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リワーク(復職)支援(その37)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の37回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖メンタルヘルス不調者の復職リワーク)支援サービス〗
以前、某大手新聞に、メンタルヘルス不調者復職支援リワーク支援)サービスについての記事が掲載されていました。
『人材派遣大手のアデコ(東京・芝)はうつ病などで休職する社員の復職支援社員のリワーク支援)を始める。精神科医・心療内科医と連携し、うつ病休職者復職に向けてリワークに向けて)の復職支援プログラムリワークプログラム)を提供するほか、複数の医師(精神科医心療内科医など)が復職の時期リワークの時期)を慎重に見極める体制にする。メンタルヘルス不調で症状が悪化した後、職場への復職が遅れるリワークが遅れる)社員が増えていることに対応する。』
多くの会社がメンタルヘルス不調者の問題で悩みを抱えています。メンタルヘルス不調者がいる会社はどのぐらいあるのか?今、どのようなことが問題となっているのでしょうか?
2010年(平成22年)に(独)労働政策研究・研修機構が行った調査をご紹介しましょう。
メンタルヘルスの問題を抱えている社員がいる事業所はどのぐらいあるかについては
全体          56.7%
30人未満       52.3%
30~49人       49.7%
50~99人       52.1%
100~299人     56.4%
300~999人     52.7%
1,000人以上     72.6%
従業員1,000人以上の企業では、ほとんどの事業所にメンタルヘルス不調社員がいることになります。注目すべきなのは、従業員100人未満の事業所でも52.1%、従業員30人未満でも52.3%と過半数を超えていることです。「メンタルヘルス不調者は50人に1人いる。いないとしたら気が付いていないだけ」と良くいわれますが、頷ける数字です。31.7%の事業所で、3年前より増加しているとしています。
◇過去1年間にメンタルヘルス上の理由により連続1カ月以上休職、もしくは退職した人がいたかどうかについては、いた事業所が25.8%となっています。業種別では、情報通信業が55.8%と突出しています。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その36)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の36回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】職場リハビリ(試み出勤)を実施する場合の注意事項です。
『(1)実施にあたっての本人・家族への説明
職場リハビリテーション(試み出勤)は療養中に行うため、下記の点についてあらかじめ本人・家族に説明し、了解のもとに行う必要があります。
職場復帰リワーク)のための職場リハビリテーション(試み出勤)は主治医の了解のもとに、本人の意思に基づき実施するものであること。
②職場リハビリテーション(試み出勤)は、休暇・休職中に行うものであることから正式な勤務ではないので通勤手当、公務災害などの対象にならないこと。
メンタルヘルスに不調など変化があった際は、主治医の指示により対処すること及び職場においては常に所属長の監督下にあること。』
ここでも、職場リハビリは、「療養中」に、「主治医の了解」の基に、「本人の意思」により行うものであり、「通勤手当」は支払われず、「公務災害」の対象にならないこと。そして、職場では「所属長の監督下」にあることが明確にされています。
職場リハビリの期間についてです。例として、1ヵ月の復職支援プログラムリワークプログラム)が示されていますが、ケースによってはこれより長くなる例もあるでしょう。また、実際に復職支援プログラムを実施リワークプログラムを実施)していく中で、見直しが必要になる場合があることが想定されています。
『<職場リハビリテーション(試み出勤)の一例>
(1ヵ月後復職を目指すリワークを目指す)場合)
■第1段階
[実施内容・目標] 職場への顔出し(通勤に慣れる)
[時間帯] 8:30~10:00
[期間] 第1週目(1~2日間)
■第2段階
[実施内容・目標] 職場環境・人間関係に慣れる(PCを操作する、回覧文書に目を通す等)
[時間帯] 8:30~12:00
[期間] 第1週目(3~4日間)
■第3段階
[実施内容・目標] 仕事に慣れる(自分の職務及び担当内の職務を理解し、遂行できる)
[時間帯] 8:30~15:00
[期間] 第2週目(3~5日間)
■第4段階
[実施内容・目標] 通常の勤務生活に慣れる(フルタイム2週間)
[時間帯] 8:30~17:15
[期間] 第3週目、第4週目
○留意点
ア 実施内容・目標、時間帯、時間の延長の仕方、期間の設定については個々人の状況で異なります。
イ 期間を通じて、メンタルヘルス疾患が安定していることが大切です。
ウ 第4段階を経てから、復職面接リワーク面接)(メンタルヘルス相談)を実施します。
エ 職員健康審査会で実施結果及び復職面接時リワーク面接時)の医師(精神科医・心療内科医)の意見を参考にします。
オ 「復職可リワーク可)」の措置決定がされた後でも、復職日リワーク日)までは職場リハビリテーション(試み出勤)を継続し、生活リズムを崩さないようにします。』
会社で、このような「試し出勤(職場リハビリ)」を実施するためには、就業規則を初めとする諸規定の整備が欠かせません。また、療養中に実施するのですから、主治医の了解を得るとともに、本人に十分説明して同意を得ておかないと、メンタルヘルス疾患が再発・悪化した場合に、会社の安全配慮義務が問われかねません。また、賃金などの処遇についても、事前の了解を得ておかないと思わぬトラブルを招くこともあり得ます。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その35)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の35回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖公務員の職場リハビリ(試し出勤)は、主治医の了解と本人の同意が必要〗
以前(2016年6月6日~6月7日)に、公務員の「試し出勤制度」(「職場リハビリ」とも呼ばれます。)はどのようになっているのかについてご紹介しました。
では、実際に、この「職場リハビリ」制度はどのように行われているのでしょうか。某都道府県職員組合のWebに、某都道府県職員を対象とした「職場リハビリ(試み出勤)」についての資料が公開されています。内容をかいつまんでご紹介しましょう。
先ず、職場リハビリ(試み出勤)を行う目的です。
『1 職場リハビリテーション(試み出勤)とは
メンタルヘルス疾患等により療養休暇を取得した職員が職場復帰リワーク)した場合、担当業務をすぐに滞りなく遂行することが困難である場合が少なくありません。そのため、職場復帰前リワーク前)に医学的治療と併せて、一定期間適切な復職支援リワーク支援)を行いながら、勤務への適応を促すことが必要になります。
これを職場リハビリテーション(試み出勤)といい、この期間に職員本人は、メンタルヘルス不調から回復して勤務するためにはどんな注意や努力が必要か、また、それを継続するためにはどんなことが必要かなどを具体的に体験していきます。
また、職場リハビリテーション(試み出勤)には、復職者リワーク者)本人の適応訓練のほか、受け入れる側の準備として、実施可能な業務上の配慮(業務内容や業務量の変更等)の検討や本人の復職支援体制リワーク支援体制)の構築など職場の環境調整も含まれます。』
ここでは、「メンタルヘルス不調から回復して勤務するためには(中略)具体的に体験していきます。」とされています。仕事ではなく、職場での体験が目的であることが明確にされています。また、職場復帰を受入れるリワークを受入れる)ための準備であることが示されています。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その34)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の34回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】「心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援リワーク支援)の手引き」(以下、「復職ガイドラインリワークガイドライン)」)には、就業規則の別則として定める「メンタルヘルス疾病による職員の休業及び復職リワーク)に関する規程(例)」が掲載されています。この中に、復職前リワーク前)に「有給」で行う「試し出勤」制度の規定(例)が掲載されています。
『(試し出勤等)
第9条 ○○課長は、第7条第1項の規定による復職の意向を申し出たリワークの意向を申し出た)従業員に対し、通勤訓練を行い、その結果を報告することを勧奨することができる。なお、○○課長は産業医を通して、主治医に運転の可否について聴取し、主治医が自動車の運転を危険であるとした場合は自動車による通勤訓練(及び職場復帰後リワーク後)の自動車通勤)は認めない。
2 前項の通勤訓練は、試し出勤ではない。
3 ○○部長は、必要と認める場合には、第6条の規定により職場復帰の手続きリワークの手続き)を開始する従業員に対し、○○日の範囲内で試し出勤を命じることができる。
4 試し出勤は、原則として元の職場で行うものとし、産業医が必要と認める範囲において、労働時間の短縮、仕事上の配慮など、本来の業務からの軽減を行うことができる。
5 試し出勤中は有給とし、交通費を支払う。』
この規定は、3にある通り「復職前」の「休職中」「リワーク前」の「休職中」)に行うもので、5にある通り「有給」つまり、賃金を支払うことになっています。3には「試し出勤を命じる」となっていますので、これは業務命令以外の何物でもありません。会社の指揮命令下にある労働時間となり、賃金を支払う必要があることになります。
休職は、労働契約関係を維持しながら労働義務を免除する制度であり、解雇を猶予する制度と考えられています。休職そのものが会社が命じたものですから、休職中の社員に「試し勤務」を命じることもできることになります。但し、「第7条第1項の規定による復職の意向リワークの意向)」には主治医による復職可リワーク可)の診断書(意見書)が必要です。4にあるように、産業医が労働時間の短縮をすべきという意見があればそれに従うべきですし、会社の安全配慮義務を考えるならば、いきなりフルタイムの「試し出勤」を課すことはできれば避けたいところです。もちろん、実施に当たっては、このような規定を整備しておく必要があることはいうまでもありません。
さて、この復職前(休職中)リワーク前(休職中))に行う「有給」の試し勤務には何か問題はないのでしょうか。良く指摘されるのは収入の問題です。短時間勤務の場合、一般的には時間比例で賃金が支払われます。賃金が支払われたら、傷病手当金は受給できません。ですから、短時間勤務の「試し出勤」をしたら、賃金が傷病手当金(おおよそ、休業前の賃金の3分の2相当)より少ないということがあり得ます。「試し勤務」を命じられたら、収入が減ってしまうというわけです。
実務では、このような「試し出勤」制度を設ける場合には、限度日数を設けるとともに、短時間勤務の勤務時間や日数、その間の処遇などについて、予め労働者とよく話し合って、(できるだけ書面で)同意を得ておくべきでしょう。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その33)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の33回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖復職リワーク)前(休職中)に行う「試し出勤」制度は、有給で行う場合もある〗
職場復帰支援リワーク支援)のために行う「試し出勤」制度は、復職前リワーク前)(休職中)に、無給で行うことが原則であるということを、以前このブログでご紹介しました。
「試し出勤」制度を休職中に行うに当たって、最も注意しなければならないのは、会社が業務に関して指示をしてはならないということです。使用者の指揮命令下にあれば、それは労働時間であり、賃金を支払わなければなりません。
労働したのであれば、「メンタルヘルス疾病によって就労できない」という条件を満たすことができなくなるので、傷病手当金が受給できなくなります。では、例えば午前中だけ短時間勤務して、午後は休む場合はどうでしょうか。この場合、短時間勤務に見合う賃金を受け取ったのであれば、傷病手当金は受給できません。つまり、賃金と傷病手当金は両立しないのです。
復職可否リワーク可否)の判断は難しいものです。主治医と産業医の意見が異なることも往々にして生じます。産業保健スタッフと人事労務スタッフの意見が対立することもあります。産業保健スタッフは、できるだけ職務の負担を軽くすることによって、職場復帰支援をしたいリワーク支援をしたい)と考えますが、人事労務スタッフは、復職後リワーク後)における職場の上司や同僚の負担を軽くしたいことと、再休職という事になると、人の手当てを含めた人事上の問題がまた降りかかってくるので、職場復帰の判断リワークの判断)は厳しい見方になります。
そこで、会社としては、労働者が実際の業務を行うことができるかどうかを見てから決めたいと考えるのも無理からぬところです。実際の業務を行わない「試し出勤」だけでは、心もとない。実際に業務(仕事)をやらせてみれば分かるじゃないか、となります。この場合は、実際の業務(仕事)を行わせるのですから、賃金を支払わなければなりません。つまり、復職前(休職中)リワーク前(休職中))に、「試し出勤」を「有給」で行うことはできるのかということです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その32)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の32回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】『4 実施場所
原則として、当該職員の元の職場とする。ただし、元の職場にメンタルヘルス疾病の発症の要因があると考えられる場合又は元の職場での実施が困難な場合は、「試し出勤」先を元の職場と異なる職場に選定することができることとする。』
『5 実施期間
原則1月程度とするが、実施状況及び当該職員の意向を踏まえ、適当と判断される場合には、実施期間を短縮し、又は延長できることとする。ただし、延長は概ね2週間までとする。』
地方自治体などでは、この実施要綱に拘束されませんので、原則2ヵ月間、必要と認められる場合は最長3ヵ月までとする例もあります。
『6 実施内容
健康管理者が職員本人との話合いを行い、健康管理医(精神科医・心療内科医)、主治医及び受入先職場の管理監督者の意見も踏まえて決定することとする。
「試し出勤」が、職場復帰前リワーク前)に職場復帰リワーク)に向け、実務に関連した作業等(職務としては位置付けられず、あくまで資料の収集整理やコピー作業等の補助的作業に限る。)を職場を利用して行うものであることに鑑み、急に多大な負荷がかかることがないよう、段階的に作業量や作業内容に配慮して作成する職場復帰支援プログラムリワークプログラム)に沿って実施することとする。』
「実務に関連した作業等」を復職支援プログラムに沿って実施リワークプログラムに沿って実施)することになっていますが、本人の意思と医学的見地からの所見が尊重されます。「あくまで資料の収集整理やコピー作業等の補助的作業に限る。」となっていますが、「等」の部分に含みがありますので、ここの線引きは微妙な部分です。実務作業をやってみないと、訓練にならないし復職の可否リワークの可否)判断の材料にならないという考え方があります。特に、職務が事務職ではなく現業職の場合に、どこまでが「等」の中に含まれるかは、個別の復職可否の判断リワーク可否の判断)になるように思います。
『10 公務災害又は通勤災害
本件通知に基づく「試し出勤」実施中に発生した災害については、公務上の災害又は通勤による災害と認められる場合があり、「試し出勤」実施中に発生した災害の認定に当たっては、必要な資料を添えて人事院事務総局職員福祉局長に協議することとする。』
病気休暇又は病気休職中であっても、公務災害(民間企業の労災に相当)や通勤災害の補償の対象となる場合があることが示されています。ただ、具体的にどのような場合が該当するのかは明らかにされていません。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その31)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の31回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖復職リワーク)前(休職中)の「試し出勤」制度 公務員はどのような制度なのか?〗
「試し出勤」制度は、原則として復職前リワーク前)(休職中)に行いますが、どのように行うかは会社によってまちまちです。では、公務員の場合にはどのような制度になっているのでしょうか?
国家公務員の場合は、人事院から「円滑な職場復帰円滑なリワーク)及び再発の防止のための受入方針」という文書が発出されていて、この中に「試し出勤(復職に向けたリワークに向けた)登庁訓練)について」という項目があります。具体的な実施方法は、「試し出勤実施要綱」という別紙になっています。今回は、この「試し出勤実施要綱」についてご紹介します。
『1 目的
メンタルヘルス障害により療養のため長期間職場を離れている職員で職場復帰が可能リワークが可能)と考えられる程度にメンタルヘルス不調が回復した者が、職場復帰前に、元の職場リワーク前に、元の職場)などに一定期間継続して試験的に出勤をすること(以下「試し出勤」という。)により、職場復帰に関するリワークに関する不安を緩和するなど、職場復帰を円滑リワークを円滑)に行うことを目的とする。』
職場復帰が可能と考えられるリワークが可能と考えられる)程度にメンタルヘルス不調が回復した者」を「職場復帰前」にという「リワーク前」にという)部分がポイントになります。ここには書いてありませんが、実態として職場復帰が可能かどうかリワークが可能かどうか)の判定を行うことも目的の1つになっています。
『2 対象職員
メンタルヘルス障害による長期病休職員(引き続いて1月以上の期間、病気休暇又は病気休職により勤務していない職員)で、主治医、健康管理医(精神科医又は心療内科医等の専門家であることが望ましい。以下同じ。)及び健康管理者により復職可能と考えられる程度リワーク可能と考えられる程度)にメンタルヘルス不調が回復した者のうち、「試し出勤」の実施を希望する者とする。』
主治医と健康管理医(民間企業の産業医に相当)が、「試し出勤」を行っても良いという判断をしていることが要件になっています。かつ「希望する者」が対象です。実務では、主治医と健康管理医の意見書の収集が要件となっています。「試し出勤」期間中の出勤率や職場での勤務状況などが、復職可否リワーク可否)の判断基準の1つとされている例もあります。実態として「試し出勤」を行うことが職場復帰を行うリワークを行う)ためのステップに位置付けられている例もあるようです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その30)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の30回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】とはいうものの、これだけメンタルヘルス不調による休職者が増えてきますと、職場復帰リワーク)に当っては、企業には一定の配慮が求められると考えられます。フルタイム勤務しか認めないということで復職のハードルリワークのハードル)が高くなり、復職が困難リワークが困難)になるようなケースでは、労働者から短時間勤務を求められて、トラブルに発展することも考えられます。また、無理にフルタイム勤務させたことでメンタルヘルス疾病が再発した場合には、企業の安全配慮義務違反が問われる可能性もありえます。
「慣らし出勤」で短時間勤務を行う場合、その間の賃金をどうするかという問題があります。フルタイム勤務したものとして取り扱う場合には問題はありません。一方、賃金を時間給に換算して、就労時間に応じて支払う場合には、労働条件の変更に当りますので、労働者との合意が必要です。職場復帰プランリワークプラン)(個々の労働者の状況に即した個別の職場復帰計画リワーク計画))の中で賃金についての説明を行い、労働者の署名を貰うなどの対応を行っておく必要があります。
職場復帰後リワーク後)に、仕事のパフォーマンスが低下したことを理由として賃金を引き下げることができるでしょうか。職場復帰後の職務リワーク後の職務)が、適宜判断を有する業務から単純な反復業務などに変更となった場合については、労働者と合意の上で賃金を引き下げることができます。但し、一度に大幅に賃金を引き下げることは、権利の濫用として無効とされることもある、とされています。(メンタルヘルス不調者復職支援リワーク支援)マニュアル:難波克行・向井蘭)
「慣らし出勤」を含めた「職場復帰後におけるリワーク後における)就業上の配慮」について、「職場復帰支援の手引きリワーク支援の手引き)」(復職ガイドラインリワークガイドライン))では、以下のような例が挙げられています。これらについても、あくまで義務ではありませんが、企業の社会的責任(CSR)という観点から一定の配慮が求められていると考えて良いのではないでしょうか。
『○短時間勤務
○軽作業や定型業務への従事
○残業・深夜業務の禁止
○出張制限(顧客との交渉・トラブル処理などの出張、宿泊をともなう出張などの制限)
○交替勤務制限
○業務制限(危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務等の禁止又は免除)
○フレックスタイム制度の制限又は適用(ケースにより使い分ける。)
○転勤についての配慮』
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その29)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の29回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖「慣らし出勤」制度は、復職リワーク)した後に有給で行うのが原則〗
メンタルヘルス不調で休職していた労働者が復職可能リワーク可能)と判断されても、いきなりフルタイム勤務からスタートするのは無理だというのが常識になりつつあります。「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援リワーク支援)の手引き」(以下「復職ガイドラインリワークガイドライン)」)では、職場復帰後リワーク後)における就業上の配慮として、以下の通り述べられています。
『イ 職場復帰後におけるリワーク後における)就業上の配慮
数か月にわたって休業していた労働者に、いきなり発病前と同じ質、量の仕事を期待することには無理がある。また、うつ病などでは、メンタルヘルス不調の回復過程においてもメンタルヘルスの状態に波があることも事実である。
このため、休業期間を短縮したり、円滑な職場復帰円滑なリワーク)のためにも、職場復帰後の労働負荷リワーク後の労働負荷)を軽減し、段階的に元へ戻す等の配慮は重要な復職支援対策リワーク支援対策)となる。』
職場復帰支援プログラムリワークプログラム)(企業としての職場復帰支援企業としてのリワーク支援)の基本的な枠組み)を作成する場合には、一定期間の短時間勤務を経て、フルタイム勤務(残業なし)、フルタイム勤務(一定時間の残業)、通常勤務、と段階的に移行する復職支援プログラムを作成リワークプログラムを作成)することが一般的です。この短時間勤務を「慣らし出勤」と呼びます。企業によっては、「リハビリ出勤」とか「試し出勤」と呼んだりする場合もあるので注意が必要です。職場復帰後に行うリワーク後に行う)短時間勤務ですので、有給で行うのが原則です。
企業によっては、復職前リワーク前)(休職中)に短時間勤務を想定した「試し出勤」を行い、その後に復職可否リワーク可否)の判定。復職可リワーク可)となったら「慣らし出勤」からスタート、といった職場復帰支援プログラムを規定リワークプログラムを規定)している場合もあります。「試し勤務」なしで、「慣らし勤務」から復職をスタートリワークをスタート)する職場復帰支援プログラムもありますリワークプログラムもあります)。
「慣らし出勤」制度を必ず設けなければならないか。つまり、短時間勤務制度を整備することは企業の義務なのかという点ですが、結論からいうと企業に義務はありません。「職場復帰はフルタイム勤務リワークはフルタイム勤務)できることを原則とする」という休職・復職の規定リワークの規定)を就業規則に定めている会社もあります。「職場復帰支援の手引きリワーク支援の手引き)」はあくまで「手引き」です。第一、休職制度そのものが労働基準法等の規定がありません。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


リワーク(復職)支援(その28)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワーク(復職)支援」の28回目です。引き続き、リワークについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】官公庁や地方自治体などでは、「試し出勤」「試み出勤」などが制度化されている例が多く、復職リワーク)へのステップとして位置付けられています。その代わりに、復職後リワーク後)は原則として通常のフルタイム勤務として、特に事情がある場合を除いては短時間勤務などを設けない制度になっている例が多いようです。
メンタルヘルス三次予防対策研究会報告書_地方公務員災害補償基金_200902)
官公庁や地方自治体は、中小企業などと比較すると、病気休暇制度や休職制度が充実しています。職場環境などを含めて、休職期間を利用して職場でリハビリを行うことが比較的容易だという事情もあるのではないかと思います。また、復職可否リワーク可否)の判断に必要な客観的な情報が得られるので、本人や労働組合などとの軋轢も軽減できるという面もあるのではないかと思います。
民間の大企業などでは、「試し勤務」制度による職場への負荷で生産性が低下するのを避けるため、EAPサービス会社が提供するリワークプログラムなどを採用する動きもあります。リワークプログラムを採用する場合は、EAPサービス会社が提供するリワーク施設などに模擬出勤して、軽作業やパソコン操作などを行って職場復帰の準備リワークの準備)をすることになります。休職から復職に至るリワークに至る)プロセス管理全体をEAPサービス会社に委託している企業もあります。
中小企業の場合は、休職可能期間を、傷病手当金の受給可能期間の上限である1年6ヵ月より短く設定している例もあり、かつ、職場でリハビリを行わせるほどには余裕がないという事情があります。産業保健スタッフも衛生管理者ぐらいしかいないということになると、長期間にわたる「試し勤務」を制度化するのはなかなか難しいというのが実情ではないでしょうか。
ところで、最近では、復職可否の判断リワーク可否の判断)基準として、生活記録表を用いて、直近2週間の生活リズムが整っていることを復職の条件リワークの条件)の1つとすることが一般的になってきています(メンタルヘルス不調復職支援リワーク支援)マニュアル:難波克行・向井蘭)。「試し出勤」制度は、この生活リズムが整っているかどうか、そして、職場復帰の意欲リワークの意欲)が十分にあるかどうかを客観的に確認できる手段です。
「試し出勤」制度にはメリットとデメリットがあります。とはいえ、それぞれの企業の実情に応じた形で、できるだけ有効に「試し出勤」制度やリワークプログラムを活用するのが良いのではないかと考えています。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。