月別アーカイブ: 2018年2月

復職支援(リワーク)(その21)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の21回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】■職場の療養制度、療養中の給与の確認
療養制度は、職場の規模や考え方により大きく異なり、一般的には大企業や公務員では療養制度が手厚く設計されており、中小企業になると十分な制度設計がされていない場合が多く見受けられます。つまり、療養制度に関しては各職場の就業規則などを参照し、詳しくは人事・労務担当に確認する必要があります。
一般的に病気療養の制度として、「通常の有給休暇を使う場合」と「社内の病気休暇・病気休職の制度を用いる場合」があります。有給休暇に関しては、労働基準法により使用者が労働者に与えなければならない給与が出る休暇なので、これを利用すれば経済的な心配をすることもなく療養することができます。有給休暇の積み立て制度があるような会社では、ある程度、長期間の療養期間を有給休暇で賄うことができますが、そのような制度のない会社では、年間20日間程度の有給休暇では病気療養期間をカバーすることができなくなってしまいます。
そうなると次に「病気休暇や病気休職の制度が存在するかどうか」を会社に確認することになります。病気休暇は労働基準法上の定義ではありませんので、制度が存在する場合には会社の就業規則により取得要件や賃金の支払いの有無が決められています。もし、そのような規定がない場合には、欠勤扱いでその間は無給ということになります。
病気休職もほぼ同様の制度ですが、業務上の傷病以外の理由によって、比較的長期間欠勤せざるを得ない場合において、使用者が労働契約は存続させたまま労働義務を一定期間免除することをいい、この休職期間は賃金の支払いの有無は別として職場において身分が保証されます。この制度も労働基準法などの法令に定めがないため、制度を設けるか否かは職場の選択によりますし、賃金の支払いの有無も職場によって異なるということになります。ちなみに国家公務員の場合には、病気休暇を取得すると90日間までは給与が全額支給され、90日間を超えて取得する場合には、俸給が半減されます。また、病気休暇が長期間に及ぶような場合には、病気休職に切り替えられることがあり、病気休職の場合には俸給が1年間で8割保証され、最長で3年間の休職期間が設けられています。地方公務員の場合には地方公共団体によって異なりますが、多くはこの国家公務員の規定に近い制度が設計されているようです。
■自宅療養中の会社の窓口
療養中でも会社の事務手続きや傷病手当金の手続きなど、諸手続きを行わなければなりません。また、会社の制度について何かわからないことがあった場合に、さまざまな問い合わせをしなければならないこともあるでしょう。そのため、休業中の事務の窓口を確認しておくと書類のやり取りなどがスムーズに行われ、手続きミスにより傷病手当金が入るのが1ヵ月遅れるというような事態を避けることができます。
また、会社によっては社内にメンタルヘルス相談の窓口があったり、診療室や保健室などに精神科医・心療内科医カウンセラーが配置されていたりすることもあります。また、社内にはそのような相談機関がなかったとしても、福利厚生の一環としてカウンセリングルームなどの外部機関と契約していて、メンタルヘルスに関する相談を受けることができる場合もありますので、メンタルヘルスの相談窓口についても確認しておくと良いでしょう。
職場復帰時リワーク時)の手順
職場復帰に関してリワークに関して)は、主治医の「職場復帰可能リワーク可能)」の診断書が提出されれば職場復帰が認められるリワークが認められる)手続きが簡単な職場もあれば、主治医の復職可能診断書リワーク可能診断書)をもとに産業医が面談を行う職場、さらには産業医の面談後に職場復帰判定リワーク判定)会議のような形が取られ、職場復帰が決定リワークが決定)される慎重な職場もあり、職場復帰時の手順リワーク時の手順)も職場によって制度が大きく異なるので、確認しておくようにしましょう。と言うのも、慎重な職場の場合、「職場復帰可能」の診断書が提出「リワーク可能」の診断書が提出)されてから、産業医面談の予約までに2週間、その後の復職判定会議リワーク判定会議)までに1ヵ月といった具合に非常に長期間、職場復帰の足止めリワークの足止め)を食らう場合もありますので、職場復帰までの手続きリワークまでの手続き)が煩雑な場合にはあらかじめ確認をするように心がけましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その20)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の20回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●要治療期(治療専念期)に必要な職場との連携
(要治療期(治療専念期)に職場に確認すべきこと)
うつ病などメンタルヘルス疾患で休業しているときに職場との連絡を避け、仕事のことを思い出さないような配慮が必要であると記載されている本もありますが、私はこれに対しては少し疑問を感じます。というのも、うつ病などメンタルヘルス疾患により長期休暇を取ることによって生じる不安は、金銭的な不安と会社をクビになるのではないかという身分上の不安が多いからです。これらの不安を拭い去るためには、職場との連絡を避けて通ることができません。
つまり、要治療期(治療専念期)に安心して治療に専念できる環境を確保するために、取り除くことのできる不安は、極力取り除いてから治療を行うことが望ましいとされているのです。
そのため、各職場によって大きく制度の異なる3点(①職場の療養制度・療養中の給与の確認、②自宅療養中の会社の窓口、③職場復帰時リワーク時)の手順)は要治療期(治療専念期)のできるだけ早いうちに職場に確認する方が良いでしょう。それでは次回から、その制度について説明をすることにしましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


火曜日勤務の葛原です。

平昌オリンピックも昨日閉会しました。女子スケートのマススタート面白かった。大柄なオランダ選手の後ろに小柄な高木菜那がくっついて、その後ろにパシュートで炎上したキム ボルムがくっついて、最後にオランダ選手が外に膨らんで菜那とボルムがワンツーフィニッシュ。めでたし、めでたし。
皆様には平昌オリンピックでの日本選手の活躍いかがでしたか?今年は例年に比べて寒さのため、風邪やインフルエンザが流行っていますが、冬場は体調不良だけでなく、不眠気分の憂うつ・意欲の低下などうつ病によるメンタルヘルス不調が出やすい季節です。もしメンタルヘルス不調が回復せず、お困りの方は、豊中市 千里中央心療内科杉浦こころのクリニック」へお早めにご連絡下さい。


復職支援(リワーク)(その19)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の19回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰をするリワークをする)ために必要な家族復職支援家族リワーク支援)のポイント
■患者様のメンタルヘルス症状に即した、うつ病などメンタルヘルス疾患に対する正しい知識を身に付ける
メンタルヘルス疾患に対する知識は、うつ病などメンタルヘルス疾患に関連した本で広く知識を身に付けることができます。しかし、ここで重要なのは、患者様のメンタルヘルス症状についての正しい知識になります。本では一般論を述べているので、どの部分が患者様のメンタルヘルス症状に当てはまるのか家族の目からは判断が難しい場合も少なくありません。
そこでポイントとなるのが主治医の説明や助言なのです。家族が患者様の受診に同伴することは、主治医にとっても客観的な患者様のメンタルヘルス症状を知ることができ、より的確な治療につながりますし、家族にとっても患者様のメンタルヘルス疾患に対する知識を得る絶好の機会となるのです。患者様と一緒に受診する機会を上手に活用して、自宅における家族のサポート方法や主治医の治療方針・処方薬の効能や副作用、そして職場復帰のめどリワークのめど)などを率直に尋ねてみると良いでしょう。
患者様のメンタルヘルス症状に一喜一憂せず、冷静に対応する
うつ病などメンタルヘルス不調は直線的にメンタルヘルス症状が改善に向かうことは少なく、良い状態と悪い状態の波を繰り返しながら少しずつ快方に向かうことがほとんどです。そのため、メンタルヘルス症状の良いときには患者様も家族もメンタルヘルス不調が治ったのではないかと喜び、気晴らしに温泉旅行やドライブなど積極的に外出に誘うケースがよくありますが、これは避けた方が良いでしょう。
なぜなら、嫌とはいえない几帳面でまじめな性格の方がうつ病などメンタルヘルス不調になりやすく、患者様は心配してくれている家族から誘われれば、多少気乗りがしなくても嫌とは言えずについて行くことが多いのです。その結果、身体的疲労を招き、患者様のメンタルヘルス症状が悪化することもあるからです。こうなってしまうと、患者様は「やっぱり何もできない。家族に迷惑をかけてしまった」と劣等感や絶望感を抱くことになりますし、家族も「私たちが誘ったから具合が悪くなってしまったのだろうか」と自分たちを責めることになってしまいます。ですので、もちろん患者様が「どこかに外出したい」と希望するのであれば、疲労の残らない程度の外出をすることは問題ありませんが、家族から積極的に気晴らしに誘うことはせずに、家族は「患者様を見守る」「患者様に付き添う」というスタンスを取り続けることがことが重要です。
■支える者のゆとりの時間を確保する
上記うつ病などメンタルヘルス不調の患者様にとって家族の存在は大きな支えとなり、家族の協力によってメンタルヘルス不調が回復に向かうケースは多く存在します。しかし、うつ病などメンタルヘルス不調の場合、療養期間が長期化することも多く、その療養中の生活のほとんどが家族に支えられており、支える側の家族の負担も決して少なくないのです。
また、当初は主治医から3ヵ月程度の療養期間が必要と診断されていたものが、3ヵ月後になるとさらに3ヵ月の療養が必要と診断されることもよくある話です。そのような状況下で、支える家族の方のストレスがたまり、十分なサポートができなくなってしまってはどうしようもありません。
そこで重要なことは、家族としてのサポートを頑張りすぎないことです。人は無理をし続けてもどこかで限界を迎えますし、自分に余裕がなければ他人を支えていくことは難しいのです。もちろん患者様の気持ちになって一緒に考えてあげることは重要ですが、患者様に気を遣いすぎる必要もありません。支える家族自身がときには友達と出かけたり、自分の趣味に時間を割いたりするなど、ゆとり時間を確保することも重要なのです。
■家族だけで孤立して悩まない
先述したように、上記うつ病などメンタルヘルス不調の患者様を支える家族の負担は軽いものではありません。そこで、支える家族にとっても、家族だけで悩まずに、さまざまな社会資源(日本産業カウンセラー協会、労災病院、うつ・気分障害協会(MDA-Japan)、精神保健福祉センター(各都道府県に設置)、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構など)を活用して、家族が抱く悩みや不安を吐き出し、適切な助言を得ることができるように相談連絡先を確保しておくことも良い手段です。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その18)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の18回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●要治療期(治療専念期)の家族のサポート方法
この要治療期(治療専念期)の家族のサポート方法について、一言で言えば「正確な知識に基づいた一貫した対応」が重要です。逆に言えば、どうしたら良いのかわからず不安になり、できることは何でもしてあげようという対応は、かえって患者様本人の動揺を誘い、メンタルヘルス症状も不安定にしてしまうので注意が必要です。一例を下記で紹介しますが、このように、メンタルヘルス症状が優れなくても家族の前では無理をして元気なふりをすることになってしまうと、本来ならゆっくり休めるはずの家庭にもかかわらず、本人が最も気を遣わなければならない場所になってしまい、さらに本人を追い詰めることになってしまうのです。
もちろん、本人の気持ちやつらさを理解しようと努力することは重要ですが、メンタルヘルス不調のつらさは実際にそのメンタルヘルス不調を患った人にしか理解し得ない部分もあります。なので、必要以上に感情移入し、本人に共感しながらメンタルヘルス症状に一喜一憂することよりも、「私はあなたのメンタルヘルス不調の回復を願っているし、それまで一緒に歩いていこうと思っている」という一貫した態度を貫き通すことの方が、本人の安定したメンタルヘルス不調の回復を支えることになるのです。
■~家族がうつ病などメンタルヘルス症状に波のあることを知らなかった場合~
うつ病などメンタルヘルス不調で沈んでいる患者様の表情が少し晴れやかになると、家族は「メンタルヘルス不調が落ち着いて良かったね」と喜びます。
 ↓
次の日に暗い表情をしていると「昨日はあんなに元気だったのに、どうしちゃったの」と心配するという事態を招いてしまいます。
 ↓
本人は「つらい顔をしていると家族が心配するから、家族の前ではつらい顔を見せてはいけない」と考え、メンタルヘルス症状が優れなくても家族の前では無理をして元気なふりをすることになってしまいます。
 ↓
結果、無理がたたり、再びメンタルヘルス不調が悪化します。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。      


復職支援(リワーク)(その17)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の17回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰をするリワークをする)ために必要な自宅療養のポイント
■通院、抗うつ薬の服用は精神科医・心療内科医の指示通りに行う
休養期間中にきちんと通院を行い、の服用を規則正しく行うことは重要です。特に治療を始めて間もない時期は、メンタルヘルス症状が不安定なことが多いので、的確なアドバイスを受けるために、こまめに主治医の診察を受けるほうが良いでしょう。また、薬の服用に関しても薬の効き具合や副作用の出現などから、種類や量を調整することで自分のメンタルヘルス症状に合った薬を見つけることができます。
■仕事からは徹底的に離れる
休養中も仕事のことが頭から離れず、職場に「あの仕事は今どうなっていますか?」と電話をしたり、「引継ぎが十分に行われていなかったので心配で……」と会社に出向いたりすることがよく見られます。このような中途半端な休養はうつ病などメンタルヘルス不調の回復を遅らせてしまいます。確かに突然休んでしまい、全く仕事の引継ぎができていない場合、それが気がかりで十分に休養できないこともあるでしょう。1、2日間、引継ぎのみを目的に職場に顔を出すことは意味のあることかもしれませんが、それ以上職場のことを考え始めるとキリがなくなってしまいます。そもそも、もし誰かが心筋梗塞で緊急入院となっても、会社は何とか代わりの人材を立てて急場をしのぐものですから、必要以上に仕事のことを心配しないことが大切なのです。うつ病などメンタルヘルス不調で休養中の患者様が考えるべきことは「うつ病などのメンタルヘルス不調を治して元気に会社に復職することリワークすること)」であり、「そのために仕事から徹底的に離れることも重要なのだ」と認識することなのです。
■身体の疲労は極力避ける
上記うつ病などメンタルヘルス不調で休養していると周囲の人は「家でゴロゴロしているのは良くないのでは……」というような間違った認識から心配をして、外に連れ出そうとすることがよくあります。ですが、休養中に外出することで結果的に身体的な疲労に結び付いてしまい、上記うつ病などメンタルヘルス不調の回復を遅らせることになります。また、生活のリズムを整えるために休養中に運動を取り入れる方もいますが、運動は気持ちいいと思う程度にとどめ、疲れたと感じるまでやらないようにしましょう。
■大切な決断は保留
この時期には、仕事で周囲の人に迷惑をかけたという罪悪感から、仕事を辞めた方が良いのではないかと思うようになることや、仕事にも行けなくなった自分を責め、妻に申し訳ないので離婚した方がいいのではないかと考えてしまいがちです。ですが、このような気分になるのは、メンタルヘルス疾患の影響によるものなので、大切な決断はメンタルヘルス疾患が良くなるまで保留をするようにしましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その16)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の16回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】○自宅療養のポイント
今まで会社のために自らの時間を犠牲にしながら仕事をし、うつ病などメンタルヘルス不調を患ってしまった方にとって、突然、「明日から会社を休んでゆっくり休養して下さい」と告げられたとしても、自宅療養中は一体何をしたら良いのか戸惑うものです。多くの方が入社後に取った長期休暇といえば、せいぜい最長10日程度の夏休みになるでしょう。だから、突然「1ヵ月の自宅療養をしなさい」と言われても、どうしたら良いのかわからなくて当然なのです。しかし、休養はメンタルヘルスの疲れを取り、再び活動するエネルギーを蓄えるためには非常に重要な手段であり、どれくらいしっかりと休養を取ることができるかによって、その後のメンタルヘルス不調の回復に大きな影響を及ぼします。
この要治療期(治療専念期)の休養のポイントは、とにかく自分の気の向くままに生活を送ることです。うつ病などメンタルヘルス不調の患者様の場合、「メンタルヘルス不調を治すためには〇〇をしなければ」とついつい余計なことをしようとするのですが、頑張りたくても頑張れないのがうつ病などメンタルヘルス不調なのですから、それ以上何かをしようと頑張ることはかえって逆効果なのです。具体的に言えば、横になっていたい気分なのであれば、自分が立ち上がりたいと思うまで横になっていればいいし、自分が外の空気を吸いたいと思うのであれば、少し散歩に出かけても構いません。休養と言っても絶対安静なわけではないので、無理に家に閉じこもっている必要もないのです。多くの方が、ずっとゴロゴロとした生活をしていると、もう二度と会社には戻れなくなってしまうと不安を抱きがちなのですが、メンタルヘルスにエネルギーが蓄えられると、いつまでもゴロゴロしていることが苦痛に感じられ、自発的な行動を起こすようになってくるので、心配する必要はありません。
また、休養中はできる限り、日常生活上の負担を減らすことが重要ですから、家族が同居している場合にはその協力を求めることや、単身の場合には、可能であれば実家へ戻り、日常生活上での負担が少ない環境を作ることが望まれます。ただし、誰かと一緒にいること自体が苦痛に感じられるような場合には、一人でのんびりと過ごすことも決して悪くはありません。
この休養中は注意をしていただきたい「自宅療養のポイント」を押さえながら、あとは自分の気の向くままに過ごすことが、上記うつ病などメンタルヘルス不調の回復にとって重要となります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その15)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の15回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎うつ病などメンタルヘルス疾患の治療の基礎知識
うつ病などメンタルヘルス疾患を治療する医療機関と主治医が決まったら、治療方針を具体的に相談していくことになります。要治療期(治療専念期)には、うつ病などメンタルヘルス疾患の治療の基本である薬物療法と休養により、抑うつ気分や意欲の低下・日内リズムの乱れなどを改善していくことが重要です。しかし、「精神科・心療内科の薬は何となく怖い」という世間の偏見があり、薬物療法を拒んだり、を不規則に服用する事例が数多く存在します。また、普段、休養とは無縁の生活を送ってきた方にとって、何をすればいいのか、戸惑いを感じることにもなります。そこで、うつ病などメンタルヘルス疾患の薬物療法の基本と具体的な療養方法について説明をしていきたいと思います。
現代の薬物療法
上記うつ病などメンタルヘルス疾患の治療は薬の服用が重要です。精神科・心療内科で処方される薬は「依存性がある」「副作用が強い」という誤解も多く、薬を使わずに治したいと希望される患者様もいらっしゃいます。ですが、風邪をひいたら風邪薬を飲むように、上記うつなどメンタルヘルス不調になったら、上記うつ病などメンタルヘルス不調の治療薬精神科医・心療内科医の指示通り服用することが、うつ病などメンタルヘルス不調を長引かせないコツなのです。うつ病などメンタルヘルス不調の治療薬は大きく分けると次の4種類になります。
『①抗うつ薬  抑うつ気分、意欲の低下を改善する薬
 うつ病などのメンタルヘルス不調のメインの治療薬です。』
不安や緊張・焦燥感・イライラ感を取り除き、落ち込んだ気持ちをなくし、やる気を奮い立たせる効果があります。従来の抗うつ薬(三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬)は、口渇・便秘などの副作用が強く、服用することで苦痛になることもありましたが、現在ではうつ病などメンタルヘルス疾患の発症に関連があると考えられているセロトニンという脳内ホルモンに選択的に作用するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)という薬が開発され、実際に臨床の場面でも広く用いられています。メンタルヘルス症状や副作用の出現の状況に合わせて主治医と相談をしながら、焦らずに自分に最適な抗うつ薬を見つけていくことが重要です。
また、SSRIやSNRI、NaSSAも副作用がないわけではなく、飲み始めに吐き気や眠気が出ることがありますが、1日1~2回の服用で済むことが多いので、飲む時間帯を工夫することで副作用の影響を少なくすることができます。
注意点としては、服用したらすぐにうつ病などのメンタルヘルス不調が治るわけではなく、服用を開始してから1~2週間後に少しずつ効果が現れ、一定期間の服用を継続した後に、少しずつ薬の量を減らしていくことが重要になります。
『②抗不安薬  不安や緊張感を和らげる薬
 神経症自律神経失調症の治療などに利用されます。』
この薬は世間一般で精神安定剤と呼ばれます。治療を始めたばかりで不安が強いときや、うつ病のメンタルヘルス症状が重いときに、抗うつ薬と併用されることが多く、効果が早く現れます。うつ病などのメンタルヘルス不調に伴って生じる不安やつらさを取り除いてくれるのが特徴です。
『③睡眠薬  不安を取り除き、寝つきを良くする薬
 化学構造や薬の作用時間によって分類されており、不眠の種類によって使い分けられます。』
うつ病などのメンタルヘルス障害睡眠障害が生じることが多く、睡眠薬(睡眠導入剤とも呼ばれます)を用いることも少なくありません。明日も眠れなかったらどうしようと睡眠のことが頭から離れなくなり、ますます不安になってしまうという悪循環や、昼寝をしてしまい夜間に眠れなくなるといった日内リズムの乱れが生じてしまう場合には、睡眠薬を服用することが有用です。
『④気分安定薬  気分の波を抑える薬
 てんかんの治療薬として用いられるものもあります。』
気分の浮き沈みを抑え、気分を安定させる作用を持ち、主に躁うつ病などメンタルヘルス障害の治療薬である炭酸リチウム(商品名:リーマス)やてんかんの治療薬であるカルバマゼピン(商品名:テグレトール)・バルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン、バレリン)などがこれに当たります。イライラ感が強い場合や気分の波が大きい場合に、躁うつ病などメンタルヘルス障害の治療薬として用いられることがあります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その14)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の14回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】○セカンドオピニオンの勧め
現在、精神科医療・心療内科医療が進歩し、同じうつ病などメンタルヘルス疾患に対してもさまざまなが登場し、薬物療法以外の治療方法についても科学的な検証がなされてきているので、患者様にもたくさんの選択肢があります。患者様も「自分の飲んでいる薬で本当にメンタルヘルス不調が良くなるのか」「西洋医学の薬よりも漢方薬でメンタルヘルス不調を治したい」「薬物療法と心理療法カウンセリング)を併用したい」など、それぞれ医療に対する希望や姿勢が異なってきています。そこで、自分にとって最善と考えられる治療を患者様が自ら判断できるように、主治医以外の医師の意見を求めることをセカンドオピニオンと言います。
最近、がんの治療などでは積極的にセカンドオピニオンを求める動きが進んでいますが、精神科・心療内科の世界では「他の先生に意見を求めることは、主治医を信用していないみたいで失礼になるのではないか」「セカンドオピニオンのための診療情報提供書を書いてほしいと言いにくい」という患者様の遠慮があり、セカンドオピニオンが当然に求められる段階には達していません。
しかし、がんの治療であれ、うつ病などメンタルヘルス疾患の治療であれ、患者様の大切な将来に大きな影響を及ぼすものなので、積極的に自らが納得できる治療法を求め、職場復帰の味方リワークの味方)となってくれる主治医を探すことは非常に重要なのです。自分が不信感を持ったまま、治療を受け続けていても前向きな治療にはなりませんし、逆に、セカンドオピニオンを求めることで、不信感を抱いていた主治医の治療方針が他の医師から見ても適切で、信頼できるものであることを確認できる良い機会となるかもしれません。
確かに、他の医師に意見を求めることは、現在の主治医に失礼なのではないかという不安はあるかもしれません。しかし、自らの診断や治療方針に自信を持って診療をしている医師であれば、当然、他の医師の意見も踏まえた上で自分の治療方針が正しいと認識してもらえれば構わないと思うでしょうし、逆に主治医が「私の治療方針が信用できないのですか」「他の医師の話を聞きたいのであれば勝手にしてください」など、セカンドオピニオンに消極的な場合は積極的に主治医を変えることを考えても良いかもしれません。
ここで、セカンドオピニオンの受け方について、少し触れておくことにしましょう。セカンドオピニオンを受診する機関は基本的に自分が意見を聞いてみたい医療施設で受けることに尽きます。つまり、「友達があそこのクリニックが良いと言っていた」「雑誌であの病院は評判が良かった」など、自分が望む医療機関にセカンドオピニオンを依頼することが良いでしょう。
ただ、なかなかそのような医療機関が見つからない場合、精神科の専門的なトレーニングを受けた医師にセカンドオピニオンを求めることも一つの方法です。精神科の専門的なトレーニングを受けた証として、国家資格の「精神保健指定医」と公益社団法人日本精神神経学会が認定する「精神科専門医」があり、それぞれ精神科医としての経験年数や経験症例を積まなければ取得できない資格ですので、一つの目安にはなるでしょう。でも、そのような資格を持たない医師でも優れた精神科医・心療内科医はたくさんいますので、まずは自分が意見を聞いてみたいと思う医師がいる場合、そちらを優先する方が良いでしょう。
最後に、セカンドオピニオンを受ける際に必要な費用について簡単に紹介をしましょう。まず、現在の主治医に診療情報提供書を書いてもらう必要があります。診療情報提供書を発行する場合には、診療情報提供料という費用がかかり、普段の診察費などに加えて診療費として患者様に請求されます。診療情報提供書の発行は一般の診断書と異なり、健康保険が適用となります。しかし、セカンドオピニオンを受けるときは原則として「診療」ではなく、あくまで「相談」という扱いになるため、健康保険給付の対象外となりますので、全額自己負担になる点は注意が必要です。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その13)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の13回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】結局のところ、職場復帰のためリワークのため)のうつ病などメンタルヘルス疾患の治療においては精神科と心療内科の違いや、クリニックと病院の違いなどよりも、どのような主治医のもとで治療を行うかが最も重要なポイントとなるのです。ここであえて「職場復帰のためにはリワークのためには)」と強調したのは、精神科医・心療内科医として優れている医師が、必ずしも職場復帰のための主治医リワークのための主治医)に向いているとは一概に言えないからなのです。
もし何か大きな外科的手術をしなければならないような場合だと、手術の成功率の高い優秀な医師を選ぶべきでしょう。しかし、職場復帰するリワークする)ためのうつ病などメンタルヘルス疾患の治療は、ただ単に薬を処方し、休養を勧めれば良いだけではなく、患者様の悩みや職場での心配事をじっくり聞き、その上で職場の関係者と職場復帰の時期リワークの時期)や職場環境を調整し、職場復帰後リワーク後)のフォロー方法などを的確にアドバイスすることも重要なので、外科とは大きく異なるのです。つまり、名医と言われる医師にかかったとしても、診察が3分で終わってしまい、職場の悩みなどを打ち明けたり、職場復帰後のことリワーク後のこと)を相談できなかったりする環境下では、職場復帰はうまく進みリワークはうまく進み)ません。
また、職場の関係者との調整やアドバイスを行わずに、「職場のことはわからない」とか「職場のことは産業医と相談して」と職場復帰に向けてリワークに向けて)の主治医としての見解をはっきりと示してくれない医師は、職場復帰のための主治医としてリワークのための主治医として)は不向きです。そこで、職場復帰のための主治医選びリワークのための主治医選び)の基準としては次のような項目に重点を置くのが望ましいでしょう。
『・5分以上の診察時間を確保し、話しやすい雰囲気で診察が受けられる。
 ・うつ病などメンタルヘルス不調になった経緯や会社での悩み事などに積極的に耳を傾けてく
  れる。 
 ・およその治療期間や職場復帰の時期の目安リワークの時期の目安)などを示してくれる。
 ・の副作用や家での過ごし方などについて十分な説明を行ってくれる。
 ・職場関係者や家族との面談に時間を割き、的確な説明を行ってくれる。
 ・傷病手当金の診断書や会社に提出する必要書類を嫌な顔をせずに発行してくれる。』
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。