皆様、こんにちは。「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】■三環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬は1957年に開発され、薬の構造式に3つの環があることからこの名が付けられました。この三環系抗うつ薬は、中枢神経でセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害して、うつ症状を改善する働きがあります。いくつかある抗うつ薬の中で、もっとも古い薬で「イミプラミン」がありますが、現在、この薬より強い抗うつ作用をもつ抗うつ薬は、日本では「アナフラニール」しかありません。非定型うつ病においても、MAOIに比べれば劣りますが、日本で使用できる抗うつ薬の中では、もっとも高い効果を示す薬です。非定型うつ病の症状である眠気や疲労を、改善する効果をもっています。比較的安全で、手軽に使える薬です。副作用としては、口の渇き、かすみ目、便秘、頻脈、記憶力の低下、手の震え、立ちくらみ、吐き気、頭痛、性機能障害などがあります。大量に服用すると、心機能を低下させる恐れがあります。
三環系抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンの働きを高めますが、同時にアセチルコリンの働きを抑制するために、口の渇きや動悸、便秘、排尿障害などの副作用があります。三環系抗うつ薬を服用して、効果が出るまで1~2週間はかかりますが、逆に副作用は服用してすぐに出るのが欠点です。しかし、うつ病の改善率が60~70%と高いことから、現在も治療薬として用いられているのです。また三環系抗うつ薬は、うつ病だけでなく、パニック発作を抑える効果にも優れています。
以上、心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
月別アーカイブ: 2015年1月
非定型うつ病について(その40)
皆様、こんにちは。「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●抗うつ薬
現在、日本で使用が認められている抗うつ薬には、「三環系抗うつ薬」「SSRI」「SNRI」「NaSSA」「二環系抗うつ薬(トラゾドン)」「四環系抗うつ薬」などがあります。
【薬品名(商品名)】
<三環系抗うつ薬>
イミプラミン(トフラニール) クロミプラミン(アナフラニール) アミトリプチリン(トリプタノール)
ノルトリプチリン(ノリトレン) アモキサピン(アモキサン)
<SSRI>
フルボキサミン(ルボックス、デプロメール) パロキセチン(パキシル) セルトラリン(ジェイゾロフト)
エスシタロプラム(レクサプロ)
<SNRI>
ミルナシプラン(トレドミン) デュロキセチン(サインバルタ)
<NaSSA>
ミルタザピン(レメロン、リフレックス)
以上、心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
非定型うつ病について(その39)
皆様、こんにちは。「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】〖薬物治療〗
非定型うつ病は、脳内の神経伝達物質の働きが低下したり、アンバランスになっていることが原因しているものと考えられるため、この神経伝達物質の変調を薬によって調整したり、改善していくというのが薬物療法の狙いです。基本となる薬物は「抗うつ薬」が主に使われますが、このほか「抗不安薬」「抗精神病薬」「気分安定薬」なども処方されます。もともと、非定型うつ病は、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)が劇的に効くうつ病のグループがあることから、非定型うつ病の存在が知られるきっかけとなりました。このMAOIは、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどのモノアミン系神経伝達物質の代謝を阻害するために、うつ状態を改善し、非定型うつ病にもっとも効果がある薬とされていますが、残念ながら現在日本ではこのMAOIの使用は認められていません。理由は、MAOIは、モノアミンの前駆物質であるチラミンを含む食品(例えばチョコレート、ワイン、チーズ、ソーセージなど)と一緒に摂ると、高血圧を引き起こす危険性があるほか、肝障害も起こしやすいといわれています。また、三環系抗うつ薬やSSRIとの併用も禁じられています。
以上、心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
非定型うつ病について(その38)
皆様、こんにちは。「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】非定型うつ病の治療は、基本的には「薬物療法」と「精神療法」で行われます。精神疾患の薬と聞くと、中には体や脳に悪影響を与えるのではないか、一生飲み続けるのではないかと心配する人もいますが、心配することはありません。現在の薬物療法は、副作用も少なく、大きな効果も期待できますし、治れば薬を飲み続ける必要はありません。ただし、症状は治っても、再発を防ぐために、ある一定期間は服用を続ける場合はあります。また、従来型の定型うつ病に比べて、非定型うつ病の場合は、抗うつ薬が効きにくいという特徴がありますので、症状の強さや種類によっては、薬物療法と精神療法を併用したり、使い分けたりします。患者様によっては、薬物療法よりも精神療法を用いた方が治療効果をあげる場合もあります。
治療を始めるとき、一般的には、症状が強く出ている急性期には薬物療法を中心に行い、ある程度症状が落ち着いてきたころから、精神療法を併用して、精神療法の比重を高めていきます。あくまでも、患者様の症状や状態に合わせて、薬物療法と精神療法のよいところを活用していくと、より治療効果を高めることができます。この薬物療法と精神療法に加えて大事なことは、生活指導です。とかく非定型うつ病の人は生活のリズムが乱れている場合が多いので、それを整えてあげることも、治療効果をあげるうえで大事なポイントになります。
以上、心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。
心療内科はどんな科?(その10)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の10回目です。
【続き→】ところで心療内科と同じく精神科と混同されやすい科に神経内科があります。神経内科は脳や脊髄、末梢神経、筋を内科的に診療する科なのですが、かつて脳の異常で起こる神経疾患と精神疾患との境界が今よりももっと曖昧だった頃に、内科医と精神科医が一緒になって神経学と精神医学を研究する精神神経学会という学術団体を創り上げた経緯があります。その後内科医たちが独立して神経学会を創立したのですが、精神医学の学会は精神神経学会のままなので、精神科医は精神科、精神神経科、神経科などと多くの名前を名乗ることになったのです。一方神経内科では、精神科との混同を避けるためもしくは脳神経外科と同様の疾患を内科的に治療する科であることを明確にするために、脳神経内科と自称しているところもあります。とはいってもいまだに境界線がはっきりしない領域もあって、例えば認知症やてんかんなどは病院によって神経内科が診ているところもあれば精神科が診ているところもあります。
心療内科はどんな科?(その9)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の9回目です。
【続き→】〈標榜科としての心療内科〉
心療内科の看板を掲げる病院や診療所は、1996年に厚生労働省が標榜科(広告してよい科名)として認めてからいっぺんに増えました。しかしそのほとんどは精神科を専門とする医師によるもので、本来の内科疾患を専門とする心療内科はごくわずかしかないのが実態でした。そのため本来あるべき姿がどうであれ、心療内科が精神科と同じもしくは精神科にいくほど重症ではない精神疾患を診るところといった勘違いの方が実情を正しく言い表すというややこしい状況が生まれたのでした。これは精神疾患に対する根強い誤解と偏見に起因するところが大きく、精神科が偏った視線をかわすために神経科や心療内科と名乗らざるを得ない状況が、結果として大きな混乱を引き起こすことになったといえるでしょう。
心療内科はどんな科?(その8)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の8回目です。
【続き→】いよいよ心療内科の説明をさせていただきます。心療内科は文字通り内科の一分野です。ただ、一般の内科が消化器や循環器といった臓器別で分類されているのに対して、心療内科は疾患の心身症傾向による分類ということができます。つまり心療内科は、心身症の診療を行う科ということになります。もう少し正確にいうと、体の病気を抱えた人を、体だけでなく心理社会的な面も含めその人が経験するあらゆることを考慮しながら治療を行うということです。そういう意味では心療内科が行う医療は、「全人的な医療」とも表現できるでしょう。
ここで心療内科は心身症のみを診るべきかという議論があります。Yesの立場から言えば、心身症としてとらえなくても治療できる体の病気は内科や小児科、婦人科など他の診療科が、精神疾患なら精神科が診ればよいので心療内科は心身症を診る科だという意見があります。一方でNoの立場からは、精神疾患でもストレスに関連して発症するものもあるのだからそういったものは心理社会的な要因を扱える心療内科が診るべきだとか、心療内科を実際に受診する患者様の多くは精神疾患だから精神疾患の診療も行うべきだという意見もあります。これは個々の医師の考えやどこで診療を行うかによっても変わってくる話でしょう。たとえば町のクリニックでは内科医が虫刺されの薬を処方することもあるでしょうし外科医が風邪薬を出すこともあるでしょう。逆に総合病院や大学病院ではより専門的な治療を必要とする患者様を対象としているので、各科の専門領域に限定した診療を行い専門外の疾患は他科に紹介することが多いでしょう。また精神疾患を診ていれば精神疾患の患者様が増え、心身症を診ていれば心身症の患者様が増えるのはあたり前のことですから、受診する人が多いので精神疾患を診るべきだというのは本末転倒のようにも思われます。
心療内科はどんな科?(その7)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の7回目です。
【続き→】よく誤解されますが、心身症というのは病名ではありません。同じ病名の人たちを比べた際の傾向(病態)を表す言葉であって、病名の後ろに「(心身症)」とつけ加える形で使用する用語なのです。といってもある病気が心身症とそうでないものに厳密に分けられるものではなく、ひとつの病気のなかでも心身症傾向の強いものから弱いものまで連続的にあって、その傾向が弱い場合は身体に対する治療だけで良くなるし、心身症傾向の強いものには心理社会面も考慮した治療が必要となるのです。ということはこれまで軽い心身症傾向に位置していた人たちが、身体面への治療が発展したためにもはや心身症として治療しなくても良くなるようになるということも起こるわけです。実際、胃潰瘍(心身症)や気管支喘息(心身症)などは治療薬がめざましく進歩したため、以前に比べると心身症として治療しなければならない症例はぐんと減っています。
心療内科はどんな科?(その6)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の6回目です。
【続き→】ところで心身医学が対象とする疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。アレキサンダーは「7つの聖なる疾患」として、本態性高血圧、気管支喘息、消化性潰瘍、甲状腺機能亢進症、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、神経性皮膚炎をあげました。これらはいずれも心理社会的なものの影響を受けやすい疾患なのです。ここで注意して欲しいのは、心理社会的なものが”原因”ととらえているわけではないということです。「原因→結果」という直線的な関係ではなく、いろいろな”要因”が互いに影響し合って身体の異常を引き起こしていて、そのひとつに心理社会的なものがあるということなのです。ですからその影響の大きさによって同じ病名の患者様でも、ほとんど体の異常とだけ考えて治療できる人もいれば、心理社会的なものをかなり考慮しなければならない人もいるわけです。そして体の病気のなかでも心理社会的な因子の影響がかなり強い傾向を「心身症」と呼びます。
心療内科はどんな科?(その5)
皆様、こんにちは。心療内科(千里中央駅・千里ニュータウン・千里セルシー3階)「杉浦こころのクリニック」の杉浦です。今回は「心療内科はどんな科?」の5回目です。
【続き→】エンゲルは20世紀後半に当時主流であった特定病因論にもとづく医学である「生物医学的モデル」の限界を指摘し、疾患を理解するには病気を持った個人の解剖生理学的異常だけでなく、心理や社会といった多面的な視点からの理解が必要であることを主張し、この新しい医学モデルを「生物心理社会学的モデル」という名前で呼びました。たとえば風邪という疾患を生物医学的モデルでとらえるとウイルスによって引き起こされた上気道の炎症となりますが、生物心理社会学的モデルからみるとそれに加えて患者様の手洗いやうがいの習慣、疲労や睡眠不足、大気の乾燥や患者様との接触などといったいろいろなものの関与も含めて理解するということになります。こういった医学モデルは心身医学において中核をなす概念と考えられています。