免疫とアレルギーその4 アレルギー検査

アレルギーを考える時、あるかないかという二極的な捉え方をすると思考の迷路にはまりこむことがあります。

「アレルギー性鼻炎の人=鼻つまりや鼻水が出やすいデリケートな鼻の持ち主」と表現するならば、そのデリケートさは0~10まで多様です。

アレルギー性鼻炎がある人は10で、ない人は0という認識を持っている方も多いのではないでしょうか?

そうではなく、アレルギーは程度が軽い人から重い人まで幅広く分布しているのです。

2や3以上をアレルギー性鼻炎と呼ぶか、5以上や7以上をそう呼ぶか、耳鼻科の先生によっても様々でしょうから、ある耳鼻科では「アレルギー性鼻炎」と言われたのに、違う耳鼻科に行くと、「こんなくらいはアレルギー性鼻炎とは呼ばない。」と言われることもあるでしょう。

ところが、どこかで一度でも「鼻炎の気がありそうだねぇ。」言われると、自分の鼻は10である、と思い込んでしまうのが誤解の出発点なのです。

やるべきことは、「薬がいるほど強い症状がどうか、本人がどのくらい実際困っているか。」の判断で、これは本来検査ではなく自覚症状から考えるべきでしょう。

例えばスギ花粉症のシーズンの時に、鼻が時々むずむずするという場合、アレルギーは少しあるのでしょうが、本人が困っていなければ、特に治療は必要ありません。

アレルギー検査の中で一般的に小児科外来で行われることが多い血液検査は、イメージとは裏腹に〇か×かで結果が出るものではありません。

アレルギーの診断は、「ある物が体に入った時に、いつも同じように具合の悪い症状が起こり、それを除去するとよくなる。」ことによってなされます。

よく子どもさんや親御さん自身が、アレルギーかどうか知りたいので検査したいというご相談がありますが、自分で自覚していないアレルギーが検査で明らかになることは普通ありません。

いくら検査で値が高くても、実際症状が出ないのであればそれはアレルギーではありませんので、検査の適応は慎重であるべきです。

また、長引く咳や鼻水がある場合に、血液検査でハウスダストやダニの値が少し上がっているのを見て、これが原因と先生に言われた経験のあるお母さん方もいらっしゃるでしょう。

それ以来必死の思いで掃除機をかけまくっているというお話もよく聞きますが、今までと環境が大きく変わっていない場合、これらが主原因であることはほとんどないと思います。掃除はいわゆる常識の範囲内で十分です。

アレルギー検査はもちろん適応をしぼれば情報量が増える有用な検査ですが、むやみに施行すると検査結果に踊らされることになります。

まずは摂取や症状などのエピソードがから、アレルギーであろうという診断をして、その次のステップとして検査でどのくらい高い値かをチェック、というのが基本的な考え方です(病院に行くのは困るような症状が出てからでよい)。

アトピー性皮膚炎が明らかな赤ちゃんの場合は、今まで食べたことのないものについても血液検査などを施行することはしばしばありますが、これはむしろ特殊な例です。

肌にトラブルを抱えていない赤ちゃんが心配だから離乳食開始前に検査をしたいと言う場合や、大きい子どもで何を食べても症状が出ないけれど検査をしたいなどの場合、ほぼメリットはありませんし、当クリニックでも行っていません。

 

「アレルギーは程度で考える。まずは検査ではなく、エピソードで判断する。」

アレルギーはこれらの原則はありつつも現実の世界では応用問題も多く、中には試しにお薬を飲んでみたり、やっぱり検査をしたりすることで判断がつく場合もあります。

非常に奥の深い分野と言えます。






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