日別アーカイブ: 2018年1月18日

感染症の確率

インフルエンザが完全に流行期に入りました。

感染症の周りへの影響を考える時にまず一番大事なのは症状の強さです。

高熱である、咳がひどい、下痢の回数が多いなど症状が強い場合は原因のウイルスや菌が何であれ周囲への攻撃力は強いと考えられます。

全ての症状はうつるという前提で行動し、どの季節でもどんな感染症でも症状が強い時はしっかりと家に引きこもってください。

 

さて、感染症の中には症状が軽くても感染力が強烈で、そして非常に大事なファクターとして「大人すらえげつなく巻き込む(つまり社会の運営や経済に影響する)」からという理由から特別扱いするべき感染症があります。

「咳・鼻水のかぜのウイルス」の中ではインフルエンザ、「嘔吐・下痢のかぜのウイルス」の中ではノロウイルスがその代表格です。

いずれも冬場に毎年必ず大流行するウイルスで、社会全体に大きな損失を与えています。

 

一般論として「ある特定の症状が出た時に、実際にその感染症であるかどうか」の確率は周囲の流行にかなり依存します。

真夏に40度出ても、誰もインフルエンザの心配なんかしません。

しかし学級閉鎖寸前のクラスにいる子が、夜だけ38度あり翌朝は解熱していた場合インフルエンザである可能性は非常に高いと言えます。

日常の診療の中で、検査キッドが診断の決め手になるというお母さん方からの期待が過剰に高いのを感じます。

検査がまるで診断やタミフルなどをもらうために不可欠な辛い作業のように誤解している方は未だに多くいらっしゃいます。

検査キッドは上手に用いれば有用ではありますが、我々医師が最終ジャッジ、つまり診断を下すために使用する道具の一つにすぎません。

いいタイミングで検査してもせいぜい正確性は90%程度です。

例えば兄弟二人がインフルエンザで休んでいる最中にそれ以外の家族が40度で真っ赤な顔をしている時、検査するまでもなくインフルエンザという診断が下されるでしょう。

適切な問診や診察をした状態での私の診断力は検査キッドの正確性をずいぶん上回ると考えていただいて差し支えありません。

 

ところで流行期に一番難しいのは「インフルエンザではない、ノロではない」というジャッジを下すことです。

周りがその感染症だらけの時は症状が軽くても場合によっては複数回診察をして、検査をして、完全に否定するためには相当なエネルギーを要します。

親御さんにお願いしたいのは、流行期に入ったら、症状が強くなくても「違う」という確信が出るまで家庭内でも警戒を解かず、ましてやうかつに登園や登校をさせないで、ということです。

夜に熱が出た、嘔吐をしてちょっと食欲がないなど、インフルエンザやノロかもしれないという症状があった時は、とりあえず一旦立ち止まってください。

その上で「登園しない・登校しない」=「すぐに病院に行かなければならない」ではないことも思い出してください。

熱出てすぐに受診、嘔吐してすぐに受診というのは徒労に終わることが多いですから、状態に余裕があるときは「慎重に様子をみる」という選択をした上でしかるべきタイミング(発熱半日から24時間経ってから、あるいは嘔吐が6時間〜半日続く時)で受診をすることで非常に利益の多い診察を受けることができるでしょう。