日別アーカイブ: 2018年2月15日

復職支援(リワーク)(その11)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の11回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎うつ病などのメンタルヘルス疾患とアルコール
普段クリニックで診療をしていると、うつ病などメンタルヘルス不調の患者様から「先生、お酒を飲んでも大丈夫ですか?」とよく聞かれます。私もお酒は嫌いではない方なので、飲みたい気持ちもわからないでもないのですが、やはり「飲んではいけません」と答えます。その理由はうつ病などメンタルヘルス不調の患者様は「眠れないから」「嫌なことを忘れられるから」「何も考えなくていいから」と、うつ病などメンタルヘルス不調のつらさを紛らわすために飲酒をすることが多いからなのです。
確かにアルコールは大脳に作用して深く考える機能を停止させ、不安や緊張を和らげ、多幸感をもたらしますので、上記うつ病などのメンタルヘルス不調の患者様がアルコールを飲めば、そのときはメンタルヘルス症状が緩和され、楽になります。しかし、アルコールによってメンタルヘルス症状が緩和されても、上記うつ病などメンタルヘルス不調が根本的に良くなっているわけではありません。結果的には徐々に飲酒頻度や飲酒量が増加し、最終的にアルコール依存症となってしまうことも少なくないのです。
アルコール依存症は治癒率が10~20%程度と低く、ほとんどの人は治癒することなく、少しずつ身体や精神(メンタルヘルス)がむしばまれ、最終的にはアルコール性肝硬変や食道静脈瘤という致命的な病気で命を落としたり、人格が荒廃し通常の社会生活が送れなくなったり、離婚や退職などを余儀なくされ、社会的孤立感を高めることとなってしまうのです。
また、うつ病などメンタルヘルス疾患治療薬とアルコールの飲み合わせが悪いことにも注意が必要です。上記うつ病などメンタルヘルス疾患の治療薬として処方される抗不安薬睡眠薬の多くは、脳内でアルコールと同じ部位に作用するため、アルコールによって治療薬の効果が増幅され、ときには呼吸が抑制されたり、記憶がなくなってしまったり危険なメンタルヘルス症状を引き起こすこともありますので、注意が必要です。
さらにアルコールは睡眠の質にも悪影響を及ぼします。「寝る前にお酒を飲めば、ぐっすり眠れる」という考えで寝酒をしている方を多く見かけますが、これは医学的にみて大きな間違いなのです。確かに、アルコールは大脳の活動を静める部分に作用しますので、眠りを誘い、寝つきを助ける作用があることは事実です。
しかし、アルコールには深い眠りに移行することを妨げ、睡眠の後半では逆に眠りを浅くしてしまうという作用があるのです。だから、アルコールを飲むと良質な睡眠が確保できずに、夜中に目が覚めてしまうことが多くなります。
また、アルコールには利尿作用がありトイレに行きたくなってしまうため、睡眠の途中で目が覚めてしまい、熟眠を妨げる要因ともなります。
つまり、アルコールは決して質の高い睡眠をもたらすものではなく、むしろ熟眠を妨げ、うつ病などメンタルヘルス不調の回復を遅らせる要因ともなりえるのです。
このような点から、私はうつ病などメンタルヘルス疾患の治療中の飲酒は絶対にやめるように指導しているのです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。