以上が、赤ちゃん~3,4歳くらいまでのこどものかぜのイメージです。
4,5歳になってくると、いろいろな風邪の免疫ができてきて、かぜの時の鼻水の量が減ってくること、鼻がかめるようになることなどから、鼻水に押し負けるようなこじらせ方はずいぶん減ってきます。
かぜをひいても少し余裕をもって見れるようになるのもこの頃かと思います。
入院の頻度もぐっとへってきて、「うーん、うちの子も強くなったな」と感慨深い思いにひたる親御さんも多いものです。
ところで、このくらいの年齢から目立つようになるのがマイコプラズマです。
え!今うわさのマイコプラズマ!!
肺炎起こすやつでしょ?
このブログを読まれている方は、マイコプラズマ=肺炎ではないことはもうお分かりのことと思います。
マイコプラズマがどこまで侵入するかで肺炎になるかどうかが決まるのであって、マイコプラズマにかかれば必ず肺炎になるわけではないということを。
実際、マイコプラズマはかぜと同様に自然治癒の傾向が強く、多数はかぜとして知らない間に治っているのです。
そしてかぜと同様、一部はこじらせてマイコプラズマ気管支炎やマイコプラズマ肺炎となるわけです。
悲しいかな、マイコプラズマほど抗生剤の乱用の被害を受けた病気はありません。
マイコプラズマは確定診断が難しく、かぜで受診した患者さんたちに「マイコプラズマ疑い」として、抗生剤が乱用されてきました。
結果として、もともとマイコプラズマに対して使用されてきたマクロライド系の抗生剤は大半が耐性となってしまいました。
もともと外来で飲み薬で治療ができていたマイコプラズマ気管支炎や肺炎のこどもで、入院での点滴抗生剤治療を要する例が多くなってきています。
抗生剤の乱用が、病気の怖さをどんどん広げたもっとも代表的な病気、それがマイコプラズマといえます。
ここで、マイコプラズマが変わり者、と言われるゆえんをお話しします。
①かぜはかかればかかるほど免疫ができて症状が軽くなるのに、マイコプラズマはあまり免疫のない乳幼児より、小学校以降の学童や青年で症状が強い。
②ウイルスのかぜのように自然に治る傾向が強いくせに、細菌のように直接やっつける抗生剤がある(すごい速度で耐性化が進んではいますが)。
③前述の細菌に効果的な一般的な抗生剤が効かず、独特の抗生剤が効果を発揮する。
仮にマイコプラズマであったとしても、「かぜ」の範疇でとどまっている間はかぜ薬で様子をみて、空咳がひどい場合、発熱が続く場合にはマイコプラズマ用の抗生剤をしっかり使う。
これを地域全体で押し進めていくことで、耐性化を改善させ、いざマイコプラズマ肺炎になっても、外来の飲み薬で治せるような時代に戻していかねばなりません。
「かぜ」を知ろうのコーナーでは、4回にわたって「かぜ」や「RSウイルス」、「マイコプラズマ」などについて話をしてきました。
「肺炎にならないように」、「こじらせないように」という医者や親御さんの親切心から始まった抗生剤の乱用は、長い時間の中で耐性化、難治化という細菌やマイコプラズマからの手痛い反撃をくらう事態となりました。
かぜの初期から内服の抗生剤をしっかり使用しても、肺炎の発生は予防できないという事実が大規模な研究で明らかになってからずいぶんたちます。
21世紀になった今日、抗生剤の内服で肺炎が防げるなら、肺炎で入院しているこどもたちなど今や一人もいなくなっているはずです。
使うタイミング、それがつまり重要なのです。
「肺炎にならないように」から「万が一肺炎になったときしっかり治せる薬があるように」への意識の改革、医学的には当たり前のこの事実を、みんなで共有する必要があります。
これを達成するためには地域をあげて、みなさんの理解と協力が必要です。
たくさんの命を救う抗生剤。
これからもたくさんの命を救える切り札でありますように。
最強の子育て地域を目指して。