マスコミの功罪②

医学の世界でも、不適切な医療を行っていた病院の実態がマスコミによって明らかになったという例も多々あります。

逆に、日本脳炎ワクチンはこの冤罪による容疑をかけられた代表例です。

一時、日本脳炎ワクチンの接種後にADEMという特殊なアレルギー性脳炎が引き起こされるのではという報道がなされました。

医学の歴史は、少ない症例での「ひょっとして~なのでは?」という仮説から始まり、それが多数の症例で確かめられることで前進してきました。

ですので医学はこのようなマスコミの問題提起に対して、一旦接種を中止して何万、何十万という症例で検証を行うという選択を行いました。

結果として、疑いは完全に否定されました。

接種した人も接種していない人も、ADEMを発症している割合は全く同じでありました。

この時に注意したいのは、「接種した人は発症していない」ということではなく、「接種していない人と同じ割合である」ということです。

ADEMになったある一人の人を調べると1か月前に日本脳炎ワクチンをうっていた、だからそれが原因だ!と短絡的に考えるのは、以前にお話した因果関係と前後関係の誤謬であります。

またこの検証を行うために要した数年のうちに、日本脳炎ワクチン自体はひっそりとさらに副反応の少ないワクチンへと改良がなされ、今接種されているのはその改良型のワクチンです。

容疑をかける時にはあれだけ過熱したマスコミは、これらの事実をみなさんにそれ以上の熱意と時間をかけて報道するべきでした。

しかし、日本脳炎ワクチンの名誉が回復されたとはとても言えません。

それによってたくさんの児が接種する機会を奪われているのですが、それはマスコミの関心ではないように見受けられます。

この10年ほどで急速に発達した個人発信のSNSもマスコミと同様、時に世論を動かすほどの力を発揮することがあります。

我々はこの膨大な情報社会の中で、事実と虚構を冷静に判断することが求められる、何とも難しい時代を生きているようです。






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