溶連菌

抗生剤をしっかり飲む必要がある感染症の代表格に溶連菌があります。

喉にくっつくありふれた細菌で、咳・鼻水はないのにその割に喉の強い痛みが目立つのが特徴です。

典型的な場合は喉を診ると炎が立ち上っているような強烈な赤さがあり、火焔様などと言われ、小児科専門医がみるとすぐに分かります。

ありがたいことにインフルエンザと同じく外来ですぐにチェックできる検査がありますので、分かりにくい例も確定診断に役に立ちます。

溶連菌はとても抗生剤がよく効くので、飲み始めたら24時間のうちにはすっかり熱も下がり、喉の痛みも楽になります。

要注意なのは、中途半端にしか薬を飲まないと、まれにもう一度騒ぎ出してリウマチ熱や溶連菌後糸球体腎炎と言って、心臓や腎臓に悪さをしたり後遺症を残すことがあることです。(とても専門的な話としては、抗生剤は腎炎の発症を減らすという厳密なデータはないのですが、一般的には上記のように説明されることが多いでしょう。)

そのため、ペニシリン系の抗生剤をしっかり10日分飲みきることが必要ということ分かっています(発熱などの症状はすぐ良くなりますが、必ず最後まで飲みきって下さい!!)。

また、喉にくっつく細菌の中で抗生剤が必要なものは原則溶連菌に限られているため、「喉が赤いから抗生剤を出しときますね」と言って検査をさぼって安易に3 日分や4日分の抗生剤を出すということを我々医者はしてはいけません(補足:抗生剤の種類によっては5日分でよいとされているものもあります)。

なぜなら、もし溶連菌なら、先ほどの理由から10日分でなければ危険ですし、溶連菌でないなら逆に抗生剤は不要の可能性が高いからです(もちろん気管支炎や中耳炎の合併など他の理由で抗生剤を使う場合はまた話は別ですが)。

中途半場な日数でも、元気になってしまうのが、逆に非常にやっかいなところなのです。

ただし、溶連菌に限らず色々な検査は病気が始まってからある程度時間がたたなくては無意味な検査となります(例えばインフルエンザ検査は発熱から最低でも6~12時間以上たたないとできない、というのは有名ですね)。

我々小児科医は、「発熱したらすぐに抗生剤」や「喉が少し赤ければすぐに検査」などという勇み足はせず、じっと経過を見ながら必要になった時点で必要な検査、必要な抗生剤を心がけています(検査をすればするほど、薬を出せば出すほど医者が儲かる日本のシステムも問題点のひとつ??)。

「まだ検査してくれないの??抗生剤もくれないの??」という親御さんの視線をじっとり感じながらも、「この子のため」と思いじっと検査ができるタイミングを待つ。

自分が医者でなく、医学的知識もなかったら、早く検査してくれよケチ!ときっと感じるだろうな、といつも思いつつ。

そう思われても、それでもなお、我々小児科医は子供たちのためにじっと腰を落として時を待つのであります。






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