、刺激そのものをストレッサーといい、それによって引き起こされる体の緊張をストレス反応と分けて呼んでいます。ストレッサーにはいろいろあって、身体的なもの(空腹、痛み、熱など)、心理的なもの(怒り、悲しみなど)、物理的なもの(騒音、寒暖、細菌など)、社会的なもの(仕事、人間関係、経済問題など)さまざまです。つまり、このストレッサーの強弱と、それによって引き起こされるストレス(緊張)の強弱の力関係のなかで、うつ病を始めとする病気が発生しているものと思われます。一般的には、ストレッサーもストレスも含めて「ストレス」と呼んでいます。非定型うつ病の発症も、このストレスが何らかの要因の一つになっていることは避けられないと思います。


非定型うつ病について(その18)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】非定型うつ病のようなうつ病が、「なぜ現れるのか?」「原因は何なのか?」といった疑問が、本人も家族や周囲の人も一度は考えると思います。しかし残念ながら、現在では非定型うつ病の起こる原因そのものについては、未だに解明されていません。ただ、発病するきっかけや誘因については、これまでの研究で明らかになっているものがあります。発病に関与しているとして考えられるものは、ストレス、性格、遺伝、脳の神経伝達物質、家庭環境や教育、社会環境などが挙げられます。
●ストレス
ストレスは、うつ病発症の重要なリスク要因の一つとされています。ストレスはこころにも体にも影響して、うつ病に限らずさまざまな病気を引き起こすリスクファクターであることは、これまでの研究や臨床においても明らかにされています。日頃、私たちはストレスに晒されながら生活しており、普通であればそのストレスもこころの働きでうまく処理されています。ところが、このストレスが強すぎたり、また蓄積されたりすると、私たちの生体である心身はさまざまな悪影響を受けることになります。


非定型うつ病について(その17)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●怒り発作
非定型うつ病の拒絶過敏性が、爆発的な怒りとなって現れた症状が、この「怒り発作」です。いわゆる「キレる」状態になって、大声で叫んだり、体を震わせて非難したり、手当たりしだいに物を壊したりして、手が付けられなくなります。この発作が起きたとき、家族や周囲の人は、暴れている患者を言動で制したりすると、ますます刺激を与えることになります。理不尽なことを言ったことに対し、理屈で反論したりすると、ますます興奮してきますので、決して対等に渡り合わないことが重要です。アドバイスするにしても、発作が治まり、気持ちが落ち着いてきたころを見計らって、客観的な意見を述べる程度にします。やさしく耳を傾けることが大事です。
患者様の多くは、怒り発作が治まると、たいていは「悪いことをした」「すまないことをした」と、激しい自己嫌悪に陥り、うつ状態が悪化することになります。キレたのは、本来の自分ではないとも感じています。こうした怒り発作は、全ての患者様に起こるわけではありません。怒り発作がときどき起こるようでしたら、専門医に相談して、感情調整薬や鎮静薬を処方してもらう方法もあります。


非定型うつ病について(その16)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】《発作への対処行動》
落ち込むだけなら、まだ対処行動は少ないのですが、不安や焦燥が激しい人は、それを紛らわすための対処行動も激しさを増します。過剰な喫煙や飲酒、むちゃ食い、器物を壊す、リストカットやタバコの火を自分に押し当てる自傷行為、異性への刹那的な接近、また薬物の大量摂取、自殺企図などです。このように、激しい情動が前面にでると、すさまじいものになります。周囲の人は、対処行動を責めるのでなく、病気からくる苦しみを理解して患者様を支えることが、病状悪化を防ぐことにもなります。


非定型うつ病について(その15)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●夕方にかけて調子が悪くなる(不安・抑うつ発作)
従来型の定型うつ病の憂うつ感は、朝強く現れて夕方には和らいできますが、非定型うつ病では、反対に夕方から夜にかけて、それも不意に不安や抑うつ発作が現れるのが特徴です。発作が起きると、精神状態ががらりと変わって別人のような行動をとります。症状はいろいろありますが、典型的なものは以下のようなものです。
《身体症状》
まず、理由もなく涙をボロボロと流します。落涙症状です。
《精神症状》
落涙症状についで、精神症状が現れます。まず自己憐憫(れんびん)症状として、「誰も私を理解してくれない」「なぜ私だけがこんな病気になったのか」「私は世界一不幸ものだ」「私だけ取り残された」という自分を哀れむ感情に襲われます。次に、「私に比べたら、あの人はすごく恵まれている」といった嫉妬や羨望の感情に責められます。また、将来を悲観して、過剰に絶望したり強い焦燥感に襲われたりすることもあります。


非定型うつ病について(その14)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】こうした症状は、当然周りの人達との間にトラブルを引き起こし、家族、上司、同僚、友人、恋人などとの人間関係にヒビが入って、社会生活に支障がでてきます。結果、職場や学校を休んで引きこもり、友達も恋人もつくらなくなります。また攻撃に転じると、相手とけんかや口論をしたりして、絶交状態になったりします。
この拒絶過敏性による症状は、「境界性パーソナリティ障害」の症状とよく似ているため、臨床においてはしばしば診断に迷うところです。いずれにしても、治療を進めていくなかで、非定型うつ病なのかパーソナリティ障害なのかを、十分に見極める必要があります。中には、双方が合併しているケースもあるので、慎重に診断をすすめることになります。


非定型うつ病について(その13)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】拒絶過敏性とは、他人からの侮辱、軽視、批判に対して極度に過敏になる症状ですが、そのもとにあるものは対人恐怖(自分の外見や能力を低く見られることへの恐怖)や、高いプライド(他人の目を気にする自己愛性)が存在しているものと考えられます。しかし、この侮辱、軽視、批判といっても、これはあくまでも本人がそのように受け取っているだけで、実際はごく些細なできごとが多いのです。この些細なこととはいえ、本人にすれば自分を拒否し批判したとしてとらえ、ときには被害妄想的に受け止めて、病的に反応するのです。


非定型うつ病について(その12)

皆様、こんにちは。心療内科千里中央駅直結・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●対人関係に過敏になる(拒絶過敏性)
普通誰でも、人から批判されたり拒絶されたりすると、多少なりともこころに傷がついて落ち込むことがあります。しかし、非定型うつ病の人は、その傷のつきかたが強く激しく極端にでるのが特徴です。たとえば、周囲の人のちょっとしたひと言で、激しく落ち込んで何日も寝込んだり、逆に相手に対して攻撃的になったりします。また、褒めたつもりで言った言葉を、そのまま受け取らず、皮肉を言われたと思い込んで、ひどく落ち込んだりします。また、会社で上司から、自分が作った企画書に対して修正が出されると、能力を全否定されたと思い、腹をたてて逆ギレしたり、翌日から会社を休んだりします。このように、他人の言動に対して、過敏に反応し、ひどく落ち込んだり激怒したり、攻撃的になったりして、人間関係や社会生活に影響がでるような症状を「拒絶過敏性」といいます。