月別アーカイブ: 2015年10月

心療内科と心身症(その10)

皆様、こんばんは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の10回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖心療内科は心身医学を実践する診療科です。〗
心身医学というのは…
●病気を身体だけでなく、心理面、社会面をも含めて、
●それらを分けずに、
●それらの関係性を評価しながら、
●総合的・統合的にみていこうとする医学
ということができます。
分かりやすく言えば、
「こころとからだ、そして、その人をとりまく環境等も考慮して、それぞれの要素を分けずに、統合的によくしていこうとする医学」
と言えるでしょう。
心療内科が主な対象とするのは心身症です。〗
心身症の定義は次のようになっています。
(日本心身医学会,1991)
「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的、ないし機能的障害が認められる病態をいう。
ただし、神経症うつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する。」
まず、「器質的障害」というのは胃炎や気管支炎などの「炎症」や癌をはじめとする「腫瘍」など、物理的(物質的)に異常が生じる障害のことです。これはレントゲンやカメラなどの検査でとらえられることがほとんどです。
もう一つの「機能的障害」というのは、器質的な異常がなく、従ってレントゲンやカメラなどの検査をしても異常が見つからないけど、その動きや働き(機能)が障害されているものを言います。
例えば消化管でいうと、癌や炎症はないけど腸の動きに異常があり、その為に腹痛や便秘・下痢などの症状が出る…“過敏性腸症候群”などがこれにあたります。
このいずれにも心理・社会的因子が関与することがありますが、特に二つ目の「機能的障害」に関与することが多いです。(これらの関係を「心身相関」と言います。)器質的・機能的障害に心理・社会的因子が密接に関与している病態を心身症として扱うことになります。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身症(その9)

皆様、こんばんは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の9回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】心理・社会的要因で生じたり、悪化するような病は消化器や、循環器、呼吸器、内分泌系、神経系、皮膚、その他身体のいろいろな臓器に生じます。そのため、患者様は通常、これらを身体症状として自覚する一方で、不安抑うつ緊張を訴えることは少なく、それぞれの症状に応じた診療科を訪れることが多いようです。しかしながら、身体の検査では異常がはっきりしなかったり、各科の専門的治療に対する反応が芳しくなく、背景にある心理・社会的な要因の関与が強く疑われる場合などに、最終的に私たち心療内科・精神科に紹介となり、受診されることが多いようです。心療内科には一般にこのような形での受診が比較的よくみられます。身体の症状に対しては、それぞれの専門家の診断と治療は大切であり、身体疾患としての自覚がある場合はまずはそれぞれの専門診療科を受診されてから、心療内科・精神科を受診されることをお勧めします。
心療内科では、身体に現れる症状の治療とともに、必要に応じて、ストレスへの対処について患者様とともに考えていきます。例えば、患者様がそれまで習慣としてきた「過剰なストレス状況への適応」を「日常生活への賢明な適応」に変えていく方法を学ぶ必要がある場合、患者様が自分を犠牲にしてきた適応のあり方の意味を理解するよう促し、そのことで行動を変えていけるようにし、より健康的な適応の仕方に導いていくことを目指します。もちろん、このようなことは一朝一夕に得られるものではありませんが、時間をかけて少しずつ進めていくことでその効果が期待されます。また、心身症の患者様の中には、対人関係において一定のストレスを反復する一方で、自分自身ではそのストレスに気づかずにいることがあります。自分自身が気づいていない一定の対人パターンを知るなど、ストレスを生じるような対人関係のあり方を変えて、新しいより健康的な習慣を身につけていくことを促していく、そのような場合もあると思います。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


心療内科と心身症(その8)

皆様、こんばんは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の8回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】心療内科とは、身体と「こころ」を分けずに医療を行うところです。身体と「こころ」はお互いに密接に関係しています。精神の状態が身体に影響を与えることは理解しやすいのではないかと思います。身体の病の多くは、こころの状態、すなわち、精神面に配慮する必要があります。その中でも、患者様自身が持続的に不安や緊張を強く感じているような心理状態や、労働環境が苛酷であるとか、家庭環境に大きな問題を抱えているような困難な状況による心身へのストレスが身体の病を引き起こしたり、その病状に大きく関わる一群があります。このような、心理・社会的な要因が身体の器質的、機能的異常を引き起こしたり、経過に大きく影響を及ぼすような疾患を「心身症」と呼び、心療内科では、この心身症を中心に治療を行っています。
心療内科は、ストレスが強くかかるような状況への行き過ぎた適応のために自分自身の身体の疲れを無視してしまい、その結果として身体に負担を与え、身体に病を生じさせたり、その経過に影響を及ぼすような状況等に対して対応しています。例えば、不安な気持ちや強い緊張感の持続するような状態におなかの調子が敏感に反応することを経験したことがある方も多いと思います。これはストレス不安に対する、胃や腸などの消化器系の反応ですが、腸管神経系が感情状態にきわめて敏感に反応しているもので、専門的には脳による中枢制御機構などを通じて生じるとされています。過敏性腸症候群という病気があり、これは、腹痛や腹部不快感を伴う便通異常(下痢・便秘)が慢性的な経過をたどるものですが、これらの症状はしばしばストレスにより悪化します。このような状態を心療内科で取り扱っています。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。