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生ワクチンと不活化ワクチン その3 ワクチン総括

生ワクチン、不活化ワクチンいずれも接種によって、免疫が0➡︎100に上がるものではなく、回数を重ねて数字を積み重ねていくイメージを持ちましょう。

かかりやすさ、かかった時の症状の重さを100から引き算していく感覚でもよいでしょう。

一人が接種して個人の免疫のパワーをupさせるだけでなく、多数で接種して集団全体のパワーをupすることで 飛躍的に効果が高まります。

水痘(水ぼうそう)ワクチンが無料化されて、3歳以下の数百万人がみな接種するようになり、数年で全国での発生数が1/3程度まで猛烈なスピードで減少しています。

それまでも自費で接種している少数の子ども達はいて、その個人達は罹患や重症化から守られていましたが、集団全体の流行の抑止には全くなっていませんでした。

いかに、「みんなで接種することが大事」かということが分かります。

 

車の運転や交通事故に例えてみましょうか。

ワクチン接種をすることは、自家用車に自動ブレーキや踏み間違い防止機能、ハンドルアシストなどの安全機能を追加していくと考えましょう。

ワクチンで防げる病気にかかるというのは交通事故にあってしまう、起こしてしまうということです。

自分の車にオプションがつけばつくほど事故に会う確率は減ります。

さらに周囲の車全てにオプションが装備されるとどうでしょうか。

より事故にあう可能性が減ることが分かりやすく理解できます。

 

ワクチンを推し進める最終のゴールは以前にも書いたように、感染症の原因微生物そのものを地球から排除することです。

麻疹、ポリオあたりはある程度のところまでは来ていますが、まだ根絶までには道のりが長く残されています。

正しい知識を広め、接種率を上げることは小児科医の大事な仕事の一つであります。


生ワクチンと不活化ワクチン その2 不活化ワクチン

一方、不活化ワクチンには生きた病原菌は入っておらず、その病気の軽い症状が出ることはありません。

ウイルスや毒素の部品に対する免疫をつけるイメージです。

ヒブ、肺炎球菌、4種混合(3種混合+不活化ポリオ)、B型肝炎、インフルエンザ、日本脳炎などがこれに分類されます。

不活化ワクチンでも接種後に熱が出ることはありますが、これは病気の軽い症状ではなく、純粋にワクチンを接種したということによる反応です。

ですから、例えばインフルエンザワクチンを接種後に熱が出た場合、ワクチンによってインフルエンザになって熱が出ているということは絶対にありません。

実際のウイルスは一匹も入っていないからです(ウイルスを一匹を数えるのかどうかはさておき)。

不活化ワクチンは、生ワクチンに比べるとどうしてもパワーが弱く、1回のワクチンで数十点を得る程度ですから、必然的に回数をたくさん必要として免疫を足し算していく必要があります(2〜4回)。

また効果が切れるまでの年数もやはり生ワクチンより短くなります。

最近特にtopicになっているのは、4種混合に含まれる百日咳の小学校などでの小流行です。

4種混合は生後3ヶ月から接種を開始し、2歳になるまでには4回の接種を終えるのが望ましいワクチンです。

最近の研究ではどうも小学校の中学年くらいにはその効果がすでにだいぶ弱まっている子どもが結構な割合でおり、日本各地で小流行がぽつぽつ起こっていることが分かっています。

そのため、小学校の1年生や6年生などでもう1回ワクチンを全員に接種する方向が固まりつつあり、数年後には実施されるのではないかと思います。

 

 


生ワクチンと不活化ワクチン その1 生ワクチン

ワクチンには大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があります。

生ワクチンとは文字通り生きたウイルスや細菌をものすごく弱体化して接種するもので、極めて軽く病気にかかってもらい戦い方を覚えてもらうというワクチンです。

ロタ、BCG(結核)、MR(麻疹・風疹)、水痘(水ぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)などがそうです。

軽く病気にかかってもらうとは言っても、極めてパワーを弱めていますから例えばロタワクチンではその後数日間ちょっと便がいつもより緩いかな、回数が多いかなというくらいはあっても、がっつり胃腸炎というほどの症状が出ることはありません。

ほとんどの場合では接種後、全く症状がないことが多いでしょう。

強いて言えばMRワクチンに含まれる麻疹の成分は元々の病気が猛烈であるだけに、接種10日後くらいに熱と発疹がでることは時々経験します。

もちろんそのような場合でも本物の麻疹のウイルスによる症状とは比べようもないほど軽症で、また麻疹の恐ろしい合併症である脳炎が起こることも全くありません。

さらに、ワクチンによって出た症状によって周囲の人に麻疹をうつす心配もありません。

生ワクチンはそのメカニズムが、免疫を得るのに一番有効な「実際に病気にかかる」という方法にとても近いので非常に効果が高く、1回の接種でも90点以上のパワーを得ることが多いでしょう。

ただし、実際に病気にかかるよりはやはり力は劣りますので長い年月のうちに免疫がゆっくりと下がってくることが予想されます。

したがって近年では生ワクチンであっても多くのもので2回以上接種する方針となっているのです。

現在の子育て世代の親御さん達はMRワクチンを1回のみ接種した世代ですので、免疫が下がってきている人が一定数おり、最近麻疹や風疹がこの年齢層でよく流行しているのです(もっと上のおじいちゃん、おばあちゃん世代の人の大多数は幼少期に罹患しているため一生持続する強い免疫を有しています)。