月別アーカイブ: 2012年9月

どうして利き手じゃないのに腱しょう炎になるの?

「手を使いすぎたので腱しょう炎になってしまいました。」みなさんよく耳にしませんか?親指や薬指を曲げるときにひっかかる「ばね指」、手首の親指側が痛くなる「(ドゥ)ケルバン病」、物を持ち上げるときに肘の外側が痛くなる「テニス肘」などはすべて腱しょう炎です。でも右利きの人が反対の左手の腱しょう炎になることもよくありますよね。なぜでしょうか?

「腱しょう炎」は筋肉のすじである「腱」が、その通り道(トンネル)である「腱しょう」の入り口でひきおこす「まさつ」が原因です。何回動かしても、「まさつ」が起こらずスムースに「腱」が滑るなら「腱しょう炎」にはならないのです。「まさつ」の原因で最も多いのが、トンネルの「腱しょう」が狭いことです。薬指に「腱しょう炎」が多いのは、人体の構造上、みなさん薬指の「腱しょう」が細くて狭いからなのです。しかし人の体は完全に左右対称ではありません。左指の「腱しょう」が右より細い人は、あまり使わない左指でも「腱しょう炎」になりやすいのです。

「腱しょう炎」を放置すると関節が動きにくくなり、運動障害を残す可能性があります。「まさつ」を引き起こしている場所を早く見つけ出して治療(腱しょう内注射など)を開始することが大切です。レントゲンでは写らない「腱」や「腱しょう」を確認するときに役立つのは「超音波関節エコー検査」です。診察室ですぐに簡単に確認できるため大活躍しています。


クロール開眼しました

何かのきっかけでコツをつかんで急に物事が上手く進み出すことがありますよね。私も最近そんなうれしい経験をしましたのでご報告します。

先月に「右肩の痛みと引っかかり感が続くので注射を受けました」と書きましたが、その後右肩のリハビリとメタボ予防の目的もかねて週3回ほどプールで泳いでいます。私は決して水泳達者ではありませんが、ランニングやジムで汗をかくことが大の苦手なので運動と言えば水泳しか選択がなかったのです。スポーツクラブのプールに行って驚いたのは、結構高齢の方(失礼!)が、ゆっくりとしたストロークで25mコースをクロールで何往復もされているのです。「よく続くものだなあ」と感心しながら観察していますと、1回のストロークで進む距離が私よりずっと長く、ほとんどキックしていないことに気づきました。さすがにコツを直接おたずねすることは憚れましたので、web上で「クロール、泳ぎ方、コツ」などど検索すると、なんと数多くの水中動画を含むサイトをみつけました。

クロールはその名のごとく、手でかいて進むものでキックの推進力は2割程度であること。水中では手が体の前から外れないように肘の高さを意識しながら太ももの前へ最後まで押し出すようにしっかりかく。言葉で表現することは難しいのですが、動画をくりかえし見ていると何となくわかった気がして、喜び勇んで翌日プールに行きました。

たしかによく進みます。1ストロークで2.5m(遅っ!)は進みます。そしてなにより肩に掛かる負担が少なく、肩関節運動に重要な腱板のリハビリに最適だと思いました。現在のところ恥ずかしながら心肺能力が筋力についてこない状態で、関節がへばる前に息が上がってしまい、「連続遊泳コース」の仲間にはまだ入れませんが、帰宅後の過食さえ控えればその日も近いのではないでしょうか?

院長のうれしい開眼でした。

 


リウマチに対するステロイドの効果的な使い方(後半)

前回は、リウマチに使う「ステロイド」は「副腎皮質ホルモン」を合成した薬であることや、「副腎皮質ホルモン」が体の中で、どのようなはたらきをしているのかお話ししました。今回の後半では、「ステロイド」の特徴的な長所についてお話しします。

「ステロイド」の作用は使う量によって全く異なります。がんや膠原病の急性増悪の時には、プレドニンで1日50mg以上の大量を全身投与(点滴や内服)しますが、この場合は「副腎皮質ホルモン」が細胞の増殖や免疫を抑制する効果を利用しています。長期に使用すると正常な細胞の発達や免疫を障害してしまうので、短期間に限られます。このような短期間に大量の「ステロイド」を全身投与する方法を「ステロイド・パルス療法」といい古くから広く実施されています。対して、リウマチの「ステロイド」全身投与はプレドニン10mg以下(通常は5mg以下)の少量内服です。この場合は「副腎皮質ホルモン」の炎症(腫れや痛み)を抑える効果を利用しています。「ステロイド」の効果は使用する量で作用が異なるのです。

また「ステロイド」を点滴や内服で「全身投与」する場合と、関節や腱に直接注射するようなピンポイントの「局所投与」する場合でも効果が異なります。関節リウマチの場合は、肩や肘、手首、膝、足首のような大きな関節が3つ以上同時に腫れて痛みがきつい場合は、内服している抗リウマチ薬が「力不足」の状態ですから、抗リウマチ薬を増量したり変更したりするのですが、その効果が現れるまで早くても2-3週間かかってしまいます。しかし大関節の障害が3カ所以上もあると、日常生活自体大変な苦痛を伴います。そのときに役立つのが「ステロイド」の「全身投与」です。「ステロイド」は10mg以下のプレドニンでも内服すると、その日から効果を自覚できますので、追加した抗リウマチ薬の効果が現れるまでのつなぎ役として最適なのです。

加えて、日頃は調子のよいリウマチ患者さんでも、たまに1カ所の関節が急に腫れて困ることがあります。特に膝や足首など体重のかかる関節が障害を受けると1カ所でも歩きにくくなり大変困ります。その場合は「ステロイド」を関節内に注射する「局所療法」が全身への副作用も少なく効果的です。

実際に使用する「ステロイド」には、その作用時間が短いものから長いものがあり、用途により使い分けています。このように「ステロイド」は漫然と長期間使用すると副作用が気になりますが、ピンポイントで使用するにはリウマチ治療には必要不可決な武器なのです。


リウマチに対するステロイドの効果的な使い方(前半)

みなさんは「ステロイド」と聞くと何を思い浮かべますか?「きつくて副作用の強い薬」「顔が丸くなる」「骨粗鬆になる」などなど、どうも悪いネガティヴな印象のある方が多いのではないでしょうか。現在、リウマチのお薬は、低分子の抗リウマチ薬や生物学的製剤が中心になっていますが、実はステロイドも様々な場面で今でも大活躍しているのです。

一般的に、リウマチの治療に使う「ステロイド」とは「副腎皮質ホルモン」のことです。背中の左右には腎臓がありますが、その上にホルモンを分泌する小さな臓器が二つあります。それが副腎です。「ステロイド」は「副腎皮質ホルモン」を人工的に合成した薬なのです。成人が1日に分泌するホルモン量は「プレドニン5mg」1錠分といわれています。また「副腎皮質ホルモン」の分泌をコントロールしている場所が頭の中にあります。大脳にぶら下がっている脳下垂体です。脳下垂体は血中の「副腎皮質ホルモン」の濃度を体内センサーで感知しながら副腎に対して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌します。たとえば大量の「ステロイド」を長期間内服すると、脳下垂体のセンサーが「副腎がホルモンをたくさん作り過ぎている」と勘違いして副腎の機能を止めてしまいます。自分の副腎の中で「副腎皮質ホルモン」が作られなくなってしまうのです。ですから「ステロイド」をプレドニンで5mg以上の高用量で長期間内服している患者さんには、徐々に薬を減らしながら内服を中止することで副腎の機能を慣らしていくのです。

くわえて、体の中にある副腎が「副腎皮質ホルモン」を分泌する時間帯には規則性があり、朝から午前中にかけてがピークです。したがって「ステロイド」薬を内服する場合にはできるだけ朝食後に内服し、午前中にその血中濃度を上昇させることで生理的なホルモン血中濃度の変動を乱さないようにすることが大切です。

なぜ、それ程までに気遣いながら」「ステロイド」薬を使用しなければならないのでしょうか?次回の後半では「ステロイド効果のすばらしい特徴」についてお話しします。

ところで、9月1日のりんくう花火大会は大盛況のうちに無事終了したようです。来年も是非開催されることを楽しみに待ちたいと思います。