医者という仕事その7 より良く生きるために

歩道を歩いている時はできるだけ車道から離れたところを歩くように心がける。

それだけで運転ミスの車の事故に巻き込まれる確率はずいぶん下がるでしょう。

しかしそれだけ注意していても居眠り暴走トラックに轢かれてしまう痛ましい事故は、ゼロではありません。

 

医学は目の前にいる患者さんが一番得する確率の高い選択肢を提示することを目標としています。

上の例で言えば、「外を歩くときは車道から離れたところを歩きましょう」というのが、適切な治療となるでしょう。

それでも救えない命があります。

ある予想外の事例が起こった時、医学はまず自らを省みます。

もしはっきりした原因があると判明した場合、それを改良しより良い治療方法を模索します。

逆に、その予想外の事例が例外的なまれなことであることが判明した場合、医学はその例外すらも救おうと新しい選択肢を生み出す努力をします。

だからと言ってそのまれな事例を理由に、恩恵をあずかっている他の方への治療自体をすぐに中止することはありません。

 

注意して車道から離れた歩道を歩いていた人がまれな事故に会ってしまった場合、やるべことは①事故に会った人を全力で助けること、②車にブレーキアシストを搭載したり、歩道と車道に段差を作ったりしてもっと事故を減らす努力をすることです。

隣に住んでいる人がそんな事故に会ったと聞いて、「車道の真ん中を目隠しして歩いていたら事故に会わなかったのに残念でしたね。」と言う方はいないでしょうが、実はワクチン反対派、抗がん剤全て否定派というのはこのような思考回路の人たちと言えます。

医学は長い歴史の中で自らを振り返りつつ進歩してきましたが、身近な稀有な例を挙げて大勢に逆行する声の大きな人間というのはいつの時代にもいるものです。

いわゆる、「逆張り」をすると世間の注目を浴び、金銭的なバックも非常に大きいので(例えば一見常識外れなびっくりする題名をつけた本はすごく売れる ~牛乳は飲んではいけない~など)その方向に突き進んでいく動機は理解可能ですが、たくさんの善良な一般の方を車道の真ん中に歩くよう誘導するのを医者として見過ごす訳にはいきません(ワクチンはうつな、がんは治療するな、など)。

マスコミはしっかりとしたデータのある王道の意見をわざわざ拾い上げても盛り上がらないためか、「逆張り」の少数派の意見を取り上げて、あたかも賛成派と反対派の2大勢力があるかのような構図を作り上げる傾向があるように思います。

場合によっては極めて異端な意見を、迫害に負けずにがんばる風雲児に仕立てることまであります。

ワクチン反対派、抗がん剤を丸ごと否定する一派などはこのシステムに目を付けた最大の成功者であり、それに流される一般の方々は最大の被害者であると言えます。

インターネットは上手に使えばもちろん非常に有用なツールですが、怪しい意見やデータが我が物顔で上位に来るのはある意味で致命的な弱点と言えるでしょう。

パソコンが発達した現代、私は少しづつでも世の中が良くなるように、みんながより良く生きるために情報を発信し続けます。

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