月別アーカイブ: 2018年6月

復職支援(リワーク)(その58)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の58回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●日常生活で過重なストレスを防ぐ方法(Ⅰ)
ストレスマグネチュードに注意しよう
一般的に離婚や借金など嫌な変化はストレス疲労)と捉えられがちですが、実は昇進や妻の妊娠などのおめでたい変化も、人間にとっては大きなストレスとなるのです。ここでは、アメリカの心理学者ホームズとレイが作成した「職場と家庭のストレスの蓄積モデル(社会的再適応評価尺度)」というものを紹介することにしましょう。
この尺度は、結婚を50、配偶者の死を100として、ある生活上のストレスイベントが起きてから、もう一度、もとの社会適応を取り戻すのに必要な時間を調査結果により求めたものです。この得点が高い生活上のストレスイベントほど、もとの生活に戻るまでに時間がかかる大きなストレスイベントであるということになり、私たちメンタルヘルス専門医精神科医・心療内科医)はこれを「ストレスマグネチュード」と呼び、生活におけるストレスの大きさの指標として用いています。これを見ると、妊娠や昇進が大きなストレスイベントとなっていることがおわかりいただけるでしょう。一般的には、この社会的再適応評価尺度において、過去1年間に体験した生活上のストレスマグネチュードの合計点が200~299点であれば、次の年にメンタルヘルスを崩す可能性が50%、300点以上であれば、メンタルヘルスを崩す可能性が80%以上の確率であるとされています。
だから、日常生活における変化に敏感になり、ストレスマグネチュードをため込まないことを意識することが重要なのです。例えば、社宅で暮らしていた夫婦に妊娠と昇進が同時に起こったとき(ストレスマグネチュードは40+29=69点)、それならこれを契機に家を建てて引っ越してしまおうと考えることはよくあります。しかしそうしてしまうと、妊娠と昇進に加え、転居と多額の借金という大きなストレスを抱えることになります(ストレスマグネチュードは69+20+31=120点)。あえて多くの変化を重ねてしまうよりは、生活が落ち着いてから次の変化に取り組むように心がけましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その57)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の57回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●1年に1回はストレスチェック
私が職場復帰をされたリワークをされた)患者様にお勧めしているのは年1回のメンタルヘルス診断を行うことです。労働安全衛生法の改正に基づき2015(平成27)年12月から労働者数50人以上の事業場でストレスチェックをすることが義務化されました。
ストレスチェックの義務化などの影響もあり、職場でメンタルヘルスケアが行われることが一般的になりつつあります。その一方で、よほど大きな会社でない限り、産業医としてメンタルヘルス専門医精神科医・心療内科医)を配置しているケースはまだ少なく、職場復帰に向けたリワークに向けた)必要なアドバイスを適切な時期に受けられる労働者は決して多くありません。その結果、メンタルヘルス専門家の医師精神科医師・心療内科医師)から適切なアドバイスを受けていれば職場復帰が容易にできたリワークが容易にできた)ケースやうつ病などメンタルヘルス疾患の再発をしなくて済んだケースは多く見られます。
もちろん、うつ病などメンタルヘルス疾患の原因メンタルヘルス症状はさまざまで、職場復帰に向けてやらなければならないことリワークに向けてやらなければならないこと)も人それぞれ異なりますが、自分にも当てはまる部分や、明日からでもやってみようと思えることがあれば、ぜひ明日からと言わず、今日からでも実行していただければ幸いです。
職場復帰というゴールリワークというゴール)にたどりつく道のりは何通りもありますが、一つひとつ着実に実行していただければ、少しずつでもその職場復帰という見えないゴールリワークという見えないゴール)に近づくことができると信じ、励んで欲しいと思います。
患者様の中にはよく、「うつ病などメンタルヘルス不調になった私はもう会社では必要とされていませんから」と上記うつ病などメンタルヘルス不調にかかった経験を否定的にとらえる方も少なくありません。しかし、上記うつ病などメンタルヘルス不調を患った多くの労働者が無事に職場復帰を果たしリワークを果たし)、現在でも会社で自分に合った働き方をされています。その方たちは「職場うつ病などメンタルヘルス不調にかかった私」から「職場うつ病などメンタルヘルス不調を経験した私」として、もう一度自分の居場所を確立されているのです。
なかには「自分が経験した、この辛いうつ病などメンタルヘルス障害を部下には絶対に味わわせたくない」と思い、部下の労務管理を徹底的に行い、職場でうつ病などメンタルヘルス障害にかかる労働者が発生しないように尽力されている方もいます。ぜひとも、職場でうつ病などメンタルヘルス障害を経験した方だからこそ言えること、職場でうつ病などメンタルヘルス障害を乗り越えたからこそ成せることを大切にしていただき、再び職場でご活躍していただけることを心より願っております。
さて、職場復帰をされた患者様リワークをされた患者様)は1年に1度このストレスチェックを受けることができます。ぜひストレスチェックを活用していただければと思います。会社の方針によりストレスチェックの質問内容は異なりますが、以下の内容を含む点で共通しています。
①職場における当該労働者の心理的ストレスの原因に関する項目
心理的ストレスによるメンタルヘルス症状に関する項目
③職場における他の労働者による当該労働者への職場復帰支援リワーク支援)に関する項目
このストレスチェックは受検した本人が同意をしなければ職場に結果が通知されることはありませんのでご安心ください。毎年受検することによってストレス状況メンタルヘルス状態の変化がわかり、早期の対処が可能となります。
なお従業員数が50人未満の会社ではストレスチェックが実施されない場合もありますので、厚生労働省が推奨しているストレスチェック(57項目版)の②メンタルヘルス症状に該当する項目を参照して下さい。厚生労働省の基準によると合計点数が77点以上の時には高ストレス状態にあるという判断がなされる可能性があります。また前年と比較して得点が上昇している場合にも要注意です。必要に応じて主治医(心療内科医・精神科医)と相談するようにしましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


火曜日担当医の葛原です

千里図書館で借りたプレスリーのCDを久しぶりに聴いています。「好きにならずにいられない」の中の Take my hand,take my whole life too,for I can’t help falling in love with you.の歌詞は今でも胸が熱くなります。「Are you lonesome tonight」も、ジーンときます。「My way」は色々な人が歌ってますが、プレスリーが一番のお気に入りです。YouTubeで比べてみて下さい。
皆様はストレス発散に音楽鑑賞をされますか?仕事や人間関係など精神的ストレス疲労が蓄積してメンタルヘルス不調の方は、音楽や芸術鑑賞で普段使っていない右脳を刺激するのは非常に有益です。それでもメンタルヘルス不調が改善しない場合は、豊中市 千里中央心療内科杉浦こころのクリニック」へお早めにお電話下さい。


復職支援(リワーク)(その56)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の56回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰後リワーク後)、メンタルヘルス疾患の再発予防期における家族のサポート方法
この復職直後リワーク直後)の時期に家族は職場復帰をした方リワークをした方)のメンタルヘルス疾患の再発兆候のモニタリングを行うことが重要です。なぜなら、主治医(精神科医・心療内科医)は2週間に1回程度の診察でしか患者様とお会いすることができませんし、職場の方もずっと様子を観察できるわけではないので、最も身近で本人のメンタルヘルスの変化に気づくことができるのは、家族になるのです。それではこれから、家族が注意すべきメンタルヘルス疾患の再発兆候のチェックポイントを説明します。
『◎家族が注意をすべき「うつ病などメンタルヘルス疾患の再発兆候
■身体面のサイン
最初は「ちょっと体の調子が悪いな」という感じがメンタルヘルス不調の再発の兆候です。頭痛や腹痛などの各種の痛み・めまい動悸・微熱などの身体の不調を認め、病院で検査を受けても異常がないと言われ、自律神経失調症と診断を下された場合には注意が必要です。
また、血圧が上がったり、アトピー性皮膚炎がひどくなるなどの心身症の状態になったり、それが悪化したりする場合にもストレス過多疲労の過度な蓄積が予測されますので注意しましょう。
■行動面のサイン
行動面のサインは周囲の人が一番気づきやすく、家族にとっても注意すべきサインとなります。ご存知の方も多いように、うつ病などメンタルヘルス疾患は朝方にメンタルヘルス症状が出やすい病気ですので、そのときが重要なバロメーターとなります。また、集中力の低下による物忘れの増加や睡眠時間の減少食欲の減退、場合によっては飲酒量の増加などの生活習慣の変化も注意すべきポイントの一つです。
メンタルヘルス面のサイン
メンタルヘルス不調の再発の兆候としては、感情の不安定さが現れることが多くみられ、些細なことで怒ったり、イライラしたりして他人に当たり、突然不安な気持ちや悲哀な気持ちにさいなまれて泣き出したりします。また、ひきこもりがちになり、家族との接触を避け始めたような場合にも注意が必要でしょう。』
このような身体面・行動面・メンタルヘルス面のサインが見られたら、受診時に付き添い、主治医(精神科医師・心療内科医師)に相談をしてみることや、本人にそのサインを告げ、「職場の産業医に相談してみたら」と促してみることが望まれます。そして、場合によっては「職場復帰プランリワークプラン)」のペースを落としたり、必要に応じて休養を取得したりするなど、職場とも相談をしながらメンタルヘルス不調の再発予防につなげていくことが重要なのです。
ちなみに、このようなサインが見られたときに家族の方が「本人にそんなことを告げたら、ますます落ち込んでしまうのではないか」と気を遣い、なかなか本人や主治医(心療内科医・精神科医)にそのことを伝えづらい場合があるかもしれませんが、そのまま伝えずにうつ病などメンタルヘルス不調が再発してしまったとしたら、本人にとって、さらにつらい事態になってしまいます。ですから、ちょっとしたことでもサインを感じ取ったときには、それが深刻にならないうちに早めに本人に告げ、適切な休養を取っていただけるようにアプローチしていくことが最も本人のためになるのです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その55)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の55回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●職場復帰後リワーク後)、メンタルヘルス疾患の再発予防期における職場での過ごし方
うつ病などメンタルヘルス不調で休業をしてから職場復帰される方リワークされる方)は、会社の役に立ちたいと過度に張り切ってしまう場合がよく見られます。しかし、いくら職場復帰を果たしたリワークを果たした)といっても、メンタルヘルスが良好で働いていたころのレベルにすぐには回復できません。この復職直後リワーク直後)の時期は意識的に仕事量をセーブすることが重要です。
例えば、「職場復帰支援リワーク支援)プラン」により短時間勤務や残業制限を受けている場合には、それをきちんと遵守しましょう。まだ、みんなが働いているのに1人だけ早く帰ることは申し訳ないと思われる方が多いようですが、そこで無理をしてうつ病などメンタルヘルス不調を再発させてしまうよりも、次の日もメンタルヘルス良好で出社できることの方が職場にとってもありがたいことなのです。私はこの復職直後の時期リワーク直後の時期)を、「他の人が働いていても帰れるようになるための練習期間」だと職場復帰をされた方リワークをされた方)にはお話ししています。つまり、うつ病などメンタルヘルス不調になる方の多くは、メンタルヘルス不調になる前から周囲を気にしすぎて、職場から退出することが遅くなりがちで、疲労をため込んでしまうケースが多いのです。そこで、この復職直後の期間リワーク直後の期間)に周囲の人が働いていても先に帰る練習をすることで、「自分が先に帰っても職場は滞りなく仕事が進んでいるし、あまり周囲も気にしていない」といった感覚を会得していただくことも重要なのです。ただし、職場復帰支援プランリワーク支援プラン)を遵守すると言っても、メンタルヘルス不調のときには復職支援プランを変更リワーク支援プランを変更)してでも早めの休養を取ることや、主治医(精神科医・心療内科医)に相談に行くために早退をすることは問題ありません。決めた復職支援プラン決めたリワーク支援プラン)より勝手にペースを早めたり、仕事の終了時間を延ばしたりすることがないようにしましょうという意味なので、注意をしてください。
また、この復職直後の時期このリワーク直後の時期)に特別なイベントを企画することは避けましょう。職場復帰のお祝いリワークのお祝い)を兼ねて土日で旅行に出かけたりする話も聞きますが、職場復帰後3ヵ月リワーク後3ヵ月)程度は、身体的にもメンタルヘルス的にも想像以上に疲れますので、まずは十分な休養を取るようにしましょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


復職支援(リワーク)(その54)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援リワーク)」の54回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●認知行動療法を取り入れたメンタルヘルス疾患の再発予防
薬物療法と同時に、認知行動療法という心理療法を長期的に生活の中に取り入れることも、うつ病などメンタルヘルス疾患の再発予防に効果があることが明らかになっています。ここでは、認知行動療法について簡単にご紹介をすることにしましょう。
例えば、大事なプレゼンテーションの前に「本番でうまく話せなかったらどうしよう」というようなプレッシャーで強く不安を感じた場合、その不安な気持ちを受け止め、抗不安薬を服用することが、メンタルヘルス医療精神科医療・心療内科医療)の主流といえる支持的精神療法と薬物療法です。
それに対して認知行動療法は不安を直接の治療の対象とはせずに、その不安を生みだしてしまうその人の偏った考え方や固定化された考え方を治療の対象とする、新しい視点の治療法なのです。
この認知行動療法を理解するにはアメリカの臨床心理学者のエリスが提唱した「ABC理論」が参考になります。ABC理論とは、あるストレスのきっかけとなる出来事(A:Activating event)が起こった場合に、その人にどのような感情や行動をもたらすのかという結果(C:Consequence)がどう生じるのかは、その人の考え方や信念(B:Belief)次第であるとする考え方なのです。
例えば、「プレゼンテーションで失敗してしまった」という出来事(A)が起こった場合に、「失敗は成功のもと」という信念(B)を持っている人であれば、「次には失敗しないようにきちんと準備をしよう」という今後につながる行動(C)に結び付きます。それに対して、「一度失敗したものは次やっても失敗するに決まっている」という信念(B)を持っている人の場合には、「もう二度とプレゼンテーションはしたくない」とその状況から逃げてしまったり、「もうこの会社では居場所がない」とひどく落胆してしまったりするのです。
つまり、Aのストレスのきっかけになる出来事は誰も避けて通ることはできません。ただ、その人の信念・考え方次第で、その出来事から生まれる感情や、その出来事に対する行動に大きな差が生じるのです。従来の支持的精神療法カウンセリングはこのAの出来事から発生する感情や行動(すなわちC)を治療の対象にしていたのに対し、認知行動療法では、いつも否定的に物事をとらえてしまったり、何かストレスがあるとそれから逃げてしまい余計に事態が深刻なものになってしまう感情や行動の根底にある不合理な信念(すなわちB)をさまざまな心理学的技法を用いることで少しずつ修正していきます。そして、感情を安定させることや社会に望まれる行動がなされるようになることを目的としているのです。
さらに「感情や行動は時が経つにつれて変わるのだ」ということを繰り返し経験し、「考え方を変えることで、感情や行動をコントロールすることができる」ということを自覚できるようになれば、認知行動療法で大きな効果が得られたと言えるでしょう。
つまり、認知行動療法の最終目的は自己の感情や行動を自分自身でコントロールできるような能力を身につけることなのです。
この認知行動療法に興味を持たれた方は、「認知行動療法」についての本(多くの出版物があります)を読んでいただくことをお勧めします。「そんなことをやっても変わらない」と考えている方が、「騙されたと思って一度読んでみよう」と思った瞬間に、認知が少し柔軟になっているのかもしれません。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。