月別アーカイブ: 2015年6月

「かぜを知ろう」その7 台風

かぜのイメージを理解するときに、台風を例にするとしっくり来る方もいます。

あるかぜをひく、というのは一つの台風を経験するということです。

咳や鼻水が出始めた、というのは日本の南の海上で台風が発生したということです。

咳や鼻水がだんだんひどくなってきた、というのは台風がだんだん勢力を増しながら北上してきたということです。

熱が出た、というのはいよいよ台風の暴風域に入ったということです。

早くかぜを治したい、こじらせないようにしたいというのは、台風の進路を変えたい、台風の勢力を弱めて欲しいということです(これは不可能な願いです)。

基本的には家に2,3日引きこもっていれば、暴風域を抜け(解熱して峠を越え)外に出れるようになることが多いでしょう。

しかし、台風の中には非常に勢力の強いものもあり、3日たっても4日たっても暴風域から脱しないものもあります。

こんな時は、家にダメージが来ていないかが心配になりますね。

台風そのものはどうしようもないですが、台風によって家に与えられた損傷は程度によって補修が必要になります。

瓦が少しだけ飛んだり、壁の一部がちょっと痛んだ程度であれば軽い補修で済みます。

しかし、壁が大きく壊されたり、雨漏りや浸水が深刻であれば、一旦避難所に移動して、家は大がかりな工事が必要となることもあるでしょう。

台風発生した時点で全てを予報するのは困難ですが、台風が近づき、猛威を振るう間に被害の程度はどんどんと明らかになるでしょう。

これをかぜに置き換えて考えてみましょう。

台風(かぜ)そのものはどうしようもないですが、台風(かぜ)によって家(体)に与えられた損傷は程度によって補修(治療)が必要になります。

瓦が少しだけ飛んだり(中耳炎)、壁の一部がちょっと痛んだ(気管支炎や軽症肺炎)程度であれば軽い補修(外来での内服抗生剤などの治療)で済みます。

しかし、壁が大きく壊されたり、雨漏りや浸水が深刻(全身状態や呼吸状態の悪い肺炎)であれば、一旦避難所に移動(入院)して、家は大がかりな工事(点滴抗生剤や各種の濃厚な治療)が必要となることもあるでしょう。

台風が発生した(かぜの引き始めた)時点で全てを予報するのは困難ですが、台風が近づき、猛威を振るう間(経過が進み、熱が長引く間)に被害の程度はどんどんと明らかになるでしょう。

かぜの治療というのは、何度もお話ししているように、かぜ(台風)そのものをどうこうしようという先回りの治療ではありません。

通り過ぎた後に残ったダメージを後付けで補修するというものなのです。

初期治療がどうだからというのとは全く別の次元で肺炎への道は形づくられています。

台風の例でも、おそらく台風が発生した時点でどのコースを通り、どのような規模の災害をもたらすのかは決定しているのでしょうが、人間にはそれを予言する術はなく、結局は台風が進路をたどるうちに正確な被害情報が明らかになるのです。

かぜの子どもを診る時、小児科医がしているのはこじらせないようにする治療でもなければ、早く治す治療でもありません。

今回のかぜがどの程度まで行ってしまうのかをじっと観察しているのです。

かぜが残した爪痕の深さに応じて、治療がなされることになります。

内服の抗生剤の役割は、家の小さい補修工事程度ですが、乱用することのデメリットも明らか(損傷がないのに工事をすることで逆に悪影響が出る)ですので、急いで投与する必要はありません。

かぜからははみ出してそうだけれど入院まではいらなさそうな段階に登場する薬といえるでしょう。

もちろん内服の抗生剤は、いつもお話ししている通り肺炎になるのを防ぐ効果など期待できるはずもありませんから、処方されて安心していてはいけません。

今日の朝は家にいてもいいよと言われていても、翌日にやはり避難勧告が出ることもあります。

特にかぜという台風は夜、突然に風雨が強まることが多いのでどうしても夜に予想外の増悪を起こすことがあります。

逆に、今夜が昨夜より楽そうであれば、峠を越えた可能性が高いでしょう。

最後にひとつ。

実際の台風では、家はただ被害をうけるだけですが、かぜの場合には台風を乗り切るごとに家がその台風に対して強くなります。

来年同じ台風が来たときにはずっと安心して家の中で様子をみることができるでしょう。

草ぶきのプレハブ小屋に住んでいた赤ちゃんも、これを繰り返すうちに強いレンガつくりの家の中でのんびりくつろげるようになっていくわけです。

LINEで送る

医者という仕事その6 子どもからの人気

子ども達と接する仕事はたくさんあります。

園や学校の先生、プールのコーチ、「おかあさんといっしょ」のおにいさん、おねえさんも。

そんな中で残念ながら小児科の先生は検査や注射のせいかちょっと怖がられる存在であることが多いでしょう。

診察室を入って先生の顔をちらっと見た瞬間にぎゃん泣きになるのは子ども達にとって非常に普通の反応であります。

ところが、子ども達は成長していく過程でだんだんとあるいは、ある日突然に診察室に入っても泣かない日がやってきます。

その子が帰った後、スタッフと「あの子にもとうとうこの日が来たか。」という話をするのも恒例の楽しみな行事です。

私はカルテにもちょこっとこのおめでたい日のことを書いたりしています。

そんな訳でお母さん、お父さんにひとつお願いがあります。

「そんな言うことを聞かない子は病院で大きい注射をお願いするよ!」と、まるで病院でつらい思いをして注射や検査をさせられるのは罰を受ける作業かのようなことを子ども達に伝えないでほしいということです。

必要だがらやるものですから、「ちょっと痛いけどがんばってね。」と励ましてあげてください。

小児科外来は、子ども達のために心を鬼にして痛い処置をしなければならないこともありますが、少しでも怖い気持ちが和らぐようにご家族もスタッフも、私も一緒に力を合わせていきましょう。

LINEで送る

どうでもいいことその15 空想科学読本

しばらく前に読んだ「空想科学読本」という本。

テレビや漫画のヒーローやロボットが、科学的に実現可能か、というのを検証したとても面白い本です。

漫画のヒーローやロボットは、子供が分かりやすいようにとんでもない設定(100万馬力とか)になっていることが多いわけですが、それを大真面目に物理学で正確に検証しているのがおかしくてしょうがないコメディタッチの本です。

例えば、「かめはめ波」を撃つと、反動で後ろに時速100kmで本人が吹っ飛んでいってしまう(細かい数字は違うかもしれません、すいません。)、とか、分身の術(をしているように見える)を実現するためにはとんでもない速度が必要だが、そうすると足の筋力はこれだけ必要で、筋肉細胞一つの大きさはこれぐらいだがら、忍者ハットリ君の太ももは電柱の何倍も太くないといけないとか。

中でも一番面白いのは、ウルトラマンは本当に日本を守れるか?という章です。

ウルトラマンと言えば、宇宙から悪い怪獣が攻めてくるや否や、マッハの速度でかけつけて戦う地球のヒーローですが、いかんせん3分間しか戦えないという弱点を持っています。

空想科学読本では、ウルトラマンを東京に配置して検証をスタートしているのですが、例えば名古屋あたりに怪獣が出現した場合、マッハの速度で向かっても3分間では静岡あたりで人間に戻ってしまうので日本は滅亡だそうです。

その後、ウルトラの家族をみんな日本に呼び寄せて上手に配置しても、全く日本列島をカバーしきれないという結論が正確な図入りで示されていました。

非常にユーモアがあって、おすすめの一冊です。

結構人気になりましたので、確か続編も何冊か出ていたと思います。

LINEで送る

登園・登校許可証の意義

いわゆる一般的な咳・鼻水のかぜ、嘔吐・下痢のかぜに関しては、「熱があって、元気や食欲が不十分な間、あるいは元気でも咳や下痢の回数がとても多い間」は撒き散らすウイルス量が多い状態ですのでお休みするようにしましょう。

ノロやロタウイルスの胃腸炎、RSウイルスのかぜなど、ウイルス名に関わらずこの基準はしっかり守るようにしましょう。

厳密な意味ではウイルスはだいたい鼻水や便の中に10日~2週間ほど残っています(この間、うつす力はゼロではない)が、何日休むという決まりを設定することで『流行の拡大』に大きな影響がない感染症では、具体的な日数の規定は設けられていません(逆に、上記のような症状の強い間はしっかり休みましょう)。

他方、水痘やはしか、おたふくかぜなどはある一定の期間の感染力が強烈で、規定の日数を休むことで周囲への影響が大幅に減少する感染症です。

これらの疾患でも実際には登園・登校のタイミングで厳密に感染力がゼロでないこともありますが、ポイントは決まりを守ることで流行の拡大を防ぐ効果があるということです。

つまり集団生活においては、うつす力がゼロかどうかというより、「休むことに大きな意味があるかないか」が重要視されています。

全ての熱、咳、嘔吐、下痢は家族内や近しい友達のレベルでは感染すると思ってまず間違いありません(発症するかはウイルス量や個々の免疫力にもよります)。

その中で、うつす力が特別強く、集団の一員として具体的な日数を休む意義があるものにだけ個別の特別な基準が設けられていると考えるのがよいでしょう。

★熱・咳・鼻水のかぜでは、インフルエンザかどうか

★咽頭痛に関しては、溶連菌かどうか

★結膜炎、目の強い充血ではアデノウイルスかどうか

★発疹に関しては、水ぼうそう・麻疹・風疹・溶連菌かどうか

これらは集団生活に関して特別の基準が設けられている疾患であり、症状が強い間はもちろんのこと、解熱して元気でも必ずしもすぐに復帰できません。

病院で許可をもらってからようやくゴーサインが出ることになります。

かぜの時にRSウイルスかどうか、ヒトメタニューモウイルスかどうかや、胃腸炎の時にノロかロタかどうかは登園・登校や治療、家族への対策に影響を及ぼしませんので、検査を主目的に元気でも受診するメリットはあまりありません。

ウイルス名にこだわるよりも、症状が強い時は気をつけるということに重きを置くようにしましょう。

ヘルパンギーナや手足口病、胃腸炎などに許可証を要求することには医学的意義は低く、お母さん達の負担になっているだけのこともあり、廃止するところも出てきています。

また、登園が許可される日と、抗がん剤の治療中におじいちゃんのお見舞いに行っていい日は同じではありません。

登園はマスクなどをしながら、「うつす力はゼロではないけれど、感染力がかなり強い時期は去ったから許してね。」といいながらするもので、お見舞いは完全に症状がなくなってからが望ましいでしょう。

LINEで送る