カテゴリー別アーカイブ: 病名解説

メンタルヘルス対策月間

毎年3月と9月は厚生労働省が指定するメンタルヘルスの対策月間です。今年は9月10日~9月16日が自殺予防週間などメンタルヘルス不調の防止対策期間です。
最近朝晩が涼しく過ごしやすくなった半面、寒暖差や天候不良による気圧の変化に伴い、メンタルヘルス不調不眠頭痛めまい動悸食欲不振易疲労感など自律神経失調症になりやすいため、要注意です。心当たりのある方は、豊中市千里中央心療内科 杉浦こころのクリニックへ是非ご相談ください。


非定型うつ病について(その52)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●人間関係療法
人間関係療法は、認知行動療法と並んで、その効果が実証されている精神療法のひとつです。問題を人間関係に絞り込んで、その患者様にとって最も身近で大事な他者との関係性を改善していくものです。一口に人間関係といっても、職場や家族や地域やサークルなど、人との付き合いは広くていろいろな関係がありますが、この人間関係療法では最も親密な関係に絞ります。例えば、妻、夫、恋人、親子、兄弟、親友といったきわめて重要な他者との関係において、過去ではなく現在の関係に焦点をあてて治療を行うものです。
人間関係をめぐるトラブルは、うつ病を発症させる重要な因子のひとつになっており、特に非定型うつ病の患者様は、感情が過敏で人間関係に悩みやすく、それが病気の引き金になっていることがほとんどです。発病すると、家族など身近な人との人間関係に影響を与え、トラブルを生んで、それがまた病状を悪化させる要因にもなります。非定型うつ病の患者様にとって、対人関係の不安解消は病気回復の第一歩にもなります。そこで人間関係療法においては、他者との関係における「感情のもつれ」「葛藤」「力関係の変化」「普通でない離別や死別経験への反応」などをテーマにして、治療者は患者様と十分な会話を重ねながら、カウンセリングを行います。非定型うつ病の人は、人と接することが苦手だったり、親しい人間関係をつくれないことについては、対人関係の欠如によるものではないかと考えがちですが、意外にも役割の変化が原因だったりします。いずれにしても、人間関係における適応能力を高めることによって、こころの病気を改善していくのが人間関係療法の役割だと思います。なお、この人間関係療法は、もともとはうつ病を治療するために開発された精神療法ですが、摂食障害にも有効であるという報告もあります。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その51)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】認知行動療法は、近年海外でも盛んに行われるようになってきており、これまでの研究でも、その治療効果が科学的にも認められ、薬物療法と同じくらいの効果があることがわかってきました。うつ病をはじめ、さまざまな精神障害に効果があることが、世界的にも認められており、アメリカやイギリスでは軽症うつ病や不安障害の治療において、認知行動療法が第一選択肢になっているほどです。
最後に、認知行動療法を薬物療法と比較した場合の効果について触れると、非定型うつ病の場合、MAOI(フェネルジン)を使った薬物療法と同じくらいの効果があったという報告があります。有効率では、非定型うつ病に対して行われた認知行動療法の有効率は58%で、フェネルジンを使った有効率58%と同じでした。では両者を併用した場合ですが、非定型うつ病での調査はなく、慢性うつ病患者様の場合での調査でみると、さらに高い有効率であったことがわかっています。また、虐待や両親との離別を経験した患者様では、薬物療法よりも認知行動療法の方が高い効果が出ています。こころの傷が深いほど、認知行動療法の効果は高いことがわかりました。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その50)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】では実際に、認知行動療法をすすめる場合ですが、患者様の症状や現在の状態をみて、それに合った形式(方法)で取り組みます。形式には5つあり、①「セルフ・ヘルプ認知行動療法」(本やパソコンなどを使って、1人で取り組む)、②「アシストつきセルフ・ヘルプ認知行動療法」(通院してアドバイスを受けながら行う)、③「認知行動療法アプローチ」(セミナーに参加して理解を深める)、④「集団認知行動療法」(集団の中で治療プログラムに参加する)、⑤「個人認知行動療法」(治療者と1対1で取り組む)です。症状が軽い場合は、セルフ・ヘルプ認知行動療法でもよいかもしれませんが、重い場合は個人認知行動療法で取り組みます。ただ本格的に認知行動療法を受けるならば、やはり集団認知行動療法か個人認知行動療法です。人数が違うだけで、内容は同じです。
集団認知行動療法は、治療者のもとへ定期的に集まって、同じような状態の患者様が3~10人ほど集まり、2~3人のスタッフとともに、数カ月かけて12回程度のセッションを行います。患者様は参加された他の患者様や治療者との対話を通して、自分の認知、行動、感情面での問題点を見いだして、改善していきます。参加したそれぞれの患者様も、他の人の考え方や状況に共感したり、客観視したりすることで、新たな見方や考え方を発見し、自分の改善に役立てていきます。セッションでは、お互いの発言に対しては、決して批判したり否定したりせず、お互いを認め合い、むしろ褒め合う言葉を掛け合うようにします。一方、集団療法では個人的な細部に焦点を合わせることは難しいため、そのような場合は個人認知行動療法のセッションを選択します。1対1で行うため、個人的な部分まで丁寧に対話でき、より効果的な治療を受けることができます。
こうして、認知行動療法は週に1回のペースで、30~50分の対話形式で行われ、全部で12回くらいのセッションですが、治療がスムーズに行われれば回数も少なく、なかなか進まない場合は16回程度行われることもあります。セッション毎に、最初10分程度でその日のテーマを決め、本題に入ったら改善点を探り、見つかったら具体的な対策を治療者と一緒に考え、最後に意見や感想を述べあって終了します。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その49)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●認知行動療法
認知行動療法はCBT(Cognitive and Behavioral Therapy)とも呼ばれ、アメリカで開発された療法で、もとは「認知療法」と「行動療法」の二つの考え方や手法が統合されて出来た療法です。認知療法の認知とは、ものの見方や考え方、感じ方という意味で、患者様本人が病気に対するマイナスの見方や考え方を変えていくことに焦点をあて、歪んだ思考を修正しながら問題点を解決していく方法です。精神科医や臨床心理士のアドバイスによって行われます。一方行動療法とは、誤った学習によって身についてしまった好ましくない行動を、再学習することで、不適切な行動を減らして適切な行動を増やしていく治療方法です。恐怖症の治療に優れた効果があるとされています。
この二つの療法を統合してできたのが認知行動療法で、治療法の基本は、「認知」と「行動」、それに「感情」を含めた三要素を重視し、この3つのバランスがとれているかをみながら問題解決をはかっていきます。方法としては、先ず認知の内容を深く掘り下げていきます。認知とは考え方ですが、そこには自動思考(自分でコントロール出来ていない瞬間的に思い浮かぶ考え)があって、それを掘り下げていくと、スキーマ(考え方のクセ、信念)が見えてきます。実はこのスキーマから自動思考が生み出されてくるのです。この自動思考とスキーマの関係性を捉えることによって、認知の全体像も見えてきます。そして、この自動思考とスキーマが、今度は行動や感情にも影響を及ぼしますので、まずスキーマを自覚し、マイナスとなる考え方を修正していくことによって、治療への道を開いていく方法です。自動思考は言語化すると、認知の意外性に気づきます。それが考え方のクセとなって、こころの中核をなす信念となっています。この誤った信念が病気を引き起こしていることに気づき、信念がいつも正しいことではないことが認識できれば、治療への大きな第一歩となります。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その48)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】〖心理療法
薬物療法と並んで、非定型うつ病の治療において大事な療法は「精神療法」です。感情が過敏で、対人関係に悩みやすく、それがきっかけで発病しやすい非定型うつ病にとって、この精神療法は非常に有効な治療方法といえます。精神療法は、このほか心理療法とかカウンセリングとも呼ばれ、治療者は医師や臨床心理士で、患者様の気持ちを受け止めることから始めます。精神療法は、主に「認知行動療法」と「人間関係療法」(または対人関係療法)の二つに分けられますが、他にも森田療法、内観療法、マインドフルネス認知療法、瞑想、アサーションなどの療法もあります。
非定型うつ病にとって、これまでに高い効果が認められたのは、認知行動療法と人間関係療法ですので、この二つについて次回から少し解説します。
以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その47)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●抗精神病薬
非定型うつ病は、時として激しい不安感や焦燥感に襲われ、興奮がなかなか治まらない時があります。このような症状が起きたときは、抗精神病薬が使われることがあります。抗精神病薬はメジャートランキライザーといわれ、幻覚や妄想を抑え、興奮を抑えるときなどに用いられる強力精神安定剤です。抗精神病薬には、ハロペリドールやオランザピンなどいろいろな種類があり、日本で使用されていて頻度の高い抗精神病薬にスルピリドなどもあります。スルピリドは、少量で使用すると、抑うつ状態を改善する抗うつ薬の働きもあります。また消化器の働きを促し、食欲を亢進し、腹部の不快感の改善にも効果もある薬です。中には、眠気や疲労感をとって、意欲を引き出し、不安や抑うつ発作に効果をあげることもあります。副作用としては、血糖値を上昇させる作用があるため、糖尿病の人やその疑いのある人には使えません。
気分安定薬
非定型うつ病の特徴的な症状である激しい気分の変動やむら、また急激にわき起こる怒りなどがある場合、この気分安定薬を使用します。抗うつ薬と併用することで症状の改善が見られます。気分安定薬にはいくつかの薬がありますが、この中でバルプロ酸が最も効果的で広く使われています。もともとはてんかん薬でしたが、最近では双極性障害の治療にもよく使われます。また、パニック発作に対しても効果があります。副作用には、眠気やめまいなどがあります。
 【薬品名(商品名)】
バルプロ酸(デパケン)  炭酸リチウム(リーマス)  カルバマゼピン(テグレトール)  ラモトリギン(ラミクタール)
 以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その46)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】●抗不安薬
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
非定型うつ病は、不安障害を併発することが多いため、抗不安薬がよく処方されます。抗不安薬は緩和精神安定剤ともいわれ、神経の興奮や不安を抑える神経伝達物質GABA(ギャバ)を活性化させて、不安や緊張、抑うつ気分を穏やかに改善する効果があります。抗不安薬には種類が多くあり、それぞれ特徴がありますが、非定型うつ病にはベンゾジアゼピン系抗不安薬が使われます。このベンゾジアゼピン系抗不安薬は、パニック発作にも効果を発揮するため、パニック障害を併発することが多い非定型うつ病の患者様にはよく使われます。三環系抗うつ薬SSRIは、効果が現れるまでに2~4週間と時間がかかるのに対し、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は服用して早い段階で効果が現れるため、発現した症状をすぐに抑える薬として使用されます。主なベンゾジアゼピン系抗不安薬には、ロフラゼプ酸エチル、アルプラゾラム、ロラゼパム、フルトプラゼパムなどがあり、中でもロフラゼプ酸エチルとフルトプラゼパムは、長期作用性の薬で、効果が長く持続します。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用としては、倦怠感、ふらつき、眠気、攻撃性、動作が鈍くなる、不器用になる、記憶力の低下、注意力の低下などがありますが、より問題なのは依存性が生じやすい点です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、症状が改善したからといって、急に服用をやめると、離脱状態(禁断症状)が出たり、また再発しやすくなります。したがって、勝手に服用を中止せず、医師の指示のもとに、ゆっくり時間をかけて減薬していくことが大切です。
 以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その45)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】■セロトニン1Aアゴニスト
セロトニン1Aアゴニストとして用いられている薬にはセディール錠(一般名:タンドスピロンクエン酸塩)があります。アゴニストというのは、受容体に結合して神経伝達物質(ここではセロトニン)と同じ働きをする薬のことで、日本語では「作動薬」と呼ばれています。セディールの主な作用としては、脳内セロトニンの作用部位を特異的に刺激して、抗うつ作用や抗不安作用があるほか、心身症神経症における不安や焦り、睡眠障害、恐怖感などの症状を改善します。アメリカにおいてはセロトニン1A作動薬が非定型うつ病に対して有効であることが報告されており、日本ではセロトニン1A作動薬はセディールのみです。1日60mgの併用で、非定型うつ病に対する抗うつ薬の増強効果が期待できます。
特徴としては、安全性が高く、依存性や相互作用はほとんどなく、効果発現までに時間がかかります。副作用としては肝障害が現れることもありますので、注意を要します。ときには、眠気、頭痛、ふらつき、動悸、頻脈、嚥下困難、発汗、吐き気、食欲不振、腹部膨満感、皮膚の発疹、かゆみなどがありますが、重篤な副作用ではありません。相互作用としては、カルシウム拮抗剤系降圧剤を飲んでいる人の場合、影響し合って、降圧剤の作用が増強されることがあります。また、興奮や発汗、発熱などの症状を伴うセロトニン症候群を来すことがあります。1日3回内服しますが、服用上の注意点としては、症状によって服用の量や飲み方も加減されますので注意が必要です。また、長期間服用したり、増量をしても良くならない場合は、それ以上効果が期待できませんので、漫然とした連用は避けるようにします。眠気やめまいなどが起こることがありますので、薬の服用中は危険な作業や車の運転などは避けるようにします。
 以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


非定型うつ病について(その44)

皆様、こんにちは。心療内科 精神科千里中央駅千里ニュータウン医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
【続き→】このミルタザピンは、化学構造的にみると、古くからあるミアンセリン(テトラミド)を一部改良した四環形抗うつ薬で、ノルアドレナリン遊離促進などの作用があることや、効果発現が早く、眠気の副作用が出やすい点などは四環形に見られる特徴です。用法は、通常成人の場合、1日15mgを初期用量とし、15~30mgを1日1回就寝前に経口服用します。なお、年齢や症状に応じて1日45mgを超えない範囲で適宜増減しますが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として15mgずつ行います。よく効いてくるまでに、1週間以上かかることがありますので、医師の指示どおりに服用します。また、急に飲むのを中止すると、反動(離脱症状・退薬症候群)で症状が悪化したり、吐き気や頭痛、倦怠感などの症状が出たりすることもありますので、中止する際は、医師の判断に従って徐々に減量しなければなりません。
副作用で一番多いのは眠気で、約50%の人に現れ、次に多いのが口の渇きで約21%、そのほか倦怠感、便秘、めまい、頭痛、動悸、手のふるえや体重増加なども時々みられます。また、まれにいらだち、けいれん、不安、錯乱、発熱、下痢、血圧上昇、頻脈、自律神経不安症などを起こすこともあります。もし普段とは異なる不安感や焦燥感、イライラ感、気持ちの高ぶり、悪い衝動にかられるなど、精神的な変調を感じたら、医師に相談して指示を仰ぎます。特異な副作用として「セロトニン症候群」を起こすことがありますので、何か普段と違っておかしいなと感じたら、早めに医師と連絡をとることが大切です。
 以上、心療内科千里中央駅直結千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。