異常を見つける 〜正常との比較を通して〜

医学の世界では異常を見つける能力は当然ながらとても大事なものです。

難しい病気の場合、最終的な診断は大きい病院での特別な検査で決められることになりますが、だからと言ってその病気を見つけるために全員に高額で体に負担のある検査をする訳にはいきません。

たくさんの対象患者さんの中から怪しい人を選別し、一段階目の検査→二段階目の検査→・・とだんだん病気ではなかった人が脱落していき、最終的に病気が見つかるにはいくつかのステップがあります。

咳をさっきからこほんと何回かした人達全員に肺のCT検査を行なって結核を見つけようというのはナンセンスですが、咳が長く続いて一般的な薬に反応しない人は、レントゲン検査や喀痰検査、特殊な血液検査などを通じて選別され、一部の人は結核の診断が下されることになるでしょう。

このように「Aという病気である」ことを診断するにあたり、いきなり全員に検査をするのではなく、まず検査に進むべき人を選別する作業がその一番最初にある訳ですが、それを担当するのが医師の目であり、手であり、耳であるのです。

患者さんを丹念に診察し、本人や御家族からの問診に耳を傾けることでまず次のステップにエントリーするかどうかをふるいにかけている訳です。

この際に我々医師は今までに蓄積した膨大な量の「正常」の所見との比較作業を行なっています。

この正常から外れた瞬間から我々は一気に動き出すので、特に病気の初期には患者さんからするとしてほしい検査の希望が叶えられない事も多々あります。

例えば、「ワクチンもしっかりうっていて周囲にも流行はないが、朝から高熱が出ていて、麻疹ではないか調べて欲しい。」とか、「3日ほど咳をしているが、百日咳がどうか検査して欲しい。」という要望が通ることはありません。

よく私が咳は2週間続いたら、熱は夜だけでも38度台が3日以上続いたらもう一度受診しましょうというのも、このふるいにかける作業を行なっているわけです。

当院以外を受診した場合にも最も大事なことは次にどうなったら受診するべきかを聞いておくことです。

ふるいにかけるためのベルトコンベアの上に上手に乗せられて行く感覚を持つとよいでしょう。

 

さて、この正常との比較から異常を見つけるためにお父さん、お母さん方も知っておくと便利な知識があります。

「右のタマタマが痛い。」と男の子が言った時に右精巣そのものだけを見て、年齢相応の大きさかとか腫れているかどうかが分かる親御さんはまずいないでしょう。

この際、正常と比較するのが一番分かりやすいのですが、何のことはない、左側にその子にとっての現在の正常がそのままあるのでそれと比べてあげれば腫れているか、皮膚に異常があるのかの情報を家でもある程度知ることができます。

応用すると、「結膜炎が治ったかどうか?」なども正常側と比べることで判断の助けにすることができるでしょう。

基本的に人間の体の所見で明らかに左右差がある場合は何らかの異常が起こっている可能性が高いので受診を考えるとよいでしょう。

(右の親指だけ短い、股関節が左だけ開きにくい、笑っても右の口角だけ上がらない、など)

 

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