日別アーカイブ: 2017年8月2日

便秘のお話 その3お薬や浣腸はくせになるか

便とはごみですので、あらゆる手段を使って定期的に、かつ快適に出すことが大事です。

将来的に便秘は大腸がんのリスクファクターにもなります。

さて、お薬や浣腸で便を出すことを続けているとくせになって自分では出しにくくなるという噂を聞いたことがありませんか?

これは小児科の世界の根強い誤解の一つで、完全に間違った情報です(腸管刺激性の薬剤はだんだん耐性ができるものもありますが、相当重症でしか出番はありません)。

まず、排便のコントロールを行っているのは腸ではなく脳であるというお話をしましょう。

何日に1回、肛門をどんな感じで便が通っていくかという情報を脳が受信して、それに基づいて習慣が固定されたり、加速されたりしていきます。

お薬を使ったかどうか、肛門への刺激や浣腸があったかどうかを脳は感知していません。

どう出て行ったかという情報だけです。

実際にはくせになるのは便秘の習慣の方で、歯車が回り始めるとそれが加速し、固定されていきます。

ですから野菜を取ったり、お薬や、肛門刺激や浣腸などあらゆる手段を使って、快適に定期的に便を外に出すことが不可欠であるのです。

調子がよくなってお薬がなくなってから、真っ赤な顔できばりながら何とか自力で便が出たことを嬉しそうに報告してくれるお母さんがいらっしゃいますが、「がんばって出す」というのは脳に取っては大きなマイナスの経験となりますので、しっかりお薬を続けて「快適に出す」習慣を続けましょう。

お薬や浣腸はずっと続けても特に目立った副作用がありませんので、しっかり使用させてください。

排せつ欲という言葉がありますが、食欲や性欲とともに大げさに言えば排便は気持ちよくて楽しみな作業であるべきなのです。

がんばってするものではありません。

これらの知識を元に、赤ちゃんも子どもも大人も、快適なうんちライフを目指しましょう!


便秘のお話 その2対策とお薬

離乳食が始める前の便秘の赤ちゃんでは、便が固いことはあまりなく、刺激による駆動力の補助がメインになるでしょう。

1日出なければ綿棒刺激、それでも出なければ積極的に浣腸を考えましょう。

動物の世界、特にネコ科の動物では母が子の肛門をなめて刺激するという補助を行っていますが、さすがに人間ではかわいいわが子とは言え気が引けますので、綿棒や浣腸などのアイテムを使用するのがよいですね。

 

それ以降の児での便秘では、まず根本に「便が固い」という要素がほぼ必ず存在します。

治療としては、この「便が固い」という部分を何とかすることがメインになります。

野菜を食べて、食物繊維を増やすというのが最も有効な対策です。

人によっては納豆やみかんを食べると調子がよいということもあります。

乳製品は調子がよくなる人とむしろ悪くなる人と両方あるので注意しましょう。

夏に汗で出ていく水分が増えると便が固くなるのは事実ですが、データ上、水分を一定以上取ってもそれ以上は尿が増えるだけで、水分摂取だけで中等度以上の便秘が改善することは期待できません。

野菜が大事と言いながら、特に小児では、さあ明日から野菜を2倍にしましょうというのは難しいため、足りない分がいよいよお薬の出番となります。

Mg(マグネシウム)製剤が最も多く使われるお薬で、便をふやかすようなイメージを持つと分かりやすいでしょう。

便がちょうどいい柔らかさになると肛門を通る際に痛くないため、がまんする癖がなくなっていきます。

Mgの内服中であっても、1、2日に1回は便を出す必要があるので、出ない時は積極的に浣腸を併用して排便させます。

 

また、年長児ではトイレトレーニングや集団生活の開始とともに「がまんする」の部分から便秘の歯車が回り始めることもあります。

大人と同じトイレを使用させる場合、足が地面から浮いていると踏ん張れず適切な姿勢が取れないので足場を用意してあげて下さい。

またうんちカレンダーを作って、出たらシールを貼ってあげたたりほめたり、精神的なアプローチでがまんのくせをなくしていきましょう。

便秘の治療開始は早ければ早いほど改善も早くなりますが、完成された便秘の習慣を治すには半年から2年ほど要することが多いでしょう。


便秘のお話 その1便秘のメカニズム

毎日幸せうんちライフ送っていますか?

今日は便秘のお話をしたいと思います。

健康な生活、規則正しい生活というものを思い浮かべた時、睡眠や食事とともに排便の習慣はとても大切なものです。

これら3つの習慣が好調であると、体も心も好調な状態と言っていいでしょう。

口から入った食べ物は消化管という長いトンネルを旅して、栄養を吸収された後、その残りかすになんやらかかんやら加わって便として肛門から出ていきます。

「何日便が出ていないと便秘ですか?」というご質問をよく頂きますが、明確に何日という定義がある訳ではありません。

ただ一般的には「良好な排便習慣」とは、1,2日以内に1回は苦しまずにトゥルンと固くない便が出ている状態と考えられます。

この際に一番大事なことは、「苦しまずに」という点です。

1日に2回、泣きながら岩のように固い便を真っ赤な顔をして出血交じりに出しているというのは対処が必要な便秘であるというわけです。

1日に何回出ていようが、苦しんでいる、困っているというのは動物の排便として異常な事態であります。

 

さて、いわゆる便秘がちという児が、本格的な便秘に進化していく歯車を回していく原動力として3つの要因があります。

それは、「便が固い」、「排便時に痛い」、「がまんする」の3つです。

便が固いと排便時に痛がり、そしてだんだんがまんするようになります。

がまんするとさらに便が固くなるという悪循環が起こるため、この歯車はどんどんと加速していってしまうのです。