「閉鎖病棟」  帚木蓬生 著

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大先輩のドクターからいただいた本を読み終えました。20年前の小説ですがとても感銘を受けました。

「閉鎖病棟」 帚木蓬生 著

作者は精神科医で、精神科病院に長期入院中の患者さん達の姿を描いた物語です。

病気のために重い過去を背負っていたり、あるいは家族から疎まれ長期入院を余儀なくされている患者さん達の、病棟での生活が淡々と、しかしとても丁寧に描かれています。淡々とした文章の中に患者さんへの温かく優しい眼差しがあふれています。帚木先生は何かを声高に訴えるわけではありませんが、患者さんの描写を通して精神科医としての姿勢が静かに伝わってきます。

僕も以前、精神科病院で働いていましたが、そこにも多くの長期入院の方がいました。何十年も入院している方もいましたが純朴な人が多く、その姿に僕自身が癒されることもありました。この小説を読んで、「長期入院中の患者さんが退院して何とか地域社会で生活できないものか」と色々思い悩んでいた頃を懐かしく思い出しました。今でも「精神病の患者さんの社会復帰」は関心のあるテーマです。患者さんへの社会の理解と支援が少しでも広がるよう診療に取り組んでいきたいと思います。

 






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