日別アーカイブ: 2014年1月30日

インフルエンザその3

要点をまとめると以下のようになります。

①インフルエンザかどうかに関わらず、治療薬を使っているかに関わらず、ぐったりしていたり、意識がおかしい場合、痙攣がある場合はすぐに受診しましょう。

②解熱剤で様子をみれそうなぐらい元気な場合、発熱してから1日家で様子をみるのは非常に賢い選択肢です。検査は発熱12時間を越えてからが適切で、治療薬は48時間以内なら使用可能ですので、余裕があるなら受診は急ぐべからず(例えば夜間の救急に発熱してすぐ受診する、などは元気な場合には検査もできず疲れに行っただけで終わる可能性が高いでしょう。)。ただし、生後3か月くらいまでの乳児や心臓や肺に重度の基礎疾患のあるお子さんははっきりした高熱が6時間以上あれば受診する方がよいでしょう。

③はっきりとした熱が一旦出た場合には翌朝に解熱傾向があってもインフルエンザであることはよく経験しますので、集団生活に戻る前に検査をすることには意義があります。逆に、一貫して元気で熱や咳などの症状もあるかないか、という場合はインフルエンザの可能性は低いと言えますし、万が一インフルエンザだとしても治療薬は不要で周囲への感染力は一般的なインフルエンザの患者さんより相当低いと言えるでしょう。このようなまれな一人を見つけるために、新たな感染のリスクを冒してまでその何十倍もの受診を作り出すのは、本人にとっても、属している集団にとっても得かどうかは疑問です。

④おまけ 感染の防御には、まずはワクチン、そして手洗いと加湿が効果的(湿度50%以上を保つとインフルエンザを始めかぜのウイルスはかなり増殖が抑えられる)。うがいは予防に関して思ったりよりも有効なデータは少ないですが、こまめに水分を取ることや、自分の吐いた息の中の水分をもう一度吸い込めるマスクは喉の加湿を保つという観点から有効と言われています。

注:マスクは目に見えないほど小さいウイルスの侵入自体を防ぐ、という意味ではかなり効果は乏しいようですが、周りの人にウイルスをまき散らすのを防ぐというもう一つの役割もありますから、やはりできるだけ隙間のないようサイズのあったマスクの着用を心がけましょう。

 

③に関しては、私自身の個人的な意見も入っていますので、保育園や幼稚園などから受診を強く勧められた場合や、ご家族の中に御高齢の方など、先ほどのデリケートな方達がいらっしゃる場合には一律には言えませんが・・・。

頭の片隅に、「受診するデメリットがゼロではないこと」も思い浮かべながら。

我が子と、我が子が属する集団が一番得をするように、賢いお父さん・お母さん、そして先生方が貝塚にたくさんたくさん増えますように。

 

最強の子育て地域を目指して。


インフルエンザその2

次に、受診のタイミングについてのお話しをします。

「インフルエンザかも、と思ったらすぐに病院に行きましょう。」というCMを見たことがありますが、個人的には誤解を招きかねない内容と思います。

まず、熱が出てすぐに病院に来てもらっても、検査はできません。

その①でお話ししたように、インフルエンザの検査はある程度発症から時間がたってウイルス量が増えるまでは無意味ですので、「さっき保育園でお熱があると言われてお迎えに行きました。」という流れから、その足で病院に行った場合、『インフルエンザかどうか知りたい』というお母さんの希望には沿うことは100%できません。

ぐったりしていたり、意識がおかしい場合は時間に関わらず必ずすぐに受診が必要ですが、解熱剤である程度様子がみれそうな余裕のある場合には、急いで病院に行ってもメリットはないでしょう。

治療薬は発熱から48時間以内なら十分効果がありますので、その意味でもあせる必要はありません。

例外として、家族内や親しい友達などにインフルエンザの方がいて、濃厚に接触しており検査するまでもなくインフルエンザに間違いなさそうな場合などは、発症早期でも受診するメリットはあります。

得な受診、損な受診、場合によりけりと言えますから、どうするか迷った場合には受診前に電話で相談する方がよいでしょう。

 

ちなみにこの手のCM、作っているのは大概インフルエンザの治療薬を作っている製薬会社です。。。なるほど。


インフルエンザその1

いよいよインフルエンザが流行するシーズンとなりました。

親御さんも保育園や幼稚園、学校の先生方も神経を尖らせる季節です。

今日はインフルエンザの特徴や対処法をできるだけ分かりやすくお話ししようと思います。

インフルエンザウイルスは「かぜを知ろう」でお話しした、数百種類あるかぜのウイルスの一つです。

他のかぜのように、咳や鼻水が出始めて、しばらくしてから熱が出る、というよりは、突然の高熱や関節痛からスタートして、「何これ、やばいぐらいしんどい」というのが多いパターンです。

あくまで風邪のウイルスの一つでありながら、やはり独特の注意を必要とするのも事実ですので、その特徴をみていきましょう。

 

①かぜのウイルスとしての特徴

・インフルエンザもかぜのウイルスの一つですから抗生剤は全く無効です。 (「かぜを知ろう」でお話ししたように、かぜには抗生剤は一切効きません。抗生剤を飲んだらかぜが早く治る、というのは完全に迷信、気のせいです。「念のため」で、飲めば飲むだけ損をします。)

・かぜの一つであり、肺炎や中耳炎など、こじらさない限りは勝手に治ります。ただし、こじらしてしまったら、他のかぜと同じく、そこからはじめて抗生剤の追加が必要となります。

・他のかぜと同様、一回かかる度に少しづつ免疫がつきます。軽い時は37度代で元気なままなんてこともありえます。

②インフルエンザウイルスとして特有の注意点

・毎年少しづつ顔を変えて(変異して)やって来るため、ある程度免疫のある大人でも他のかぜより症状が強く出る傾向があります。

・アデノウイルスのかぜ、RSウイルスのかぜとともに、迅速検査ができる数少ないかぜのうちの一つです。ただし、熱が出てから間もない場合には検査は無意味ですので、最低6時間、できれば12時間くらい経過してから行うのがよいでしょう。

・数百種類あるかぜの中でもしんどくなる子どもや大人が多いため、人類ががんばって早く治す薬を開発した唯一のかぜであります(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)。インフルエンザ以外のかぜには残念ながら早く治す薬は存在していません。

・うわごとを言ったり、興奮したり、時には暴れだしたり。インフルエンザは高熱に伴ってこのような神経症状が非常に多く報告されています。意識障害や痙攣がある場合には、例え深夜でも様子を見ずにすぐに病院を受診しましょう。(これらの症状は一時期タミフルの副作用ではないか、と疑われていましたが、内服していない児でも多数の報告があることから、薬による症状ではなくインフルエンザウイルス自体の症状とする考え方が主流です。薬を使う、使わないに関わらず、インフルエンザの時はこれらの神経症状に注意し、保護者の方は解熱まで決して目を離さないことがとても重要です。)

注:完全には結論は出ておらず、報告の多い10代では今でも念のためタミフルは避けることになってはいますが。

・ある一定の期間に人にうつす力がとても強く、それを過ぎると急速に感染力が低下するため、家での待機時間や登園・登校許可証を設定することがとても効果的なかぜです。水ぼうそうも同じような特徴を持っていますが、かかってしまったら、今度は人にうつさないようにしっかりこの期間を守ることを心がけましょう。

・かぜの中で唯一、ワクチンが開発されています。このワクチンのメインの目的は重症化して、命がおびやかされるような事態を防ぐことであり、かかったらどえらいことになりやすい高齢者の方や持病のある方には特に強く勧められます。もちろんかかる確率もある程度減らしますが、インフルエンザウイルスは感染力が強く、しっかり接種していてもかかることは多々あります。接種をした上でかかってしまった時には、「ワクチンをうったのにかかってしまった。」と落ち込むよりも、「もしワクチンをうっていなかったら、どれくらいひどいことになっていたのだろう?」と考え直す方が生産的かもしれません。

 

 

インフルエンザは、高齢者、心臓や肺に基礎疾患のある方、寝たきりの方などがかかると非常にこじらせやすく、時に命に関わるかぜです。

1年間に約1万人もの方が、インフルエンザに関連して亡くなっていると言われていますが、そのほとんどは上記のようなデリケートな方達です。

一方で、かぜの一つである以上は元々健康な大人や子供たちで、熱もそれほど高くないなど症状が軽い場合には実は治療薬は必須ではありません。(日本では、インフルエンザと診断されて治療薬を使うのは重症度に関わらず当たり前になっている現状ではありますが。)

ひとくくりで、「インフルエンザは怖い病気」と煽りたてるのは適切ではなく、患者さんごとに心配度は大きく変わってくるという認識が必要です。